健康予防医療コラム ~その他~
無理せずに楽して…
「体調が悪くって」「かなり疲れているんだけれど」などという人に対して、多くの人が「無理しないでね」といたわりの声かけをします。声をかけられた方は、「ありがとうございます。でも大丈夫です」と言いながら、相手の気遣いに対して感謝します。疲れているときや、体調が悪いときに、優しい言葉をかけられるとありがたいですよね。優しさが心にしみいるような感じがします。
ところで、「無理」ってなんでしょう? 今できる範囲でやっているのが無理でないことだと思いますから、できる範囲を超えたところが無理といえるでしょう。体力、時間、技術、エネルギーとしてその人ができる範囲を超えると「無理」になります。ここまでは多くの人が納得してくださると思うのですが、ここから先が問題です。無理とわかっていてもやらなければならない立場に追い込まれると言うこともあります。家庭の中で、職場で、「君ならできる」「あなたが頼りだ」「他に頼める人がいない」と言われ続けて頑張っているうちに、自分の無理が慢性化してしまって無理している感覚がわからなくなってきている人も見かけます。精神的に大丈夫と思っていても、体は正直なもので、悲鳴をあげて体調が崩れてきます。
では、「自分が今できる範囲」というのをどうしたら知ることができるでしょうか? 自分としてはまだできると思っていても、周りから「あなたは今日は休みなさい。そんなに頑張ると後に響くよ」と言われる人がいます。反対に、「もう、私には無理です!」といっても、まわりから「まだできるよ。あきらめたらだめでしょ!もうひと頑張りしよう」と言われてしまうこともあります。このように、無理なのか、無理ではないのかというのは、意外とわかりにくいものです。ですから、「無理しないでね。でも、君が頼りだから頑張って」という言葉で人を追い込んでしまわないように、注意したいですね。また「頼りにしているから」と言われて、そのうれしさに惑わされて頑張りすぎないようにしたいものです。
楽しようとしても頑張り癖のついた人は、なかなか休めません。「ちょっと時間があるから、そこも片付けておこう」という感じです。頑張り癖のある人は、「ちょっと楽してみるのも大切」くらいに作業のスケジュールを立てるとよいですね。「楽」は「楽しい」に通じます。楽しんで作業すると楽かもしれません。「まだ大丈夫」というとき、「まだ楽な感じがあるうちに休もう」と気持ちを切り替えて「無理しないライン」をつかんでほしいと思います。
監修:大多和 二郎 先生
掲載日:2011年05月02日