助成研究者情報(濱田政則先生3)|安全安心な科学技術の振興:セコム科学技術振興財団

早稲田大学理工学部社会環境工学科教授 濱田政則先生インタビュー「東京湾臨海コンビナートの危険性と地震防災対策」


護岸が崩れるとはどういうことですか。

 日本ではじめて埋立地の液状化の危険性が指摘されたのは1964年の新潟地震からです。東京湾ではそれ以前に作られた埋立地が多く現存し、何ら対策がほどこされていないのが実状です。図5をご覧下さい。この図では、鋼矢板を設置し、背後にアンカーを打ち護岸の安定をはかっているのですが、大型地震を想定した場合、鋼矢板の先端部分の土層までもが液状化を起こすと予想されるのです。鋼矢板の護岸が不安定になり倒壊する可能性があります。
 

液状化しない土層まで鋼矢板の先端が達していないわけですね。

 このような埋立地の近くには、多くの危険物タンク、高圧タンクがあります。護岸と埋立地が数m単位で、海方向に移動しますから、上に載っているタンクが破壊され、内容物が漏出してしまいます。さらに防油堤や護岸が液状化や地震動によって破壊されれば、原油や重油が海上へ流出するのを避けられないと思います。私の予測では東京湾にある600基あまりのタンクのうち、64基から原油・重油が溢出する結果となりました。
 こうなると、東京湾の複数地点で火災が同時発生し、延焼範囲が広がれば、現在の海上消防能力では鎮火はほとんど不可能になります。重油・原油、高圧ガスなどが燃え尽きるまで長期間、火災が続くことになります。

海上に重油などが流れ出した場合、他の部分にも被害が予想されますが…

 船舶の通行への影響がもっとも懸念されるところです。東京湾内には平均的に約200隻の中・大型船舶が航行しています。東京湾北部地震を想定した場合、風や潮流を考慮にいれたシミュレーションでは、原油の拡散範囲が航路全体におよび、これらの海上交通が2カ月間ほど完全にストップする事態も予想されています。日本の産業の中心部である東京湾の物流能力が麻痺すれば、我が国の経済に与える被害は計り知れません。

ほかにはどんな被害が想定されますか

 一番心配しているのは、電力です。東京湾沿岸部では現在12カ所の火力発電所が稼働しています。東日本大震災による原発事故を受け、これらが首都圏への電力供給の要となっている今、東京湾への船舶の通行が制限されれば、燃料の供給ができなくなります。
 原子力についで火力による発電が行われなくなれば、首都圏のエネルギー需要はどうまかなえばよいのでしょうか。危機的な状況に陥ることは明白です。

今回の研究を踏まえて、これからどのような方向性で研究を進めていくご予定ですか

 本年度から本格研究にはいっています。東京湾の危険性について警鐘を鳴らすだけでは不十分です。どのような箇所に、どのぐらいの予算をかけて、どのような方法で対策すれば被害を軽減できるのか、というところまで明らかにし、かつ、対策の実践の方向性まで示せればよいと考えています。

ありがとうございました