助成研究者情報(絹川弘一郎先生3)|安全安心な科学技術の振興:セコム科学技術振興財団

富山大学大学院医学薬学研究部(医学)内科学(第二)講座 教授 絹川弘一郎先生インタビュー「入退院を繰り返す心不全患者に対する重症化・再入院予防及びQOL改善支援」(第1回)


情報端末に普通のiPhoneを使用するとは、意外な気がします。

 Healthpatchは胸部貼り付け型パッチタイプのセンサーで、Bluetooth経由で専用アプリに生体データを収集するものです。アプリに収集されたデータは、指定した時間に通信回線を経由して、クラウドのデータセンターに送信されるようになっています。今回はできる限りリアルタイムにデータを収集でき、専門アプリをダウンロードしたうえで持ち歩きやすいということで、情報通信端末としてiPhoneを採用しました。
 結果として1カ月のデータ収集期間中、自宅・職場・外出先など日常的に過ごすさまざまな環境において、選定したセンサー3点すべてで被験者10名全員の継続的かつ正確なデータ取得に成功しました。

準備研究では何か課題点などは見つかりましたか。

 4つ見つかりました。第一に、データ通信端末のバッテリー持続時間の解消と、小型軽量化です。望ましいのは、利用者が持ち歩いても負担のない重さ(125g程度)で、リアルタイムにデータ通信を行いながらバッテリー持続が2日以上可能な端末です。電池がすぐに切れて充電ばかりしていては実用的とは言えません。
 第二に、高齢の患者にも分かりやすい操作性の追求です。今回の被験者のなかでも高齢の方にとってはアプリの操作が難しかったそうです。当面は当研究のコーディネータに、機器の使用説明からその後のフォローまでサポートをしてもらいます。

患者にとっての使いやすさも重要なのですね。それでは残り2つの課題点について、お教えください。

 第三に、各センサーのマイナートラブル・被験者の機器操作ミスへの対処です。機器・端末状態の遠隔モニタリングの仕組みを検討するとともに、対処方法をあらかじめマニュアル化し、相談窓口の設置も検討しています。
 第四に、Healthpatch装着によるかぶれです。使用者の一部にかゆみ、赤みが発生することがありました。事前パッチテストの実施による適切な被験者の選定とともに、同じ場所に貼り続けないなどの装着方法のきめ細やかな指導、季節ごとの肌ケア対策を検討し、対応方法をマニュアル化します。
 また、現在本格研究を進めるなかで、取得すべき生態情報を絞り込んでおり、その結果次第で、リストバンド型など他の低侵襲なワイヤレスセンサーを併用したデータ取得も検討します。

本格研究では、どのようなことを行っているのですか。

 本格研究では、慢性心不全患者に対する生体データおよび環境データを収集します。準備研究で実施した健常者に対するデータ収集の実証実験結果をもとに、本格的な情報システム基盤を構築します。今度は約50名の慢性心不全患者を対象にした実験を予定していますので、被験者からデータを継続的に収集する仕組みやシステムの構築、それらを医療関係者に診察してもらえるビューアの開発、その利用方法を確立していきます。

 

ありがとうございました。慢性心不全に対する新しい角度からの研究によって、より患者に寄り添った治療の実現が期待できそうですね。
 次回は、慢性心不全患者に対する本格研究の進捗状況についてお伺いしたいと思います。