健康予防医療コラム ~その他~
暖かさと温かさとあたたかさ
暑い夏が終わり、秋風が吹く頃になると「温かい飲み物」や「温かい食べ物」が美味しくなる季節がやってきます。作業の手を休めて一息ついて飲むお茶やコーヒーで身体が温まるだけではなく、気持ちもホッとしますね。
最近では、夏の冷房でからだを冷やしすぎてはいけないと言うことで、夏でも温かい飲み物を飲んでいる人がいます。からだを温める働きがあるという「生姜」を使ったドリンクも沢山発売されるようになりました。
「温かさ」という言葉は温度だけではなく、人の心についても使われます。「温かい心を感じられる一言」とか、「あの人の温かい笑顔に癒された」などと、人の性格や態度、感情などについても「温厚」、「冷淡」などというように「温かい・冷たい」という言葉が使われます。実は温度と気持ちにはかなり関係があります。例えば、「ヒヤッとした」、「冷水を浴びせかけられたような・・・」という緊張感を表す表現がありますが、これは心が緊張したときに、自律神経が働いて、全身の末梢血管が収縮し、そのために皮膚の表面の温度が下がる感覚という実際の生理的な反応の感覚を表現したり、または比喩的にそう表現したりする時の言葉です。反対に、リラックスすると、毛細血管が開いて血流がよくなりますので、手足が温かくなってきます。リラックスして落ち着いた人は、表情筋もゆるんで優しい表情になりますが、それだけではなく、顔色もほのかに赤みがさして、手足も温かいので、実際に温かく、それを比喩的に「温かい感じの人」という表現するようになってきたのかもしれません。表現の語源の詳細はわかりませんが、きっとそのような生理現象も関係して「温度」、「気持ち」の両方に「温かい・冷たい」という表現が使われるようになったのでしょう。
更に言うと、秋風が吹き始めて寒くなると、気持ちとしても寂しいような不安な気持ちになる人がいます。ひとり暮らしの人が寒い日の夜、ひとり家に帰ると寂しいと感じるという話しをよく聞きますが、人がそこにいるという安心感もありますが、部屋のあたたかさというのも心の安心感に関係しているような気がします。温かい飲み物を飲んでほっとしたときに、その飲み物の温かさが心の温かさを感じさせているのかもしれませんね。少し寂しいとき、不安な時、からだを冷やさないようにして、温かい飲み物で、「心を温めて」あげましょう。寂しがっている友達にもココアを一杯作ってあげてみてはどうでしょう。
監修:大多和 二郎 先生
掲載日:2011年10月01日