助成研究者情報(深尾隆則先生5)|安全安心な科学技術の振興:セコム科学技術振興財団

神戸大学大学院 工学研究科 機械工学専攻 深尾隆則先生インタビュー「自律型飛行船ロボットを用いた自動情報収集・提示システムの構築」(第2回)

その手法の強みというのはどこにありますか。

 まず、動画を見ていただくと分かりますが、二組のステレオカメラは水平方向と垂直方向に配置されています。この組み合わせが絶妙でして、ステレオカメラから三次元再構成する際には、画像間で対応する点を自動で見つけなければならないのですが、見え方が大きく異なるにもかかわらず、非常にうまく対応する点を見つけることができます。
 さらに、画像上の2次元点に対応する3次元点の位置を求めて再構成した結果に、二眼ステレオカメラによる複数視点からの画像を利用することで、大幅に精度を向上することができます。

深尾先生の飛行船には、もう一つの撮影機材として3次元レーザスキャナが搭載されていますが、それはなぜですか。

 回転型ステレオカメラにより撮影した画像は、飛行船が地上に戻ってきてから、蓄積されたデータを取り出し、別のコンピュータに移して再構成していくのですが、普通のパソコンレベルの動作性能だと1秒間の映像に対し1時間程度、時間がかかってしまうという難点があるのです。「1時間ぐらい遅れてもいいじゃないか」と思われるかもしれませんが、災害救助の現場ではこれは致命的な遅れだと思うのです。

この欠点を少しでも補うため、ということですね。

 はい。研究当初の段階から3次元レーザスキャナを同時に搭載する必要があると考えておりました。3次元レーザスキャナによる画像は、ほぼリアルタイムで画像を再構成していくことが可能です。これで素早く情報を把握したあと、回転型ステレオカメラの映像でじっくりと、正確な情報を得ていく、という二段構えなら万全です。また、レーザスキャナ単体では色情報が識別できないため、真下に向けて固定したカメラも併用したシステムとなっています。

そのレーザスキャナ自体はどのような機能をもっていますか。

 Velodyne社のHDL-32Eという機種で重量は2kg、購入したときは350万円ほどしました。 ですが、以前のモデルはもっと高価で、重量も10kg以上もありました。飛行船に積み込めるのは他のカメラ機材や燃料などすべてを含めて15kgですから、軽量型の最新の機種がでたのが、本当にありがたかったです。
  普通のレーザスキャナは、1本のラインのみでスキャンを行うのに対して、HDL-32Eは32ラインを40度の角度で一挙に計測できる優れものです。これを横向けに設置することで、地表面をその角度の範囲内、撮影することができます。
  ただ、飛行船から距離的に近い計測だと映像は鮮明になりますが、遠くに離れるにつれ、各ライン間の距離が広がりますから、1回のスキャンだと図のように縞模様になってしまいます。1秒間に10回スキャンが可能なため、同じ場所を何度かスキャンすることができ、最終的には目視できる画像に再構成できます。

風などに多大に影響される上空から、レーザで計測した情報を3次元に再構成していくというのは、大変な作業に思えるのですが。

 アメリカでは、グーグルのロボットカーで有名なように、人間が車の運転席に座るだけ、もしくは無人で目的地まで到達させる研究が進んでいます。それらはレーザスキャナで取得した画像情報をもとに自動制御が行われています。
  車の場合なら上下方向の揺れをほとんど計算せずにできますが、飛行船は計測を行った瞬間のレーザの位置と姿勢のデータが必要になり、それをGPSとIMUを用いて行ったとしても、若干の誤差がでるため不可能です。そこでセンサによる回転や移動量推定ではなく、スキャンしたデータを用いてそれらを推定することにしました。複数枚の画像から撮影対象の3次元的な構造を求めるときの算出結果をもとに、各画像を撮影したときのレーザスキャナの位置と回転量を算出するというものです。