健康予防医療コラム ~休養・心の健康~

花火の夜

日常の中に非日常

 夏になると、あちこちで聞かれるのが「花火大会」の予定です。
 浴衣を着て、うちわを片手に、夏の夕暮れ時を花火大会に向かう気持ちはワクワクしますね。
 夜空に光の玉がまっすぐに天に向かい、あるところでぱーっと光のしずくのように色とりどりの火花が夜空を彩ります。毎日見慣れているビルの谷間の空に、また、ご近所のお宅の屋根の向こうに、普段見ることのできない年に一度の光の花が開く瞬間です。「わーっ」と、思わず声が出てしまうほど美しい光の芸術にしばし見とれてしまいます。
 最近の花火大会では、蝶のかたちや、人の顔、星形など、創作花火も盛んで、「今度はなにかな?」と、意外性の楽しみもあります。

 花火の魅力は、数秒間の空間芸術にあるのかも知れません。ずっと眺めていられる彫刻や絵画と違って、その瞬間、瞬間の時間の流れをしっかりと見ることによって、多くの人と同時に感動を共有できる「時間と空間の芸術」だと思います。家族や友人と一緒に見上げた夜空に光が舞い、それを同時に感動を共有できる時間が人々の心を一つにします。
 何気なく通り過ぎている日常的な河や海辺の風景の中に、数秒間の芸術の華が舞い続ける非日常の時間帯、それが花火大会です。

 日常の中に非日常が登場することでとても新鮮ですし、それがまた明日からの日常への力となります。日常の節目としての非日常の約1時間半ほどの大イベントが、こころを豊かにしてくれています。老若男女がおなじように、おなじ瞬間に感動を共有できるすばらしい時間ですね。人と人との心を繋ぎ続ける花火大会の夜を、日常の節目、そして人と人との心のつながりを実感できる豊かな時間として、あらためて味わってみると、花火大会に我々がなぜそれまでにワクワクするのかが見えてくるような気がしませんか?  綺麗な花火を見たときの、誰ともなく発せられる「わーっ、すごーい!」という言葉の波が、人を繋ぐ空気として夜空の一点を見つめる人たちの心をつかむのでしょう。

監修:大多和 二郎 先生
掲載日:2006年08月15日

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