健康予防医療コラム ~休養・心の健康~

注意を促す言葉・人を動かす言葉

「こころに描ける」イメージ

 「いつもトイレをきれいに使ってくださってありがとうございます」という張り紙をトイレで見かけたことはありませんか? 「トイレを汚さないようにしてください」というメッセージより、何となく印象がよいですよね。

 困った行動を注意しようとすると、すぐに口をついて出てくるのが、「○○しないように」「○○するな」という言葉ですね。スーパーの中などで母親が小さなお子さんに「ほらほら、うるさくするんじゃないの!わがまま言うのやめなさい!」としかっているのをよく目にします。学校の先生にしても、親にしても、子どもに「よりよい態度」「よりよい行動」を教えようとしているのですが、「いったい何をやっているの?まったく…」という、困った気分やイライラなどが加わって、強い口調と共に「○○しないように!」と注意することがよくあります。「いつもトイレをきれいに使ってくださって…」は、その反対です。

 人間はイメージ力がとても豊かです。生きている生活場面のいろいろなところで沢山のイメージを蓄えています。小説や人の話を聞いているとき、必ずと言っていいほど、話しを映像化して聞いています。そして描いたイメージがこころを動かしていきます  怪談話を聞くと怖くなるのは、はなしから怖いイメージを描くからです。ですので、人に話をするときに、「どのようなイメージが相手の脳裏に描かれるか」を考えて話すと、理解しやすく、目的とすることをちゃんと伝えられることになります。

 「トイレを汚さないように…」という言葉は、その言葉を聞く人の脳裏に「汚いトイレ」のイメージをつくります。そして、「そうしないように」という言葉が添えられます。  まず、描いたイメージが強く、それがこころに入ってしまいます。しかも、本当に伝えたいメッセージは「○○でないように」と、そのイメージを否定するだけですので、望ましい姿のイメージを提供しません。そういう理由で、「トイレをきれいに使っていただいて」のメッセージは、「きれいなトイレ」のイメージを描かせて、「どうもありがとう」と言っているので、印象もよいし、望ましい姿が明確なイメージとして伝わります。  伝えたいことをまず、「イメージ」として提供するように、相手にメッセージを送ることで、本当に伝えたいことが相手の心に入ります。「こころに描ける」イメージのコミュニケーションを、是非今日から試してみてください。

監修:大多和 二郎 先生
掲載日:2007年02月01日

TOPへ戻る