助成研究者情報(結城美智子先生3)|安全安心な科学技術の振興:セコム科学技術振興財団

福島県立医科大学教授 結城美智子先生インタビュー「在宅がん患者の化学療法に伴う抗がん剤人的環境曝露防止のための地域安全システムの構築」(第1回)

A病院、B病院の現在の対策を検討することも必要ということですね。

 そういうことになります。両病院ともに、抗がん剤の除去に関しては平均レベル以上にあると思われますが、それでも検出されてしまいました。今回の調査では、抗がん剤を取り扱った直後の手袋を調査しました。現状では、看護師などが使用する使い捨てゴム手袋は、通常30分で替えなければいけないとされていますので、まずはこのことを徹底されているかどうかも検討の余地があります。また、今回の調査結果から、患者が使用する病院内のトイレだけでなく、患者が使用するベット脇や、テーブルなどにも抗がん剤の残留物があることが明らかとなったことから、これらを除去することもおこなう必要があります。こういうことは、客観的なデータがあってはじめて議論が可能になると思うのです。

今回の調査で、一番苦労されたことは何でしょうか。

 一つには、調査対象者の協力を得ることでした。患者が外来で治療を終えた数日間は体調が思わしくないことがあります。食欲不振、倦怠感、便秘や下痢などで万全の体調でない時に尿を採取して頂いたり、トイレのふき取り調査に協力を頂くのは容易ではありません。協力してくださった対象者の方には心から感謝しています。
 もうひとつは、調査方法です。たとえば、病院内の拭き取り調査ひとつとっても、容易なことではありません。まず、手袋をはめ、写真中央の専用の薬剤を対象場所に付着させます。その後、布(写真右)で拭き取り、布を専用ケース(写真左)に収納するのですが、その場所が水平という場合はまれで、その多くは、下に液が垂れてしまうようなところです。ひとつひとつの調査に細心の注意が必要でした。
 
 今回の調査では、患者の家族に曝露があったことはわかったのですが、だからといって
ただちに健康問題があるかどうかはわかっていません。

立証できないのであれば、極度に曝露をこわがる必要はない、というような意見がまかりとおってしまうというわけですね。

 はい。まずは、私達、医療従事者の曝露予防の認識も大切であると思っています。そこで今回の研究では、単なる抗がん剤の残留調査だけではなく、医師、看護師に対するアンケート調査を行うことにしました。その医師や看護師は、これから広がるであろう在宅でのがん化学療法に携わる方々で、これはWEBで公開されている一般社会社団法人全国在宅療養支援診療所連絡会に登録されている495の病院・診療所(平成25年7月)に属している方を対象としました。

その結果はどうだったのでしょうか。

  医師102名、看護師66名から回答をもらうことができました。医師のうち、過去1年間に抗がん剤治療をおこなったことがあると回答したのは24名でした。そこで明らかになったのは、抗がん治療における自分自身のための曝露予防については、「何もしなかった」と答えた医師・看護師が80%であり、また、治療をうけた患者とその家族に対しても抗がん剤曝露予防に関する指導・教育は「何もしていなかった」がほとんどであったことです。


 いま、大きな病院では注射による治療が多いのですが、診療所ではおこなっている抗がん剤化学療法は内服薬が多いようです。服薬する患者本人やそれを手伝う家族への曝露予防も考えなければなりません。また、アンケート結果からも、医療従事者自身の曝露予防について具体的に知りたい、という回答がたくさんありました。

まずは、在宅でのがん化学療法に携わる医師・看護師の方々、
抗がん剤への曝露に対する意識を高めることも大切ということですね。
さらに詳しくお伺いしたいところですが、それについては、第2回のインタビュー記事にてお願いできればと思います。
ありがとうございました。