健康予防医療コラム ~その他~

けんかと自己主張

 最近けんかしましたか? 多くの人が兄弟げんか、親子げんか、友達とのけんかを経験していると思います。そのときのことを思い出してみてください。
 当然のことながらけんかは楽しいものではありません。ですから、けんかしたくてしている人はあまりいません。けんかしているときは「なぜわかってくれないんだ」「ひどいじゃないか」「侮辱された」など、自分の尊厳、プライドを守ろうとする気持ちがあります。
 
 打ち合わせや討論会の場でけんかが始まってしまうこともあります。しかし、多くの場合、たまたまハプニングやトラブルが起こったその場で、「カチン」ときたひとが「ちょっと、その一言はないんじゃない?」というように、スタートします。子供同士のけんかでは、いきなり「ポカッ」とたたいたりすることもありますが、大人同士の場合は、最初の一言は、やや感情を押し殺しつつ、ひとこと抗議する発言からスタートします。
 そこからが問題です。不快感をぶつけられた相手によってけんかになるか、ならないかが決まるのです。その時に「申し訳ございませんでした」ときっぱり謝罪するとけんかが回避されます。しかし、ごまかし、言い訳、無視などで反応すると、「ちょっと、その態度なんだよ!」とけんかに発展します。
 
 人間は不快感をぶつけられると無意識的に「自己弁護」「保身」に走りがちです。ですから、自分に非があるとわかっている時でも、「いいわけ」「屁理屈」などが口をついて出てきがちになるのです。ここがポイントになります。コミュニケーション上手な人は、不快感をぶつけられても、「謝罪」「相手の言い分をよく聞く」などの「受け入れ態度」を相手にしっかりと見せます。すると、不快感を感じた人は「自分の気持ちをしっかりキャッチしてもらった」と言うことで、自分の尊厳が保たれた実感がもてるので、気持ちが落ち着いてきます。
 
 気持ちが落ち着いたところで、必要とあらばこちらから事情を説明することもできます。つまり、「感情」と「言い分」を分けて、感情への対応を優先することでけんかではない自己主張ができるのです。クレーム処理に慣れている人はこのことはよくご存じです。しかし、日常の人間関係でも、このポイントをしっかり頭に置いておくと、人間関係でのストレスがグンと減ってきます。「感情の関係」と「言い分の関係」が使い分けられるとお互い気持ちよくコミュニケーションできそうですね。
 

監修:大多和 二郎 先生
掲載日:2012年05月01日

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