その他安全 2023年12月06日

第393回 「クーリング・オフ」を正しく知ろう

「クーリング・オフ」とは、一定期間内であれば、契約を無条件で解約できる制度。「名前を聞いたことはあるけれど、詳しいことは知らない」「自分には関係ない」と思っている方も多いのではないでしょうか。
クーリング・オフが必要になるかもしれないシチュエーションは、案外私たちの身近にあります。
思いがけない消費者トラブルに巻き込まれたときどうすればよいか、クーリング・オフについて正しく知っておきたいですね。

今回は、セコム㈱法務部の原 江里奈に、クーリング・オフや消費者トラブルを回避するために覚えておきたい基礎知識を聞きました。

プロフィール
セコム㈱ 法務部 主務 原 江里奈さん

◆セコム㈱ 法務部 主務 原 江里奈

2018年セコムに入社。約5年間法務部に所属。2022年7月から1年間米国法科大学院に留学し、LL,M. (法学修士)を取得。
主に日常的な契約書の審査業務、M&Aプロジェクト、コーポレート関連案件などを担当。

「クーリング・オフ」ってなに?

Q
「クーリング・オフ」とは、どのような制度なのか教えてください。
A
クーリング・オフとは、不本意な契約を締結してしまった消費者のための救済制度のひとつです。
申し込みや契約締結をしたあとでも、一定期間であれば消費者の意思で契約を撤回・解除することができます。
ただし、すべての契約にクーリング・オフ制度があるわけではないことに、注意が必要です。
Q
女性が気を付けたい契約にはどのようなものがあるのでしょうか。
A
脱毛サロンや医療サービス、エステなど美容関連のサービスなどは、相談が多く寄せられているとして、国民生活センターのホームページでも注意喚起がなされています。
また、2022年に成人年齢が引き下げられ、18歳から保護者の同意無しでの契約行為が可能になっていますので、18歳・19歳の方も消費者トラブルに注意しましょう。
事前に契約内容をしっかりと確認し契約することが一番ですが、万が一契約後に解除したいと思った場合に備えて、クーリング・オフについて知っておくことは大切です。

「クーリング・オフ」が適用できるのはどんなとき?

Q
クーリング・オフが適用できるのは、どのような契約でしょうか。
A
特定商取引法で定められている、クーリング・オフが適用できる取引は次の6つ。クーリング・オフができる期間がそれぞれ決まっています。

【クーリング・オフできる期間:8日間】
(1)訪問販売
自宅等営業所以外の場所で商品の販売や役務(サービス)を提供する取引(キャッチセールスやアポイントメントセールス等を含む)
(2)電話勧誘販売
事業者が電話勧誘により商品の販売や役務(サービス)の提供を行う取引(電話後に郵便や電話で消費者から申し込む場合も含む)
(3)特定継続的役務提供
長期・継続的にサービスを提供して対価を払う取引(現在、エステ、美容医療、語学学校、学習塾、家庭教師、パソコン教室、結婚相手紹介サービスの7つの役務が対象)
(4)訪問購入
事業者が営業所等以外の場所で商品の買取を行うもの(貴金属の買取など)

【クーリング・オフできる期間:20日間】
(5)連鎖販売取引
個人が販売員として勧誘し、さらに販売員を連鎖的に拡大させていく取引(いわゆるマルチ商法)
(6)業務提供誘引販売
「仕事を紹介する。収入が得られる」などと消費者を誘引し、「仕事に必要」として商品等を売るもの(内職商法、モニター商法など)

