防犯 2019年03月06日

第276回 【インタビュー】イベント時の人混みに潜む女性を狙う犯罪リスク

3月には「花見月」という異名があるそうです。梅や桃が咲きはじめ、もう少しすれば桜の蕾もほころびます。
さまざまな花が春の訪れを告げる3月ですが、新年度に向けて何かと忙しい方も多いと思います。女性の身体はデリケートですから、忙しいときほどリラックスタイムをつくって自分をいたわってあげてくださいね。お部屋に春の花を飾ると、気持ちも和らぎそう。
私も美しい花々にエネルギーをもらって、忙しい季節を乗り切りたいと思います!

2019.3.6更新

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大勢の人でごった返すイベントでは、女性が被害にあう犯罪・事件がたびたび起きています。
ハロウィーンや年末のカウントダウン、サッカーや野球などのスポーツ観戦、花火大会や地域のお祭りなど、不特定多数の人が集まる場には、女性を狙う特有のリスクもあります。
女性が安全にイベントを楽しむには、どうしたら良いのでしょうか。
警視庁生活安全部の渡辺裕子警視と、桑原リカ副主査にお話を伺いました。

イベント会場で女性があいやすい犯罪被害

昨年のハロウィーンには、路上の軽トラックを横転させるなど暴徒化した様子がニュースでも取り上げられました。イベントでの過激さがエスカレートしているようです。

「粗暴な暴行や傷害、窃盗などの被害の他にも、女性を狙った痴漢や盗撮など性的な被害も多数発生しています。
なかでもハロウィーンイベントは仮装していることもあり匿名性が高く、お酒を飲んでいる人も多いので、トラブルが発生しやすい傾向があると言えるかもしれません。
しかしイベントの大小にかかわらず人が集まる場所には犯罪被害のリスクがあります」と渡辺裕子警視。

「人混みで身体を触られる痴漢被害は、被害届が出されていないケースも多く、警察が把握している以上にたくさん発生していると考えています。
盛り上がっているときや、目の前のものに夢中になっているときには背後にすきができやすいものです。そのすきを狙って身体に触るということを繰り返す者もいます。イベント会場に集まるのは、純粋にイベントを楽しむ人だけではなく、犯罪をする目的で来ている人もいるかもしれないということを知ってください」

盗撮も、イベント会場では多い犯罪のひとつだそうです。

「たとえば書店などのもの静かな店舗内であれば、シャッター音で背後から盗撮されたことに気付くこともあります。
ところが人混みでは音が聞こえにくいですし、イベント会場だと撮影しているだけなのか、盗撮なのか見分けがつきにくいので、女性が被害を自覚することが難しいのです。
また最近、増えている動画での盗撮行為では、音で気付くということが難しくなっています。
盗撮方法も巧妙です。カメラのレンズがどこにあるかすぐにはわからない場合もあります」

桑原リカ副主査によると、不審な動きをしている人には要注意とのこと。
手を下に伸ばしてスマホを持っていたり、女性の足元に足を差し入れたりしている場合は、盗撮の可能性があると言います。

「盗撮は被害者が気付きにくい犯罪です。
女性は狙われやすいことを意識しておくべきだと思います。ときどき背後を振り返って、不審な人がいないか確かめてくださいね」

「楽しむために参加するイベントで、ずっと緊張しながらすきをつくらずに過ごすのは難しいと思います。
でも犯罪被害があることを知っていると、イベントに出かけた先でも自衛心が働くものです。もしかしたら狙われているかもしれないという意識を持つことが大事です。
ときどきまわりを見回してみる。服装や荷物の持ち方にも、少し気を配る。
ちょっとしたことですが、自分でできる範囲で気を付けてもらうだけでも、犯罪にあうリスクを軽減できるはずです。また、親御さんであれば、お子さんが外出する際に一言「『防犯も意識して、気をつけなさい』と声をかけることで、気を付けるきっかけになります」と渡辺警視。

家に帰るまで油断は禁物!イベント会場を離れてからも潜む犯罪リスク

イベント会場には、さまざまな思惑を持った人が集まります。
女性との出会いを目的にイベントに参加している人もなかにはいて、トラブルに発展するケースもあると言います。

