健康予防医療コラム ~がん~

「癌」という字はいつ頃できた?

英語のCancer(癌)というのはラテン語のカニ

 英語のCancer(癌)というのは、ラテン語のカニという意味です。この言葉を癌という状態を表すのに用いた最初の人は、紀元2世紀頃に、南フランスで医者をしていたGalenus(ガレヌス)という人です。
 癌という病気は昔からあったことでしょう。しかし、病理学どころか解剖もなかった時代に、内臓に癌ができても、わかるはずがありません。癌という病気が治らず、死にいたる病気であると最初に認識されたのは、体の表面にできる乳癌や皮膚癌だったことでしょう。
 一方、注日本で癌という字が初めて使われたのは、1686年に刊行された蘆川桂洲著「病名彙解」という医書に「未だ潰して色紫黒に堅硬にして巳に潰て深く陥て岩のごとくなるを癌とす」と記載されています。それでも“乳がん”はなお乳岩と書かれています。従来癌という字は日本でつくられた国字といわれていますが、三木栄氏によれば朝鮮で1433年刊行の「御薬集成方」に載せられているとのことです。その頃より、今日の乳癌と全く同じ症状が記され、治り難き病気なりとしています。しかし、ついに1804年紀伊藩の華岡青州が麻沸散を用い、世界初の全身麻酔下で、乳がんの手術に成功しました。1835年までに158例を行いましたが、その時もなお乳巌と記載されています。その後、1843年に下総の佐藤泰然が行った乳がんの手術記録にはじめて“乳癌”の字が使用されています。
 *服部敏良:日本小百科「医学」近藤出版社 1985 

監修:高須良雄先生
掲載日:2004年04月24日

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