第2 【事業の状況】

1 【業績等の概要】

(1) 業績

当連結会計年度における日本経済は、原油価格高騰などの懸念材料はあったものの、海外経済の拡大から輸出が好調を続けたほか、企業収益の改善を背景に民間設備投資が増加し、個人消費も底堅さを増すなど、景気回復基調が徐々に鮮明となりました。

一方、近年の治安の悪化、個人情報の保護に関する法律の完全施行などを背景に、安全・安心に対する社会的ニーズはますます多様化・高度化しています。このような状況の中、当社グループは「社会システム産業」の本格展開に向けて、新サービス・商品の提供や事業所の新設・再配置を行うなど中核となるセキュリティサービス事業を拡充させる一方、メディカルサービス事業、保険事業、地理情報サービス事業、情報通信・その他の事業を積極的に展開し、顧客のニーズにより一層合致した高付加価値サービス・商品を提供することに努めました。

セキュリティサービス事業には、事業所向けおよび家庭向けのセントラライズドシステム(オンライン・セキュリティシステム)、常駐警備、現金護送のほか、安全商品の販売などがあります。事業所向けでは、画像認識技術を活用した画像センサーをご契約先に配置し、異常発生時に遠隔画像監視を行う「セコムAX」、幅広いセキュリティニーズへの対応が可能な汎用性の高い「セコムDX」、24時間営業店舗向けの遠隔画像監視システム「セコムIX」など、お客様のセキュリティニーズに合わせてご提案を行い、オンライン・セキュリティシステムの契約件数が順調に増加しました。また、出入管理システムや監視カメラなどの安全商品が、防犯や情報資産管理に対する意識の高まりを背景に、引き続き堅調に推移しました。そのほか、万引き防止システム国内シェアトップの企業との提携により、店舗での万引き防止対策として有効な「不正持出し監視システム」を発売し、また、施設に出入りする個人の出入管理や扉の遠隔制御に加え、防犯管理機能を付け加えることも可能な統合型入退室管理システム「セサモTRU」の販売を開始しました。これらの新商品導入の背景には、オフィスや商業施設などで、人々が出入りする昼間のセキュリティの重要性が広く認識されるようになったことがあります。

一方、家庭向けでは、オンライン・セキュリティシステム「セコム・ホームセキュリティ」の契約増加に努めたほか、家庭総合保険や、「屋外画像監視サービス」、「セコムあんしんガラス」、「ホームカメラシステム」、「セキュリフェースインターホン」などを積極的に提案しました。また、東京・神奈川・大阪・兵庫の住宅密集地域の「セコム・ホームセキュリティ」ご契約先に対し、有料の生活支援サービス「セコム・ホームサービス」を開始しました。ご家庭の日常のさまざまな困りごとに迅速に対応する「あんしんサポート」、「家事サポート」、「トラブルサポート」を行うこのサービスが加わることで、ご家庭により高品質・高付加価値のサービスを包括的に提供することが可能となりました。

なお、当連結会計年度は、より高品質なセキュリティサービスを提供するため、組織配置を一部変更しました。契約件数が増大している都市部を中心に、事業所の新設および再配置を行い、迅速できめ細かな顧客対応を可能にしました。また、大規模ビルディングなどの大型案件を手がける「システム設計センター」を全国に増配置し、営業力ならびに提案力の強化を図りました。

メディカルサービス事業には、在宅医療サービス、遠隔画像診断支援サービス、電子カルテ、医療機器等の販売、有料老人ホームの経営、介護サービス、医療機関向け不動産賃貸などがあります。当連結会計年度は、訪問看護サービスや薬剤提供サービスを中心とした在宅医療サービスの拡充に注力しました。また、一人ひとりにきめ細かい対応を行う会員制健康管理サービス「セコム健康くらぶKENKO」を開始し、最新鋭の医療設備を備えた提携先クリニック(東京都千代田区)で、質の高い医療サービスを提供しています。

保険事業では、セコムの緊急対処員が“現場急行サービス”を行う自動車総合保険「NEWセコム安心マイカー保険」をはじめ、事業所向けの「火災保険セキュリティ割引」、家庭総合保険「セコム安心マイホーム保険」、最適な治療でガン克服を目指した「自由診療保険メディコム」など、主にセキュリティサービスとの相乗効果が発揮できるセコムならではの保険の販売に努めました。