クーリング・オフできる期間は、「申込書面または契約書面のいずれか早い方を受け取った日」からカウントします。
クーリング・オフを伝える書面を郵送で送る場合、上記書面を受け取った日を含めて8日以内または20日以内の消印で書面を発信すれば、事業者に届くのが8日または20日を過ぎていてもクーリング・オフは有効です。
ただし、上記書面の記載内容に不備があるときやクーリング・オフ妨害があったとき(クーリング・オフができないと事業者が言ったり、脅したりしてクーリング・オフができなかった場合など)は、所定の期間を過ぎていてもクーリング・オフできる場合があります。
Q
クーリング・オフの意思表示は「郵送で通知」が必須なのでしょうか。
A
以前は「書面での通知」だけが有効でしたが、2022年から「電磁的記録による通知」も有効になりました。
電子メールのほか、事業者の自社ホームページに設置されている専用フォームから通知する方法などがあります。
どの方法を選ぶとしても、クーリング・オフの意思を明確に伝えるために、必要な情報を正確に記載することが大切です。
具体的には、契約年月日、契約者名、購入商品名、契約金額、クーリング・オフ通知を発した日など
国民生活センターのホームページなどに、クーリング・オフ通知の記載例がありますので、参考にしてみてください。
Q
クーリング・オフの通知を出すときに、ほかに注意すべきことはありますか。
A
通知した内容をしっかり保管しておきましょう。
書面であれば手元にコピーを残し(ハガキの場合は両面コピー)、少なくとも特定記録郵便や簡易書留など配達記録が残る方法で発送しましょう。法的には、書面を発送したときに効力が生じますが、業者から「書面が届いていない」などと言われるのを防ぐためには、はがきを配達証明郵便で送るか、内容証明郵便を配達記録付きで送るのがおすすめです。
電子メールなら送信記録を残しておく、専用フォームならスクリーンショットや写真を撮っておくなどしておきましょう。

支払いの際に個別にクレジット契約を締結した場合は、クレジット会社にも同時にクーリング・オフ通知を出しておきましょう。

「通信販売」でクーリング・オフは可能?

Q
最近ではネットショッピングをすることが増えました。ネットショッピングもクーリング・オフの対象になるのでしょうか。
A
ここは注意が必要なのですが、ネットショッピングのようないわゆる「通信販売」はクーリング・オフの制度がありません。特定商取引法で、商品の引き渡しを受けた日から8日間は、申込みの撤回や解除ができ、消費者の送料負担で返品ができる旨定められていますが、この点に関し、事業者が広告であらかじめ、特約を表示していた場合は、特約の内容に従うことになります。
インターネットで化粧品やダイエットサプリなどのお試し商品を申し込んだら、「知らないうちに定期購入になっていた」「解約できない」といったトラブルも増えていると聞いています。「初回無料」「今だけ」のように急かされるSNS広告も存在していますが、定期購入が条件になっていないかや返品特約の内容をしっかり確認するとともに、万が一の時のために、注文時の画面やメールを保存しておきましょう。

余計なトラブルに巻き込まれないために

Q
トラブルに巻き込まれないためには、どうすればよいでしょうか。
A
電話勧誘や訪問販売など、不意に勧誘されることもあるかもしれませんが、そんなときでも「いざとなったらきっぱり断らないといけないぞ」という気持ちを持っておくことが大切です。
断り切れなくて契約してしまった場合、クーリング・オフ制度が認められている契約であれば、クーリング・オフすることは可能ですが、その場合であっても、クーリング・オフの通知など、その後の手間はかかります。
悪質な業者によるクーリング・オフトラブルもあるかもしれません。
どのような契約も慎重に考えて行うことがベストです。

契約を結ぶ際は、決して即決せずに、時間をかけてしっかりと契約内容に目を通すこと。
特に支払総額、契約期間や返品・契約解除に関する項目は確認し、理解しておきましょう。
今は口コミ情報や事業者の評判なども、インターネットで簡単に調べられますよね。納得できるまで確認してからの契約でも遅くはないはずです。

これは通信販売でも同じ。
申し込む前に、どういう条件なのか、キャンセルや返金条件、利用規約はどうなっているのかをしっかり見てくださいね。
たとえば販売ページに「初回価格は3カ月以上定期購入を継続した場合に適用」などと書いてあった場合、初回分だけで解約をするのは難しい場合があります。
「返品不可」と書かれている商品を購入する際も、納得してから購入しましょう。

残念ながら、「知らなかった」「気づかなかった」では済まない場合もあります。
ついつい他人事だと思いがちな消費者トラブルですが、自分が消費者トラブルに巻き込まれるかもしれないことを頭の片隅において、慎重に行動してほしいと思います。
「安易に契約しない」ことをいつも心にとめておきましょう。
Q
万が一、トラブルに巻き込まれてしまったら、どうすればよいでしょうか。
A
少しでも不安に思ったら、すぐに消費生活センターや消費生活相談窓口に相談しましょう。
・消費者ホットライン「188(いやや)」

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