健康予防医療コラム ~その他~

~「あたたかい」「ありがたい」という気持ちでつながって~

 家族の絆、友達との絆、夫婦の絆… 最近よく耳にするようになりました。人と人とのつながりを表す言葉はいろいろありますが、一文字で、しかも強い意味を持っているという言葉で、インパクトがあります。 「絆」という言葉は、語源的には、犬、馬などの家畜を通りがかりの立木につないでおくための綱で、しがらみや呪縛、束縛の意味で使われていたものが、最近になって「支え合い」「助け合い」を意味するようになったそうです。確かに切っても切れない関係は、一心同体とも言えるし、強い束縛とも言えますね。一緒に住んでいる人、血縁などの関係は経済的にも、社会的にも運命共同体で、事故、天災、社会的、経済的トラブルや、健康上の問題があると影響を相互に受けますので、助け合わないとならない関係です。
  
 「助けてあげなければならない」と「助けてあげたい」は、意識の差があります。「私にとって大切な人」というのが心からのものであれば、深い愛情をあわす意味での「絆」ですが、「この人にトラブルがあるとこちらも迷惑するから」と言うことであれば、呪縛という意味での「絆」になると思います。「深い絆を感じる…」そこには、つながっていたいという気持ちも、つながっているので離れられないという気持ちも両方存在するのではないでしょうか。
  
 田舎に住んでいた人が、地元の強いつながりを束縛に感じて都会に飛び出してきたものの、「隣は何をする人ぞ…」という都会の寂しさに耐えられなくなったという話を聞いたことがあります。人は、自分の周りに今あるものはあたりまえになり、ないものに憧れることがあります。そしてあたりまえを越えて「つまらない」「うっとうしい」になってしまうこともあります。振り払ってみたら、「懐かしい」「有り難みがわかった」という時、あらためて物事にはプラスとマイナスの両面があることに気がつきます。どうせつながっているのなら、「あたたかい」「ありがたい」という気持ちでつながっている方が、心が楽ですね。そして、日々が充実してきます。絆というタイトルの歌や映画が沢山あるのは、それが人と人との関係の本質に迫るものだからかもしれません。「縛られている」と感じたとき、「つながっていてくれている」と言い換えてみましょう。一言声に出して気持ちを味わうと、心に暖かい火が灯りそうです。
 

監修:大多和 二郎 先生
掲載日:2014年02月01日

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