地理情報サービス事業(従来「情報・通信・その他の事業」に区分していた事業を当連結会計年度より「地理情報サービス事業」と「情報通信・その他の事業」に区分しております)では、自治体・民間の個別のニーズに合わせた地理情報システム(GIS)技術を活用したサービスの提供をはじめ、測量・計測、建設コンサルタント事業などを行っています。当連結会計年度は、地方公共団体向けの統合型GIS製品「PasCAL」や、民間企業向けに地域営業活動の情報化を支援する「MarketPlannerシリーズ」等の販売を行ったほか、大地震発生時の従業員の帰宅や企業の危機管理対策を支援する「帰宅支援マップサービス」の提供を開始しました。また、アジアを中心とした海外拠点の拡大にも注力しました。

情報通信・その他の事業には、情報サービス、不動産開発・販売、不動産賃貸などがあります。情報サービス分野では、サイバーセキュリティサービスの提供やネットワークシステムの運用などに重点的に取り組んだほか、これまでの「セコム安否確認サービス」に加え、企業などの組織における大規模災害発生時の初動対応を支援する「セコム初動支援サービス」を新たに開始しました。不動産開発・販売分野では、セキュリティを重視した分譲マンション「グローリオ」シリーズの開発・販売に努めました。

当社グループは、海外でもセキュリティサービスをはじめとする各事業を展開しております。当連結会計年度は、中国の深市に中国5番目のセキュリティ会社を設立し、経済発展著しいこの地域におけるセキュリティサービス事業の展開を積極的に推進しました。

 

これらの結果、当連結会計年度における連結売上高は5,673億円(前期比3.7%増加)、年金資産の運用が期待収益を大幅に上回った(営業費用の減少)影響もあり、連結営業利益は941億円(前期比13.3%増加)、連結経常利益は966億円(前期比15.8%増加)、特別利益に関係会社株式売却益72億円を含む93億円を、特別損失に貸倒引当金繰入額32億円、電話加入権評価損27億円、役員退職慰労引当金繰入額11億円を含む111億円を計上し、連結当期純利益は529億円(前期比9.2%増加)となりました。

 

これを事業の種類別にみますと、セキュリティサービス事業は、セントラライズドシステムを中心に順調に推移しており、売上高は3,934億円(前期比4.2%増加)となり、営業利益は1,020億円(前期比7.6%増加)となりました。

メディカルサービス事業は、在宅医療サービスが順調に推移しており、また新規連結子会社の寄与もあり、売上高は290億円(前期比14.3%増加)となり、営業利益は11億円(前期比64.5%増加)となりました。

保険事業は、セコム損害保険株式会社単独では前期比12億円の増収(4.9%増加)となりましたが、前期に当社ほか8社で積立保険満期返戻金による収入6億円があったことや内部取引消去などで、当連結会計年度の保険事業の売上高は292億円(前期比 2.5%減少)となっております。営業損益はセコム損害保険株式会社が不動産関連投融資からより安全な運用に切り替えたことによる利息および配当金収入の減少や異常危険・自然災害責任準備繰入を12億円計上したことなどにより、31億円の営業損失(前期は25億円の営業損失)となりました。なお、保険事業はその性格上、経常利益が重要な指標になりますが、保険事業の主たる会社であるセコム損害保険株式会社の経常利益は10億円(前期は5億円の経常損失)となっております。

地理情報サービス事業の売上高は352億円(前期比1.0%増加)となり、営業利益は16億円(前期比31.3%増加)となりました。

情報通信・その他の事業の売上高は802億円(前期比1.2%増加)となり、営業利益は不動産開発・販売事業が大幅に増益したこと、ホテル事業の営業損益が好転したことなどにより、61億円(前期比125.7%増加)となりました。

なお、当連結会計年度より従来「情報・通信・その他の事業」の区分に属しておりました「地理情報サービス事業」について独立区分して表示し、残余の「情報・通信・その他の事業」については「情報通信・その他の事業」に名称を変更しております。前期比較にあたっては、前連結会計年度分を変更後の区分に組み替えて行っております。

 

