患者さんを守る合図看護師間の
コミュニケーションの
秘訣
2025.12.24
皆さんは、日常的に誰かに「身体の部位を借りる」ことはあるでしょうか?
少し驚かれるかもしれませんが、そういった内容ではありません。
看護師は、よく仕事中に「目」や「手」や「耳」を、同僚に借りることがあります。
例えば「目を貸してください」は、薬を投与する前に行うダブルチェックの依頼です。医療現場では、患者さんに薬を投与する際、必ず2人で確認することが安全のために決められています。しかし、病棟ではスタッフ全員が忙しく、すぐに確認を頼めないこともあります。そんな時に「目を貸してください」という言葉には、「手間は取らせませんので、確認だけお願いします」という意味が込められています。
薬や食事を安全に提供するため、看護師は『与薬原則の6R』を必ず確認し、アレルギーなども含めてチェックします。入院中に患者さんの手元に届く治療に関する物は、このように厳しく管理されているので、安心してください。
『与薬原則の6R』とは?
- 正しい患者〔 Right patient 〕
同姓同名、似たような名前の患者と間違えないように確認します。 - 正しい薬物〔 Right drug 〕
似たような名称、似たような剤形に注意します。同じ名称でも濃度のちがう薬物があります。 - 正しい目的〔 Right purpose 〕
何を目的にして、薬の指示が出されているかを理解します。 - 正しい容量〔 Right dose 〕
指示された薬物の単位を確認します。同じ薬剤でも1錠、1アンプル、1バイアル当たりの薬物量が違うものもあります。 - 正しい方法〔 Right route 〕
与薬方法により薬効が異なります。 - 正しい時間〔 Right time 〕
指示どおりの日時・曜日かどうかを確認します。
次に「手を貸してください」は、体位交換の時に使います。体位交換とは、ご自身で寝返りが打てない患者さんを看護師の手で体勢を変えることです。寝返りを打てずに同じ体勢のままでいると、褥瘡(=床ずれ)が発生してしまいます。褥瘡ができてしまうと、入院期間がさらに延びてしまいます。そのため、少なくとも2時間おきに看護師2名程度で患者さんの体勢を変える必要があります。この時に「手を貸してもらう」のです。体位交換は、複数人で行っても腰を痛めてしまうこともあるので、どの看護師も「ボディメカニクス」を用います。これは、学生の時から教わり、ずっと活用する身体の使い方です。足幅を前後左右に開き、重心を低くします。こうすることで安定性を確保しつつ、自分の身体も守ることができるのです。
また、体位交換の時間は、患者さんのわずかな変化に気づくための大切な機会でもあります。患者さんの表情や動き、呼吸の様子などから、健康状態や気持ちの変化を感じ取ることができる時間です。このように、体位交換で手を借りた際に、複数の看護師が関わることで気付けることもたくさんあります。
最後に「耳を貸してください」ですが…これはもう想像がついたでしょうか?
相手が明らかに忙しそう、でも伝えなきゃいけない事項がある…という時に「耳だけ貸してください」と声をかけたりすることがあります。これは手は止めなくていいので、聞くだけ聞いてほしいといった場合です。情報を受け取った看護師がどう動くかを判断する必要があるため、経験の浅い後輩にはあまり使いません。主に、判断力のある先輩に対して使うことが多いです。
他にも、病院や地域ごとに特有の略語や声をかける言い回し等があると思います。
このように、看護師は日々「目」「手」「耳」を貸し合いながら、患者さんの安全と安心を守っています。
そんな看護師だからこそ、皆さんの健康に関するちょっとした不安や疑問にも、丁寧に耳を傾け、寄り添うことができたら幸いです。
24時間365日対応の健康相談サービスでは、看護師があなたの声に寄り添い、日常の体調や健康管理に関するご相談に対応しています。
「ちょっと気になる」ことがあれば、どうぞ気軽にご相談ください。

