健康予防医療コラム ~休養・心の健康~
からだの姿勢、こころの姿勢
「姿勢を正す」「姿勢を見直す」「姿勢を明確にする」など、日常会話で「姿勢」という言葉はよく使われていますね。
あまりにも日常的なので、からだの姿勢の比喩であることに気づかないかも知れませんが、多くの場合、「態度」「方針」「ポリシー」などを「姿勢」にたとえて表現しています。
比喩というのは、それなりに背景があります。人間のイメージの中で類似性があると感じるから比喩になるのです。伏し目がちで、猫背で腰を落とした「からだの姿勢」を見たとき、「やる気がないのかな?」「絶望しているのかな?」「不安なのかな?」と感じます。
また、背筋がまっすぐで、胸をひらき、しっかり前を見ている人を見ると、「自信がありそうだな」「信念を持っているのだな」と感じます。こころは不安のまま、姿勢をぴしっとしようとしてもなかなか難しいものです。つまり、からだの姿勢とこころの姿勢は、かなり連動、または関係しているというのを、みな感覚的に知っています。
ここでさらに一歩考えを進めてみましょう。では、本当に比喩にすぎないのでしょうか?
なぜこのようなことを言うかというと、悩みの相談を受けていると、その人の悩みが解決に向かっていくと、それに併行してその人の姿勢がよくなっていくことが多いからです。
特に姿勢の話題もなく、本人も特に体操や姿勢矯正をしていなくても、姿勢が変化して行きます。伏し目がちで猫背で、腰が引けていた人が、背筋をのばして、胸をひらいて前をまっすぐに見るようになってくると、思わず別人かと思うことがあります。
今、あなたはどのような姿勢でこの文章を読んでいますか? そして今の気持ちはどんな気分ですか? 今の気持ちとからだの姿勢をチェックしたら、今度はあらためて背筋を伸ばしてあごを引き、前を見て一回大きく伸びをして肩の力をストンと抜いてから気持ちを感じてみて下さい。 どうですか? もし、気持ちが違っていたら、もしかしたら姿勢が違うためかもしれません。不安な気持ちのときに、腰を引かずにまっすぐ立てて、背筋をのばして顔をあげるだけで、気持ちがしっかりしてくることがあります。
どうぞおためし下さい。
監修:大多和 二郎 先生
掲載日:2006年06月15日