助成研究者情報(三浦昌生先生1)|安全安心な科学技術の振興:セコム科学技術振興財団

芝浦工業大学システム工学部環境システム学科 教授 三浦昌生先生インタビュー「地域安心システムの実現に向けて」

高齢化社会の進展や、これからますます深刻化するであろう一人暮らしの高齢者の住宅問題、医療・介護問題など、高齢者とその関係者を覆う不安は色濃くなる一方です。このような状況の中、三浦先生は高齢者を支える仕組みそのものを変革するソーシャルビジネスを目指して研究を進めています。今回はセコムにて大型研究助成を行った「社会システムデザインプロジェクト 地域あんしんシステムを実現するためのソーシャルビジネスの創成」の目的と内容について、直接お話をお聞きしました──

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1991年より芝浦工業大学システム工学部環境システム学科助教授。1997年より同教授。2009年よりシステム理工学部長、現在に至る。 専門は都市環境工学・建築環境工学。著書として「Q&A 高齢者の住まいづくりひと工夫」(日本建築学会編、中央法規)など。設計作品として「富士見市立みずほ学園(障害児通園施設)基本設計」。社会的活動として、さいたま地方裁判所専門委員など。

まずは、「地域あんしんシステム」の目的についてお聞かせください。

日本は、数十年後には「超高齢化社会」を迎えるといわれています。このため、高齢者の健康・医療・介護・生活を支える新たな社会システムをデザインすることは、現在の日本が抱える最重要課題です。「超高齢化社会」は、未だどの国も経験したことがありません。日本が世界で最初にこの課題に取り組み、画期的なモデルを構築することで、国際社会をリードしなければならないのです。
 私たち研究グループはこの課題に真正面から取り組むために「社会システムデザインプロジェクト」を立ち上げ、5年間にわたるセコム科学技術振興財団の研究助成の下に、地域あんしんシステムを実現するためのソーシャルビジネスの創成に尽力してきました。この研究には、3つの目標があります。まずひとつは、高齢者が安心して生活できる居住環境および健康・医療・看護・介護・生活支援を包括する地域安心システムを開発すること。そして、地域安心システムを実現するための情報システム・ネットワークと居住環境支援システムの開発、ならびに実際に地域社会で運用してその有効性を実証すること。さいごに、試作したシステムを支え、さらに発展させるソーシャルビジネスを創生するための基盤作りです。

どのような地域を選び、どのような研究活動を行ったのですか?

高齢化率が高く、孤立した高齢者が急速に増加している多摩ニュータウンの諏訪・永山地域を選定しました。そこに研究拠点を開設し、具体的な研究・開発課題を持つプロジェクトメンバー(研究者)たちが、地域に密着した活動を展開していきました。また、多摩ニュータウンで実際に仕事や活動を行っている医師・建築士・福祉サービス関係者もメンバーとして参加し、プロジェクトの大きな部分を担ってもらいました。地域住民や行政との関係作りも進めてきました。

具体的な成果物は何だったのでしょうか?

「地域あんしんシステムモデル」をデザインし、多摩ニュータウンでの試行を経て、実践的なテスト段階まで進んだことです。専門の研究家、医療関係者、介護関係者、施設関係者、生活支援組織などが分野横断的に関わることで、「地域あんしんシステムモデル」の基盤となる「暮らし相談システム」「あんしん連絡ネットワーク」「在宅選定・転居支援システム」が開発されました。これらはすでに、最終的な実証実験に入っています。

「暮らし相談システム」とは、どのようなものでしょうか?

住民の悩みや問題に対して、方向性を示し、具体的な解決策を提示するためのICTシステムです。多摩ニュータウンの高齢者と、地域内の各組織のナビゲーターやインストラクターを利用者に想定したパイロットシステムを構築し、医療関係者や建築家、保育、金融関係の専門家などの協力を得て、医療、介護、健康、住まい、子育てなどのさまざまな相談に応じる実証実験を行いました。このパイロットシステムはどのような地域にも適用できるため、標準モデルシステムとなるでしょう。

「あんしん連絡ネットワーク」とは、どのようなものでしょうか?

高齢者を支える医療・介護・施設スタッフが、離れて住む家族等にその状況を伝えるシステムです。
 例えば、離れた場所で住んでいる親が病気になったとき、都会の子ども達がどう面倒をみるかといった問題がよくあります。診察に子どもが付き添い、医師・親・子が直接やりとりを行って情報を共有し合うことが望ましいのですが、現実には遠距離介護をせざるを得ない子どもには時間や場所の拘束があります。そのため、離れて暮らす子どもは地域医療に参加できず、関係の希薄さから地域で行われている医療、介護、福祉の体制を信頼できないため、親の病状が悪化した際には親を都会の施設へ呼び寄せてしまいます。その結果、それまで培われてきた親を取り巻く社会環境や人間関係を壊してしまい、さらに馴れない環境下で親の病状はますます悪化してしまうという悪循環をもたらします。
 そこで私たちの研究グループでは、高齢者の見守りを目的としたあんしん電話、ならびに高齢者家族と医師のコミュニケーションを支援するボイスメッセージシステムを開発しました。システムは電話を基本としていますが、電話のみでは限界があるため、インターネットも併用しています。