介護保険のマメ知識:利用者が知っておくべき介護報酬の「加算」とは?

介護情報なら安心介護のススメ

やさしい介護ニュース

最新の介護動向や介護関連の
ニュースについて、わかりやすく解説します。

  • ツイート
  • facebookでシェア
  • LINEで送る
  • ツイート
  • facebookでシェア
  • LINEで送る

介護保険のマメ知識:利用者が知っておくべき介護報酬の「加算」とは?

こんにちは、セコムの武石(たけいし)です。

支え合いによって、介護保険が成り立っています。介護サービス事業者が、サービス提供の対価として受け取る「介護報酬」。
利用者は、介護報酬の1割~3割を自己負担しています。

介護報酬のことは、介護サービス事業者向けの話だと思っていないでしょうか。
実は、介護報酬を理解すると「わが家の在宅介護」を考えるうえのメリットになります。

介護報酬を理解するために、今回は毎月の介護保険サービスの計画と実績を記入しているサービス利用票でもよく目にする「加算」について解説します。
「加算」が利用者にどのように影響するのか、詳しく見ていきましょう。

● 介護保険は支え合いで成り立っている
もともと介護保険は、社会全体で高齢者の自立した生活を支えるために創設された制度です。

・保険料を支払う被保険者(加入者は、40歳以上のすべての方)
・介護サービスを提供する事業者
・保険者(市区町村)

3者が支え合い適正に運用されることによって介護保険が維持されています。
介護保険の制度では、「お手伝いさん」的な自立支援に関わりないサービスを受けることはできません。

「介護サービスは融通が利かない」という声があるのも事実です。
しかし介護保険は、民間のサービスとは異なります。
利用者もまた介護保険を支える一員であるということを理解しましょう。

介護保険制度において、介護サービス事業者は、介護保険の趣旨にそったサービスを提供しなければなりません。
事業者の収入にあたる「介護報酬」は、サービス内容やサービス提供体制によって「加算」「減算」される仕組みになっています。


● 3年ごとに見直されている介護報酬
介護保険制度では、3年ごとに介護報酬が見直され、「加算」「減算」の対象も調整されます。
「使っているサービスは変わっていないのに、自己負担額が増えた」というケースの多くは、介護報酬の改定によるものです。
介護報酬がどのような方針で改定されているのかを知ると、自己負担増の理由や、今後の在宅介護がどう変わっていくのかが見えてきます。

直近では、2021年に介護報酬改定が示されました。
(1)感染症や災害への対応力強化
新型コロナウイルス感染症の拡大や、台風、地震など自然災害を教訓に介護サービス事業者には、サービスが安定的・継続的に提供できる体制構築が求められています。

(2)地域包括ケアシステムの推進
高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らせるよう、認知症に対応できる人材の育成や、自宅での看取りサポートの充実が求められます。そのための必要な医療と介護サービスの連携強化が図られます。

(3)自立支援・重度化防止の取り組みの推進
住み慣れた家で自分らしく生活するため、自立支援やADL(日常生活動作)維持・向上に注力します。具体的には、根拠のあるデータを使ってケアの質の向上を図れるよう、データベースシステム(科学的介護情報システム)へのデータ提供やデータ活用の取り組みなども徹底されます。また、リハビリ・機能訓練、口腔(こうくう)ケア、栄養ケアなどの取り組みが強化されます。

(4)介護人材の確保・介護現場の革新
人手不足が著しい介護業界。人材確保や本当に介護職員でなければならない業務に集中できるような業務効率化のため、介護職員の処遇改善や職場環境改善、ICT(情報通信技術)活用などが推進されています。

(5)制度の安定性・持続可能性の確保
少子高齢化で今後ますます介護保険の維持が難しくなることが見込まれるため、必要なサービスを確保しつつ、ムダを減らしていけるよう、基本報酬や加算の見直しなどがおこなわれています。

これら5つの改定は、今後も加速する高齢社会において「寝たきりを減らす」「自宅での看取りを増やす」「認知症に対応できる社会を創る」といった方向性を示していると考えられます。
これらの実現に寄与するサービスや事業所の取り組みなどは加算の対象となり、介護報酬の算定基準を満たしていないと減算の対象になります。


● 介護報酬改定でより良い在宅介護が実現する?
介護報酬改定は、利用者にも関係があることです。
2021年の改定では、介護報酬が0.7%引き上げとなっており、なかには引き上げの影響が自己負担額に及ぶケースもあります。

一方で、介護報酬改定は利用者にとってメリットもあります。
たとえば今回の改定では、介護福祉士や経験年数が長い職員が多い事業者に対する「サービス体制強化加算」の見直しがおこなわれました。
人員の質と数を充実させる事業者が増えれば、利用者にとっては選択肢が増え、より質の高いケアを受けることにもつながるはずです。

また、認知症の方への対応や、自立支援の取り組みなども加算の新設・見直しがおこなわれました。在宅介護の家庭にとっては、困りごとや不安に対する、より手厚いサポートが期待できる可能性もあります。

国の目指す方針が介護報酬改定を通じて実現していけば、今後は介護度が上がっても在宅で過ごすことを選択する人がもっと増えていくことでしょう。
理想の介護社会を実現するためには、利用者の協力も必要です。
介護保険の本質を理解して、適切に介護サービスを活用し、より良い在宅介護生活につなげていただければと思います。

セコムの介護応援ブログTOPへ