助成研究者情報(濱田政則先生2)|安全安心な科学技術の振興:セコム科学技術振興財団

早稲田大学理工学部社会環境工学科教授 濱田政則先生インタビュー「東京湾臨海コンビナートの危険性と地震防災対策」


東京湾での主な被害状況は?

 液状化現象が問題となった京葉地区では、石油会社の17基もの球形タンクが爆発炎上しました。また京浜地区では浮き屋根式のタンクが地震の長周期振動による影響を受け、スロッシング(液体を入れた容器が振動すると、液体の表面が大きくうねり溢れてしまう現象)が発生、タンクの屋根が壊れたり油が流出しました。
 このように、地震には液状化現象と長周期振動によるコンビナートの破壊という大問題があること、そしてかなり地震の震源地から離れた関東でさえ、これらの被害が起こったという事実に衝撃を受け、東京湾に現存する臨海コンビナートは本当に大丈夫なのかという危機感がつのり、詳しいデータを集めようと思い立ったのです。

先行研究、類似研究はなかったのでしょうか。

 ありません。行政も研究者もこの危険性の実態を誰も把握していないということは、重大な問題です。この研究がその先駆けとなると期待しています。ところで、分野に関わらず、後世に残るような研究は、地道な基礎データの収集からはじまりますね。
 コンビナートのほとんどは民間企業です。ですから「おたくの石油タンクの安全性は大丈夫かどうか調査をさせてください」といっても、自分たちの会社の評判が落とされると勘違いし、これがデータを収集する際の第一の壁になります。

ではどのような方法でデータを収集されたのでしょうか。

 コンビナートがある埋め立て地などは、いまは民間企業が所有していますが、もともとは自治体が造成しています。そこで県庁や市役所などを訪れ、当時の地質調査のデータなどが残っていないかどうか、地道に足を運んで折衝しています。県や市の職員にも協力的な人がいて、データの収集が進むこともあります。
  また、タンクの位置や大きさなどは、航空写真、衛星写真など空からのデータを統合して割り出す作業に着手しています。(左写真)をよくご覧ください。地震後に砂が噴出しているのがわかります。

タンクの位置や大きさ、地質の状況、埋め立て地の護岸工事の強度、これらのデータがすべて揃わないと、正確な被害予測ができないということですね。

 そうですね。それぞれについてできるだけ詳細なデータを集めるよう努力しています。たとえば土質資料の収集においては、川崎市のボーリング資料が686本、千葉県が913本、東京都臨海部で約5000本ものデータを統合して、50mのメッシュデータができつつあります。ここまで来るのに、たいへんな労力を要しました。

50mのメッシュデータができるとは、驚きです。

 いろいろな苦労はありましたが、そのようにしてデータを集めたおかげで、埋立地の液状化に関しては、かなり正確な予測ができつつあると思います。じつはコンビナートが危険なのは、長周期振動だけではありません。建設されている埋立地そのものが危険なのです。なぜなら、埋立地で液状化が起こると、護岸が海方向に大きく移動し、これに起因して埋立地の地盤が大きく横に移動することがあります。これを専門用語で側方流動といっています。川崎市水江地区でシミュレーションを行ってみたのですが(右図)、これによると、護岸、地盤ともに数m単位で移動してしまうところがあるのです。これは阪神大震災による阪神地区の埋立地の液状化を上回る結果となっています。