「イベントで出会った人と意気投合して、どこかに飲みに行こう!となることもあると思います。
大人同士であればそのこと自体は悪くはありませんが、飲み物に薬を混ぜられて、性被害にあうといった事件が発生していることも知っておいてほしいですね。
飲み物以外にも、ヨーグルトとか、サラダとか、食べ物に薬を混ぜられたケースもありました。
知らない人、知り合ったばかりの人と飲食に行くことになったときは、特に油断しないようにしてください」と渡辺警視。

「デート・レイプ・ドラッグ」による性犯罪被害については、以前にコラムでまとめているのでぜひ参考にしてください。
「デート・レイプ・ドラッグ」は、イベントのような非日常的なシーンで盛り上がったときに陥りやすい罠なのかもしれませんね。

「デート・レイプ・ドラッグ」による性犯罪への対策についてもお聞きしました。

「お手洗いなどで席を立って戻ってきたら、テーブルの飲み物には手を付けず、新しいものを頼みましょう。また、強引に勧められた食べ物や、薬などは絶対に口にしないでください。
ちょっとでも飲み物や食べ物の味が変だと思ったときや、急に眠気がさしてきたときは、すぐにその場を離れること。相手に悪い、などと考えてはいけません。
警察に行けば、薬物の検査を受けられます。薬物が検出されれば事件の可能性があります。
睡眠剤は時間がたつと排出されてしまいます。なるべく早く行動することが大切です」

イベントからの帰りが夜遅くなるときは、自宅までの帰り道にも注意してほしいと桑原副主査。

「目をつけられて、あとをつけられてしまうことも考えられます。
イベント会場を離れてからも、十分に注意して帰るようにしてください。
ときどき、後ろから不審者がついてきていないか振り返り、なるべく人通りが多い明るい道を選んで歩いてくださいね」

イベント会場や人混みでできる安全対策

もしもイベント会場で、痴漢や盗撮などの被害にあってしまうようなことがあったら、どうしたら良いのでしょうか。

「すぐに警察に通報してください。
大きなイベントで大勢の人が集まるときは、警備している警察官が近くにいるはずです。近くの警察官に伝えてください。
対応が早いほど検挙につながりやすいですし、周辺の人に注意を促してさらなる被害を防ぐこともできます。そのまま放置しないことが、イベント会場の安全性を高めることになります」と渡辺警視。

警視庁の防犯アプリ「Digi Police」も紹介していただきました。
「周辺の不審者情報や、最寄りの警察署までのルート表示など、防犯対策に役立つ機能を集めたアプリです。防犯ブザーとしても使えますし、チカン被害の際に怖くて声を出せないときに『痴漢です 助けてください』と文字表示したり、『やめてください』と音声で知らせる機能もあります。
土地勘のない場所に行ったときの安全対策としても活用できますし、満員電車で痴漢被害にあったときなどにも役立ちますよ」

警視庁の防犯アプリ「Digi Police」には、防犯のために必要な情報や機能が集約されているので、いざというときも慌てずに対処できそうです。
女性に心強いアプリなので、インストールしておくことをおすすめします。

最後に渡辺警視はこのようにおっしゃっていました。
「日本はとても治安が良い国で、刑法犯の認知件数も年々下がっています。
性犯罪についても、他の先進国に比べて非常に少なく、どなたにとっても安心なすばらしい国だと思います。
けれども、犯罪がゼロというわけではありません。
自分が狙われたり、被害にあわないよう、自分で気をつける意識を持ってください。
イベントは楽しむことが第一ですが、防犯をいつも忘れずにいてくださいね」

防犯対策の第一歩は、「もしかしたら自分が...」と考えること。
起こりうるリスクを、自覚して意識することからはじめましょう。
今後、世界的にも注目される大規模なスポーツイベントを控えています。
世界中からさまざまな人が集まって、日本中が盛り上がるでしょう。
今のうちから自分を守る意識を高めて、歴史的な大イベントを迎えたいですね!

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