所在地別にみますと、国内においては、売上高は5,535億円(前期比3.6%増加)、営業利益は1,058億円(前期比10.5%増加)となり、その他の地域においては、売上高が137億円(前期比8.7%増加)となり、営業利益は9億円(前期比210.6%増加)となりました。

 

(2) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物の状況は、以下のとおりであります。

 

 

前連結会計年度

(百万円)

当連結会計年度

(百万円)

増減

(百万円)

営業活動によるキャッシュ・フロー

90,108

41,607

△  48,501

投資活動によるキャッシュ・フロー

△  41,221

△   113

41,107

財務活動によるキャッシュ・フロー

△  43,162

△  6,168

36,993

現金及び現金同等物に係る換算差額

25

470

444

現金及び現金同等物の増減額

5,750

35,795

30,044

現金及び現金同等物の期首残高

187,199

192,950

5,750

現金及び現金同等物の期末残高

192,950

228,745

35,795

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益948億円(前期比11.9%増)、減価償却費374億円(前期比3.0%増)などの増加要因から、たな卸資産の増加240億円(前期は47億円の減少)、保険契約準備金の減少326億円(前期は12億円の増加)、法人税等の支払額285億円(前期比7.6%減)などの減少要因を差し引いた結果、営業活動から得られた資金は416億円(前期比53.8%減)となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、警報機器および設備購入等の有形固定資産の取得が486億円(前期比0.2%増)、投資有価証券の取得が690億円(前期比29.2%減)、貸付による支出が153億円(前期比18.6%増)となったため、投資有価証券の売却による収入が998億円(前期比50.1%増)、貸付金の回収による収入が279億円(前期比45.4%減)となりましたが、投資活動の結果使用した資金は1億円(前期比99.7%減)となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入による収入74億円(前期比62億円増)がありましたが、長期借入金の返済による支出73億円(前期比76.6%減)、配当金の支払112億円(前期比11.1%増)などにより、財務活動の結果使用した資金は61億円(前期比85.7%減)となりました。

 

これらの結果、現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末に比べ357億円増加して2,287億円となりました。

 

2 【生産、受注及び販売の状況】

(1) 受注状況

当連結会計年度の受注状況を事業の種類別セグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

事業区分

受注高(百万円)

前期比(%)

受注残高(百万円)

前期比(%)

セキュリティサービス事業

8,852

113.9

3,151

120.3

地理情報サービス事業

36,467

4.6

6,436

22.8

情報通信・その他の事業

4,566

△  37.1

1,064

△  30.7

合計

49,886

7.8

10,652

29.8

(注) 1 セグメント間の取引については相殺消去しております。

2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

3 当連結会計年度より、従来「情報・通信・その他の事業」の区分に属しておりました「地理情報サービス事業」を独立区分して表示し、残余の「情報・通信・その他の事業」については「情報通信・その他の事業」に名称を変更しております。なお、前期比較にあたっては、前連結会計年度分を変更後の区分に組み替えて行っております。

 

(2) 販売実績

当連結会計年度の販売実績を事業の種類別セグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

事業区分

当連結会計年度

自 平成17年4月1日

至 平成18年3月31日

(百万円)

前期比(%)

セキュリティサービス事業

393,479

4.2

メディカルサービス事業

29,048

14.3

保険事業

29,260

△  2.5

地理情報サービス事業

35,271

1.0

情報通信・その他の事業

80,255

1.2

合計

567,315

3.7

(注) 1 セグメント間の取引については相殺消去しております。

2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

3 当連結会計年度より、従来「情報・通信・その他の事業」の区分に属しておりました「地理情報サービス事業」を独立区分して表示し、残余の「情報・通信・その他の事業」については「情報通信・その他の事業」に名称を変更しております。なお、前期比較にあたっては、前連結会計年度分を変更後の区分に組み替えて行っております。

 

3 【対処すべき課題】

日々変貌していく社会において、人々の価値観の変化により、セキュリティをはじめ医療、保険、地理情報サービス、サイバーセキュリティといった安全・安心に対する社会的需要が一層多様化・高度化しております。

