健康予防医療コラム ~その他~
成功する失敗
「他人の失敗から学びなさい。あなたは自分ですべての失敗ができるほど長く生きられないのですから」というのはルーズベルトの言葉です。
「失敗から学ぶ」ということは、よく言われるのですが、なかなか辛いですよね。特に自分が失敗したときには、不安や罪悪感や責められる怖さなどが先に立って、逃げたくなることがあります。「あいつがいけないんだ」「自分は精一杯やったのだからいいのだ」というように、言い訳し、または実際にそう思い込んで、自分の立場や自尊心を守ろうと必死になります。一生懸命やってもうまくいかないとき、作業していて不可抗力が加わった部分があって納得できない結果が出たときに、「失敗と向き合う」という姿勢をとれるかどうかは、その人の生き方の基本的な性格によるのかもしれません。
そういうことを頭において、ルーズベルトの言葉を読んでみると、いろいろ考えさせられます。ルーズベルトも言うように、一人の人が人生で経験できる範囲は限られていますから、当然学ぶべき失敗の数も限られています。だから、他人の失敗から学ぶ必要があるということなのですが、もう一つ「他人の失敗から学ぶ」というときには、客観的にみることができるという利点があります。
不祥事、事件などのあとに政治家、会社の責任者などが、テレビで謝罪会見をすることがあります。視聴者としての私たちは、家庭で客観的にその会見での謝罪ぶりをみることができます。その時に、「誠意がないな」「上から目線だな」「保身に走っているな」などと感じることがあります。責任者としては、気持ちも動転していて今後の処理のこと、従業員のこと等いろいろ考えて混乱しがちなのでしょう。しかし、誠実な態度を示し、責任を明確にして、改善策の提示をきちんとできている「潔いな」という会見をみると、「さすがリーダーだな」と感じます。すると、「あの社長さんは凄い」「あの会社は誠意がある」ということで、その後の評価があがるということがあります。
失敗から学ぶというより、「成功する失敗の仕方」ということまで感じてしまいます。そこから思うのは、自分が失敗したとき、その事実と向き合って学ぶことも大切ですが、「失敗をどう乗り切るか」という「成功する失敗」を他人の姿から見習う大切さです。当事者になるとなかなかできないからこそ、意義のある学びだと思います。
監修:大多和 二郎 先生
掲載日:2012年08月16日