健康予防医療コラム ~休養・心の健康~
言って聞かせる
「何回言ったらわかるんだ!」「いつも言っているでしょ。まだわからないの!」「これだけ口を酸っぱくしていっているのに、なぜやめないんだ」などど、しかられた経験は多くの人が持っていると思います。日常生活の中でも、道を歩いていたり、スーパーの中などで親子連れとすれ違うと、そういう言葉をよく耳にします。
よく耳にするということは、何を言ってもわからないわからず屋の人が多いと言うことでしょうか? 何度言われても「わからない」から、やめないのでしょうか? もしかしたら、「わかっちゃいるけど、やめられない」のかも知れませんね。
いたずらをする子のほとんどは、自分が「いたずら」しているとわかっているのです。
つまり、わからないからしているのではなく、わかってしているのです。もし、信号が赤の時に道路を渡ると危ないと言うことを知らない子どもがいたとすると、信号のところで、子どもの手をしっかり握って、「あの色が赤いときには、ここで青になるまで待つんだよ」と、言って聞かせてあげる必要があります。それは「知らない」からです。
知らないことは、言って聞かせないとわかりません。しかし、いけないとわかっていることをしている人に、言って聞かせてもあまり効果がありません。なぜなら、「知っている」からです。
それにもかかわらず、学校の先生、親は、「言って聞かせよう」とします。人の心は「意志」「理性」によりコントロールされていると考えているからでしょう。それは、確かにそのとおりなのですが、いつも人間が「意志」「理性」でコントロールされているわけではありません。そこがポイントです。「魔がさす」「ついついつられて」「何となくそのときの気分で」「面白そうだったから…」というように、その場の「感情」「欲求」「雰囲気に乗って」などの力で動くことがあります。いつもならそんなことをしないのに「みんなやっていたので…」「その場の雰囲気の中でつい…」ということなどです。
そんなときには、理性や意志でコントロールできなかったことについて指摘しながらも、今度は気をつけるように、丁寧に伝えると効果的です。
「君は、こんなことしちゃいけないのはわかっているよね。でも、何となくしちゃったね。
そして、みんなに迷惑かけたね。わかっているよね。今度は、本当にしてもいいの?と自分の心に聞いて、深呼吸してからしようね。そうすれば、やっちゃった…と思うこともないよ。きっとできるよ。」と、言ってみてはどうでしょう。
監修:大多和 二郎 先生
掲載日:2007年03月01日