このような状況のもと、セコムグループはセキュリティサービスなど人々の安全・安心につながるさまざまなサービスを提供することで、より安心で便利で快適な社会を実現する「社会システム産業」の構築を目指しております。その具体的な取り組みとして、セコムグループはお客様のニーズに対応したきめ細かいサービスと、お客様の信頼を得られる高品質なシステムを提供することを目指します。また、グループ各事業のさらなる融合化を進め、グループの総合力を活かした包括的なサービスの提供に努めます。さらに、今後本格的な成長を迎える事業についても、不断の業務改善により徹底した経営の効率化を追求します。

これらの取り組みを通じて、セコムグループは「困った時にはセコムに頼めばよい」と言われる企業体になること、そして「あらゆる不安のない社会」を実現することを目指してまいります。

 

4 【事業等のリスク】

当社グル−プ(当社および連結子会社)の事業等に関するリスクについて、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を以下に記載しております。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項についても、投資家の投資判断上、重要であると考えられる事項については、積極的な情報開示という観点から以下に開示しております。当社はこれらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避および発生した場合の早期対応に努める所存であります。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

@信用リスク

当社グル−プは、営業活動や投融資活動などにおいて、主に国内の取引先に対し発生するさまざまな信用リスクにさらされています。当社グル−プは、その状況を定期的に見直し、必要な引当金等の検討ならびに計上を行っておりますが、今後、取引先の財政状態が悪化した場合は、貸倒引当金の積み増しをせざるを得なくなる可能性があり、当社グル−プの業績および財務状況に悪影響を及ぼすおそれがあります。

また、警備契約やリース契約などにおいて、当社グル−プとの契約期間中に契約先が不測の事態に陥った場合、当社の初期投資等が損失になる可能性があります。しかしながら、特定の大口契約を有していないため、リスクは分散されております。

 

A株価変動のリスク

当社グル−プは、株価変動リスクを受けやすいさまざまな有価証券を有しております。したがいまして、株価が下落した場合、保有する有価証券に評価損が発生し、当社グル−プの業績および財務状況に悪影響を及ぼすおそれがあります。

当社グル−プは、投資効率が低く保有意義の乏しい投資にならないよう審査の上、総合的な経営判断のもと、投資を決定しております。

 

B不動産価値変動のリスク

当社グル−プは、不動産開発・販売および不動産賃貸事業等において、さまざまな不動産を有しております。不動産の価値は、マクロ経済などさまざまな要因により変動するリスクを有しており、当該価値の変動により当社グル−プの業績および財務状況に悪影響を及ぼすおそれがあります。

当社グル−プは、そのさまざまな要因やその資産の活用状況、タイミングなどを総合的に勘案し、取得・保有・売却などの意思決定を行っております。

 

C金利変動のリスク

当社グル−プは、資金を社債の発行および金融機関からの借入により調達しており、金利変動リスクにさらされています。したがいまして、金利変動により当社グル−プの業績および財務状況に悪影響を及ぼすおそれがあります。

当社グループは、金利変動に伴うキャッシュ・フローの変動を管理するために主に金利スワップ契約を利用しています。変動金利支払分を受け取り、固定金利を支払う受取変動・支払固定の金利スワップ契約により、キャッシュ・フローを固定しております。

 

D年金債務

当社グル−プの年金資産の時価が下落し、年金資産の運用利回りが期待運用収益率を下回った場合や、予定給付債務を計算する基礎となる保険数理上の前提・仮定に変更があった場合には、数理計算上の差異が発生します。数理計算上の差異は、当社グループの会計方針に従い、発生年度に全額損益処理されることから、当社グル−プの業績および財務状況に悪影響を及ぼすおそれがあります。

しかしながら、厚生年金基金の代行部分を国に返上したことや、退職給付制度を確定拠出年金制度およびキャッシュバランス制度(在籍期間中の年収に応じて毎年累積した額に10年国債応募者利回り3年平均の利息を付与する制度)に移行したことにより、将来の数理計算上の差異発生リスクを低減しております。

 

Eメディカルサービス事業におけるリスク

当社グループは、メディカルサービス事業において在宅医療サービス、遠隔画像診断サービス、医療機器・器材の販売および医療機関向け不動産の賃貸を実施しております。また、当事業に関連し、医療機関に対し貸付および債務保証等を実施しております。診療報酬の引き下げなど医療制度の改定等による激しい事業環境変化が発生した場合には、当社グループのメディカルサービス事業および取引先である医療機関の業績が悪化し、その結果、当社グループの業績および財務状況に悪影響を及ぼすおそれがあります。

