健康予防医療コラム ~休養・心の健康~
桜咲く…
桜前線の知らせが天気予報で伝えられるようになる季節に、春を感じます。
長い寒い冬を通り抜けて、春の暖かい日ざしを感じ始めた木々が芽吹く頃、桜の木もつぼみを膨らませて、自分の出番をじっと待ちます。そして3月下旬頃からあわいピンク色の花びらを一斉にひらいて、その存在感をみせてくれます。
日本人は本当にさくらが好きだと思います。花見、新入学、春の訪れ…その季節。
新しい何かが始まるときに、その花びらの淡い色や、それでいて、木が花に覆われる華やかさが相まって、春と言えば桜というイメージが日本人に浸透しています。
桜に限らず、3月から4月にかけては、すみれ、桜草、雪柳、木蓮、こぶし、沈丁花など、沢山の花が咲き、風景を明るくしてくれています。植物は、日照時間や気温などを感じて開花すると言われていますが、自然に生きる生物は、その自然環境を感じつつ、自らの生を微妙なバランスで保ちながら、生きていると思います。
しかし、植物に限らず、私たち人間も自然環境の中で生きる生き物ですから、季節の変わり目を身体や心は微妙に感じ取り、それにすこしずつ適応しようと変化しているのです。冬の寒さの為に緊張していた心身がゆるんできて、自律神経の働きのバランスが少し変わりますので、春眠暁を覚えずという言葉もあるように、すこし眠かったり、ぼーっとしたりする人もいますし、精神的にもゆったりした気持ちになる人もいます。
その一方で、体調のバランスを崩して弱っている人にとっては、気候の変化に心身がついていけず、不安な気持ちになる人もいます。最近では、杉花粉症の人がふえていますので、春を「つらい季節」と感じる人も増えてきました。さくらが咲いているというのに、お花見どころではなく、マスクとティッシュが手放せないのはつらいものですね。
コンクリートの建物の空調の効いた環境で、事務作業などしていたり、一年中おなじ野菜や果物が並ぶスーパーの売り場を見ていると、季節を感じ取りにくいのが現代人です。でも、植物までとは行かないまでも、私たち人間も「季節」の流れを感じて、その流れを大切に逆らわずに生きていきたいものですね。
監修:大多和 二郎 先生
掲載日:2006年04月01日