健康予防医療コラム ~休養・心の健康~

不安から得ているもの…

不安な気持ちに不安になる

 あなたは、最近不安になったことがありますか? もし、「そういえば全然ないな」という答えなら、あなたはかなり幸せかも知れません。なぜなら、多くの人が多かれ少なかれ不安を抱えて生きているからです。

 どんなときに自分は不安になるのか考えてみたことがありますか? 最近不安になったときのこと、または今抱えている不安なことをちょっと思い出してみてください。
 「地震が来ても家は大丈夫だろうか?」「友達との約束を破ってしまったけど、怒っているんじゃないか…」「仕事の先行きが見えず、暗い気分になる」「病気になりはしないか…」ちょっとした不安から、大きな不安、考えても答えの出ないような不安など、いろいろありますね。人は「先が見えないとき」「身の危険を感じたとき」「人からの評価が下がるのではないかと言うとき」「大切なものや人を失いそうなとき」などに不安を感じます。

 「人は、不安になることで何を失い、何を得ているのか」と考えて見たことがありますか? ちょっと変な質問に聞こえたとしたらお許し下さい。私は本当にそのことを考えています。
 なぜなら、人の心や体はとてもよくできていて、さまざまな形で生命を維持するように、環境に適応するようにできているからです。暑いときには汗が出て体温の上昇を防ぎ、寒いときには鳥肌が立って体温の低下を防ぐように、こころもきっと意味を持って不安になるのではないかと思います。

 人は「危険」を感じると不安になります。それが原始時代には主に身の危険だったのかも知れませんが、社会が発展してきて「社会的生命」が危うい場合、「人との関係」が危うい場合も、危険と感じ不安になります。そして不安になることで「何とかしないといけない」という気持ちになること、「よく考えよう」「よくそのことを見よう」という注意もできるようになります。これが不安から得ていることです。しかし、「不安で、不安で、夜も眠れず、やるべきことが手に着かず…」というのでは、時間やエネルギーを失ってしまいます。
 せっかくのシグナルなのに、そのシグナルに悩んでしまって、不安な気持ちに不安になるというのでは、本末転倒です。

 言い換えると、不安は本来人間が環境に適応して行くために、危機状況をしっかり認識して行動するための注意のシグナルのようなものかもしれません。しかし、警報を切らずにいるとそのうるささと、緊張感で自分自身がかえって動けなくなってしまいます。

 不安になったとき、ちょっと考えてみてください。「不安から何を得ているのか?」すると、「不安な気持ちに不安になる」という悪循環から抜け出せるかも知れません。

監修:大多和 二郎 先生
掲載日:2006年07月15日

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