しかしながら、これらの事業運営においては、事業環境変化への柔軟かつ迅速な対応、医療機関の経営状況の継続的な監視および経営改善支援等を行うことにより適正なリスクコントロールに努めております。

 

F保険事業における流動性リスクおよび自然災害・大規模災害リスク

当社グル−プは、保険事業において積立保険を含む損害保険を販売しております。積立保険の契約期間は主に5年であり、満期および解約時に返戻金を支払う必要があります。市場の混乱等により資金回収が遅延した場合や、予期せぬ多額の保険金支払および大量解約等により資金流出が発生した場合には、流動性が損なわれ、予定外の運用資金の回収を行う必要があり、当社グル−プの業績および財務状況に悪影響を及ぼすおそれがあります。

資金運用にあたっては、さまざまなリスクを考慮し、償還期限に合わせた運用を行っており、流動性の確保に努めております。

また、地震・風水害などの自然災害、火災その他の大事故により、保険事業における業績および財務状況に悪影響を及ぼすおそれがあります。

当社グループは保険引受にあたっては、「契約引受規定」に基づき引受を行い、継続的な損害率の検証を行うなど、適正なリスクコントロールに努めており、また巨大災害・集積リスクについては再保険カバーにより対応しています。

 

G競争激化のリスク

当社グループの各事業分野への新規参入企業の増加により、価格の低下、あるいはマーケットシェアが低減する可能性があります。また、既存企業による低価格戦略の採用、顧客からの値下げ圧力等により当社グル−プの提供するサービス・商品が価格競争に巻き込まれる可能性があり、競争の激化に伴い、当社グル−プの業績および財務状況に悪影響を及ぼすおそれがあります。

ただし、当社グル−プの主要事業であるセキュリティサービス事業への新規参入は、設備投資等の初期投下資本額が膨大な額となることやノウハウの取得が困難であることなどから、容易ではないものと考えております。また、価格競争による収益性の低下に対しては、よりきめ細かいサービスの提供により価格下落を防ぐとともに、充分なコスト管理により収益の確保に努めます。

 

H法規制の変更

安全・安心というサービスを主に提供している当社グル−プの事業は、その性質上、厳格かつ詳細な法令や規制に従うことを要求されています。このような法令や規制に変更が生じた場合には、すみやかに対応する必要があり、大きな負担が発生する可能性があることから、当社グル−プの業績および財務状況に悪影響を及ぼすおそれがあります。

法規制の変更に基づくリスクを回避するため、当社グループでは関係当局の今後の動向を注視し、適時適切に対応する所存であります。

 

I災害等の発生

大規模な地震や停電などが発生した場合、当社グル−プの構築したネットワーク等のインフラが機能停止し、セキュリティ等のサービス提供に支障をきたすおそれがあります。また、契約先に設置されている当社グル−プ資産の警報機器等が災害等により損傷し、修理・交換等の対応を余儀なくされる可能性があります。したがいまして、大規模な地震や停電などが発生した場合、当社グル−プの業績および財務状況に悪影響を及ぼすおそれがあります。

しかしながら災害時の対応については、当社グル−プのノウハウを盛り込んだ災害対応マニュアルを完備するなどの対策を講じております。

 

J顧客情報の管理

当社グル−プは、セキュリティサービス契約に関するものをはじめとし、膨大な顧客情報を取り扱っており、このような情報の機密保持が極めて重要な課題となっております。万一、不測の事態により顧客情報が外部に漏洩した場合には、信用失墜や損害賠償請求等が発生し、当社グル−プの業績および財務状況に悪影響を及ぼすおそれがあります。

当社グループはセキュリティサービスを中心に安全・安心を提供する企業体として、厳正な顧客情報管理体制を構築しています。外部からのネットワーク不正侵入への対策はもとより、内部からの情報漏洩防止のため、「情報セキュリティ方針」に基づいた厳格なシステム操作権限の設定、徹底した社員教育等を行うとともに、「個人情報取扱管理規定」をはじめ「個人情報に関する問い合わせ対応マニュアル」等を整備し、情報流出の防止に努めております。

