健康予防医療コラム ~休養・心の健康~
「心地よさ」
誰もが楽しく幸せに生きたいと願うのは当然のことです。しかし、残念なことに「心地よさ」だけを感じて生きることはできません。職場でも家庭でも友人関係でも、失敗や誤解やコミュニケーション不足などで不快な思いや、悲しい思いをすることがあります。そんなとき、「この辛さから逃れたい」と多くの人が気分転換や切り替えをしようとします。お酒や食事、映画を観たり、娯楽施設に行ったり、ギャンブルを楽しんだり…
しかし、食べ過ぎ飲み過ぎで体調を崩したり、お金の使いすぎで新たな不安やイライラを生んだりしてしまうこともあります。気分転換は大切だとしても、そのときの「心地よさ」だけで行動すると、食べ過ぎ、飲み過ぎ、お金の使い過ぎで心身の不調にしてしまっては、本末転倒です。ですから、今のこの瞬間の「心地よさ」と、もう少し先まで見通した「心地よさ」にも気を配ることが、気分転換のコツです。
また、自分にとっての「心地よさ」は、本当にからだによい「心地よさ」なのかどうか、気づいていない人も多いようです。スポーツクラブに通い始めて半年の人が言っていました。「最初、ランニングマシンで5分走っただけで、こんなに辛い思いしたくないと思っていたのに、今では、30分走らないとなんだかスッキリしないんです。人の心地よさってどんどんかわってくるんですね。」運動不足だったその人の体には、最初は苦痛だったランニングが、適度な運動として体になじんでくると、体は運動を求めるようになって、それを心地よいと感じるようになってきたのです。
運動不足である不健康な自分にとっての「心地よさ」はごろごろし続けることであったのに、運動する健康体の自分になると、逆にごろごろし続けることが「不快なこと」になってきたというのです。このように「心地よさ」は変化します。
いま、自分にとって「心地よいこと」とは、本当に自分の心や体にとってよいことなのか、不健康な自分をベースとした心地よさなのか、生活の中で見直してみましょう。
監修:大多和 二郎 先生
掲載日:2005年12月01日