入浴介助で役立つ便利グッズと「ボディメカニクス」の知識

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入浴介助で役立つ便利グッズと「ボディメカニクス」の知識

こんにちは、セコムの武石(たけいし)です。

入浴介助にもボディメカニクスを応用しましょう。在宅介護とお風呂」をテーマにお届けするシリーズも今回で3回目。
初回は、お風呂の効用や最適な入浴方法の見つけ方を、2回目となる前回は、入浴を嫌がる方への対応についてご紹介しました。

今回は、介護をするご家族の話。

在宅介護では、知っているか、知っていないかで、介護者の負担が大きく変わることがあります。
入浴介助を少しでもラクに、安全にしていただくために、道具や体の使い方(ボディメカニクス)をご紹介します。

● お風呂の「介助グッズ」は身体の状態にあわせて選ぶ
浴室は転倒のリスクが高い場所でもあります。
スペースもせまく、支えやすい姿勢がとりにくいこともありますし、手が滑ってしまうことも考えられます。
介助する方が力任せに頑張るだけでは、安全に入浴介助をするのは難しいと言えるでしょう。

そこで便利なのが、入浴用の介助グッズです。
たとえば、よく利用されているのが「シャワーチェア」です。
座位が安定している方はどのタイプでも使用できますが、座った姿勢が安定しない方は、背もたれや肘かけがあるタイプを使用すると安定します。

また、立った姿勢で浴槽をまたぐのが難しい方は、浴槽をまたごうとして片足立ちになった際に転倒してしまうという危険があります。このような方には「バスボード」(渡し板)の利用がおすすめです。
ボードの上に座ったままお尻をずらして、片足ずつ浴槽に入れていくので、立って浴槽をまたぐよりも安全性が高くなります。
浴槽と床の段差を解消する「すのこ」や、浴槽のふちに取り付ける手すりなどを利用する場合もありますし、バスリフトを使って浴槽に入る方もいます。

立ち上がりなどの入浴動作をサポートするために介助用ベルトを利用したり、浴槽内で体を安定させる滑り止めマットを敷いたりする方もいます。

安全に入浴するためにどんな介助グッズが最適なのかは、ご本人の身体の状態によって異なります。
ケアマネジャーや理学療法士の方(リハビリの先生)などに相談してみましょう。

お風呂の介助グッズは、直接肌に触れるものですのでレンタルはできません。
購入(介護保険適用で1割自己負担負担)することになりますので、ご本人に合ったものをしっかり選びたいですね。

もちろん、入浴中に感じる「危ないな」を解決する方法は道具だけではありません。
どんな動作のときが危ないのか、どういう助けがあればより安全に入れるのか、専門家と話し合って必要なサポート方法を見つけることがポイントです。


● 入浴介助中の体を守る「ボディメカニクス」
在宅介護で腰を痛めてしまう方は多いですが、なかでも入浴介助は腰に負担がかかりやすい動作がたくさんあります。

前かがみになって体を洗ったり、介護される方の体を支えたりすることを繰り返しているうちに、本格的な腰痛を発症してしまう方が多いようです。

私たちのように介護に携わるプロは、「ボディメカニクス」の理論を応用して、腰痛予防に努めています。
以前、詳しくご紹介しましたが「ボディメカニクス」とは、体の動きや力学などの知識を応用した技術のことです

正しい体の使い方をすることによって、無理なく支えたり、持ち上げたりできます。
力任せにしないので、腰痛予防にも大きな効果があるのです。

ボディメカニクスを応用した安全な入浴介助をいくつか紹介しましょう。
(1)なるべく広い面積で、体を密着して支える
ボディメカニクスの基本は広い面で支えること。
体を支えるときは、なるべく相手に近づいて自分の体を密着させるようにしましょう。
力がより大きく伝わるので、負担が少なくなります。

また万が一、倒れそうになったときも、近くにいれば大きな力(介護者の身体の一部)で支えられますが、離れていると介護者が腕を伸ばして支えようとしても支えきれない、支える側への衝撃も大きくなります。
お風呂で転倒の恐れがある動作のときは、できるだけ近い距離に接近しましょう。

(2)両足を開いて自分の体を安定させる
ボディメカニクスの原理のひとつに、「支持基底面積(床面に接している部分の広さ)を広くとり、重心を低くする」ということがあります。
具体的には両足を肩幅くらいに開いて、腰を落とすようにすることです。
シャワーチェアから立ち上がらせたり、体を支えたりするときも姿勢が安定しますし、腰への負担も軽減できます。

(3)なるべく腰を曲げない姿勢で介助する
重心を低くするのは、支えるときだけではなく、体を洗うときなども同じです。
ついつい前かがみで洗ってしまいがちなのですが、腰痛の元なので腰を落として安定した姿勢で行うようにしてください。
立膝になったり、自分もシャワーチェアに座ったりすると良いですね。
スペースが少ないお風呂場でしたら、ご自身が浴槽の縁に座って体を洗ってあげても良いと思います。
ご自身が安定した姿勢で介助することが、入浴介助を安全にするコツです。

また、入浴中は言葉をかけながら介護することも大切。「次に何をするか」を介助者の方がわかるので、安心して介護を受け入れていただくことにもつながります。


● お風呂場で転倒しないために忘れてはいけないこと
お風呂で転倒しやすいのは、「滑りやすさ」によるところが大きいです。
濡れているせいもありますが、石けんの泡で滑ってしまうことがよくあります。

お風呂に入る前、シャワーチェアから立ち上がるとき、浴槽から出てくるときなど、移動する先に泡が残っていないか、必ずよく見てください。
足元だけではなく、手すりや浴槽の縁など、つかまったり手をついたりする場所も同様です。

体を洗っているときもこまめに泡を洗い流すようにしましょう。
体が泡でツルツルしていたら支えきれません。
腕を片側を洗ったら、まずシャワーで洗い流す、足を洗ったらシャワーでまた洗い流す...といった具合です。

手のひらは支えるときに重要な部位なので、ご自身の手についた石けんは都度よく洗い流すようにしてくださいね。都度、手についた石けんを洗い流すために、蛇口をひねったりシャワーでお湯を出して洗い流すよりも、洗い桶を常にきれいなお湯で満たしておき、それでご自身の手を洗って石けん分を落としておくことも大切な危険防止です。高齢者と言わず、人はバランスを崩しそうになると、目の前にあるものに掴まってバランスを保とうとします。その行動を見通した対策を取っておくことも必要ですね。

また、浴室や浴槽のおそうじ不足も転倒の原因になることがあります。
残り湯のぬめりで滑ってしまったり、排水口につまった髪の毛で水の流れが悪くなり足を取られてしまったりすることも考えられます。

気持ちよく入浴していただくためにも、お風呂そうじは大事です。
ご本人が手をつく場所や足元は特に丁寧にチェックしておくと、転倒のリスクを減らせるはずです。

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