 

5 【経営上の重要な契約等】

(1) セコムSCセンターの賃貸借契約

当社は平成8年4月23日に研究・情報の拠点として、日鉄鉱業株式会社と三鷹日新ビル(呼称:セコムSCセンター)および敷地等の賃貸借契約を締結いたしました。

(

賃貸借契約に関する内容)

@

賃貸借期間

平成8年5月1日より30年間

A

敷地面積

10,604u

B

建築延床面積

21,001u

C

月額賃料

57百万円

 

(2) セコム本社ビルの賃貸借契約

当社は平成12年12月8日に、有限会社原宿ビルの不動産信託受託者である住友信託銀行株式会社と、セコム本社ビルおよびその敷地等の賃貸借契約を締結いたしました。

(

賃貸借契約に関する内容)

@

賃貸借期間

平成12年12月8日より20年間

A

敷地面積

 2,031u

B

建築延床面積

20,542u

C

月額賃料

111百万円

 

6 【研究開発活動】

当社グループ(当社および連結子会社)は、安全を核とする社会システム産業を確立させるために、提出会社において研究部門と開発部門を組織し、必要な技術の研究、開発に積極的に取り組んでおります。なお、当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は総額3,825百万円であり、その大部分は提出会社におけるセキュリティサービス事業に係る研究開発費用および各事業部門に配分できない基礎研究費用であります。

 

研究部門(IS研究所)では、新サービスの創造・新機能の確立を狙った将来を見据えての先端技術の研究および商品のキーとなる基盤技術を研究しており、研究活動の構造を示すと次のとおりであります。

@先端技術分野

ブロードバンドネットワーク社会に対応した新たな「社会システム産業」を実現するための独創技術およびビジネスモデルを創出します。

イ ブロードバンドネットワーク通信を駆使したセキュリティシステムの研究等。

ロ バイオメトリクス(個体認識)応用技術、行動認識技術の研究等。

A基盤技術分野

イ 新しい原理によるセキュリティセンサー、既存セキュリティセンサーの性能向上手法の研究等。

ロ 大規模ビル用セキュリティシステム、ITシステムとセキュリティシステム、ビルオートメーションシステムとセキュリティシステムの統合技術の研究。

ハ テレケアおよびテレラジオロジー分野におけるサービスシステムのアーキテクチャ、医者・患者向けのユーザーインターフェイスの研究、障害者向けの福祉機器、スケジューラの研究等。

ニ ネットワークセキュリティ技術、公開鍵認証基盤を活用した新たな認証技術の研究等。

 

開発部門では、開発センターにおいて、より高品質なセキュリティ、安心感、利便性を提供するシステムや安全商品を社会動向、犯罪動向、通信インフラ等の動向を先取りし、当社独自のノウハウに先端技術・斬新的アイデアを盛り込み、信頼性の高い独創的な商品をいち早く商品化しております。

例えば、画像処理技術を活かした防犯用のセンサー、携帯電話インフラとGPS技術を活かしたシステム、様々な方式の非接触カードに対応したICカードリーダー及びセキュリティのインフラとなるIT技術を駆使したコントロールセンターとの通信技術など、社会システム産業を支えるシステム・機器・セキュリティインフラ等の開発を行っております。

 

SIセンターでは、主として大規模施設および最重要施設向けセキュリティシステムの開発を担当しております。

多様化する顧客ニーズに対応するため、個人認証システムの技術応用や多様なアクセス管理手法の開発はもとより、効果的な施設運営管理手法の開発やネットワークを用いた分散と集中の管理手法の開発などにも取り組んでおります。

@大規模セキュリティシステム

個人認証システムの技術応用、多様なアクセス管理手法の開発、ヒューマンインターフェースの開発、効率的な施設運営管理手法の開発、ネットワークを用いた分散と集中の管理手法の開発。

A品質管理手法

大規模システムの機能維持管理手法の開発、多物件の効率的保守管理システムの開発、シミュレータを用いた効率的な信頼性評価手法の開発。

 

また、国内子会社の潟pスコでは、GIS総合研究所が中心となって基本技術の開発を行い、プロジェクトチームを編成して応用技術の開発、新製品の開発および既存商品の機能強化等を行っております。

 

  提出会社における研究開発分野および研究開発体制は、下図のとおりであります。

 

 

 

7 【財政状態及び経営成績の分析】

(1) 当連結会計年度の経営成績の分析

 @概況

   当社グループ(当社および連結子会社)は、セキュリティサービスを中心にメディカルサービス、保険サービス、地理情報サービス、情報サービス、不動産開発・販売、不動産賃貸などの事業活動全般にわたってサービスの拡充、営業の拡大、システムの構築、商品の開発に努めるなど、積極的な事業展開を図ってまいりました。この結果、当連結会計年度の売上高は5,673億円(前期比3.7%増加)、年金資産の運用が期待収益を大幅に上回った(営業費用の減少)影響もあり、営業利益は941億円(前期比13.3%増加)、経常利益は966億円(前期比15.8%増加)、特別利益に関係会社株式売却益72億円を含む93億円を、特別損失に貸倒引当金繰入額32億円、電話加入権評価損27億円、役員退職慰労引当金繰入額11億円を含む111億円を計上し、当期純利益は529億円(前期比9.2%増加)となりました。

 

  A売上高

   セントラライズドシステムを中心とするセキュリティサービス事業、在宅医療サービスを中心とするメディカルサービス事業、地理情報サービス事業および情報通信・その他の事業が増収となったことにより、売上高は前期比3.7%増加して5,673億円となりました。各事業セグメントの外部顧客に対する売上高の連結売上高に占める割合は、セキュリティサービス事業が69.4%、メディカルサービス事業が5.1%、保険事業が5.2%、地理情報サービス事業が6.2%、情報通信・その他の事業が14.1%となりました。

   なお、当連結会計年度より従来「情報・通信・その他の事業」の区分に属しておりました「地理情報サービス事業」について独立区分して表示し、残余の「情報・通信・その他の事業」については「情報通信・その他の事業」に名称を変更しております。前期比較にあたっては、前連結会計年度分を変更後の区分に組み替えて行っております。

 

  B売上原価、販売費及び一般管理費

   当連結会計年度は、年金資産の運用が期待収益を大幅に上回った影響もあり、売上原価は前期比2.8%増加の3,510億円となりましたが、売上高に占める割合は前期の62.4%から61.9%に低下しており、また、販売費及び一般管理費は前期比0.4%減少して1,221億円となり、売上高に占める割合も前期の22.4%から21.5%に低下しました。

この結果、当連結会計年度の営業利益は941億円(前期比13.3%増加)となりました。

 

  C経常利益および当期純利益

   当連結会計年度は、投資有価証券売却益および持分法による投資利益の増加により、営業外収益が前期比38億円(32.2%)増加したことにより、営業外費用が投資有価証券評価損の増加により前期比17億円(15.0%)増加しましたが、経常利益は966億円(前期比15.8%増加)となりました。

   また、特別利益に関係会社株式売却益72億円を含む93億円を、特別損失に貸倒引当金繰入額32億円、電話加入権評価損27億円、役員退職慰労引当金繰入額11億円を含む111億円を計上したことにより、税金等調整前当期純利益は948億円(前期比11.9%増加)となりました。

   法人税、住民税及び事業税ならびに法人税等調整額の合計は380億円(前期比15.7%増加)となり、税金等調整前当期純利益に対する負担率は前期の38.8%から40.1%に上昇しました。

   この結果、当連結会計年度の当期純利益は529億円(前期比9.2%増加)となり、売上高当期純利益率は前期の8.9%から9.3%に上昇しました。また、1株当たり当期純利益は前期の214.41円から234.28円となりました。

 

  Dセグメント別経営成績

   セキュリティサービス事業は、セントラライズドシステムを中心に順調に推移しており、売上高は4,017億円(前期比4.5%増加)、営業利益は1,020億円(前期比7.6%増加)となり、売上高営業利益率は前期の24.7%から25.4%に上昇しました。

   メディカルサービス事業は、在宅医療サービスが順調に推移しており、また新規連結子会社の寄与もあり、売上高は292億円(前期比14.2%増加)、営業利益は11億円(前期比64.5%増加)となり、売上高営業利益率は前期の2.7%から3.9%に上昇しました。

   保険事業の売上高は、317億円(前期比4.2%減少)となりました。営業損益はセコム損害保険株式会社が不動産関連投融資からより安全な運用に切り替えたことによる利息および配当金収入の減少や異常危険・自然災害責任準備金繰入を12億円計上したことなどにより、31億円の営業損失(前期は25億円の営業損失)となりました。

   地理情報サービス事業の売上高は、353億円(前期比0.6%増加)、営業利益は16億円(前期比31.3%増加)となり、売上高営業利益率は前期の3.7%から4.8%に上昇しました。

   情報サービス、不動産開発・販売、不動産賃貸やその他のサービスを含む情報通信・その他の事業の売上高は866億円(前期比3.0%増加)、営業利益は不動産開発・販売事業が大幅な増益となったこと、ホテル事業の営業損益が好転したことなどにより、61億円(前期比125.7%増加)となり、売上高営業利益率は前期の3.2%から7.1%に上昇しました。

   なお、以上のセグメント売上高および営業利益はセグメント間取引を含む数値であり、第2[事業の状況]1[業績等の概要]に記載した売上高(セグメント間取引を含まない外部顧客に対する売上高)とは一致しません。

 

(2) 当連結会計年度の財政状態の分析

 @資産

   当連結会計年度末の総資産は、前期末比518億円(4.7%)増加の11,493億円となりました。

   流動資産は、短期貸付金が308億円(66.4%)減少の155億円となりましたが、現金及び預金が250億円(10.2%)増加の2,717億円、コールローンが150億円(150.0%)増加の250億円、マンション販売用の仕入などにより販売用不動産が250億円(89.8%)増加の529億円となったため、合計は前期末比436億円(8.6%)増加の5,519億円となりました。

   固定資産は、投資有価証券が119億円(4.9%)減少の2,310億円、繰延税金が72億円(39.2%)減少の112億円となりましたが、有形固定資産が104億円(4.7%)増加の2,340億円、長期貸付金が145億円(33.9%)増加の575億円、前払年金費用が96億円増加の111億円となったことなどにより、合計は前期末比81億円(1.4%)増加の5,973億円となりました。

   なお、当社グループでは、金融機関が設置している自動現金受払機の現金補填業務ならびに現金回収管理業務を行っており、そのための現金及び預金残高651億円(前期末比43億円増加)が現金及び預金残高に含まれており、当社グループによる使用が制限されております。また当該業務に関連した資金調達額260億円(前期末比4億円増加)が短期借入金残高に含まれております。

 

 A負債

   当連結会計年度末の負債は、前期末比57億円(0.9%)減少の6,177億円となりました。

   流動負債は、社債が一年内償還予定額を固定負債から振り替えたことにより315億円増加の322億円、未払金が73億円(38.9%)増加の263億円となったことなどにより、合計は前期末比572億円(23.2%)増加の3,034億円となりました。この結果、流動比率は前期末の2.1倍から当期末は1.8倍になりました。

   固定負債は、社債の一年内償還予定額322億円を流動負債に振り替えたほか、満期返戻金等の支払いに備えた積み立てを含む保険契約準備金が326億円(11.7%)減少の2,456億円となったため、前期末比629億円(16.7%)減少の3,143億円となりました。

 

 B資本

   当連結会計年度末の資本は、利益剰余金が前期末比415億円(12.0%)増加の3,880億円、その他有価証券評価差額金が保有する上場株式の株価上昇により50億円(62.0%)増加の132億円、為替換算調整勘定が円安の影響により前期末の△171億円から△98億円となったため、合計は前期末比542億円(12.3%)増加の4,961億円となりました。

 

   これらの結果、当連結会計年度末の自己資本比率は、前期末の40.3%から43.2%となり、期末発行済株式総数に基づく1株当たり純資産は、前期末の1,962.74円から2,204.06円となっております。

 

(3) 当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析

 当社グループ(当社および連結子会社)は、柔軟な事業活動を行い、強固な財務基盤を保つために、高い流動性を維持することを基本方針としております。また、営業活動から得た資金で積極的に事業投資活動を行っております。

 

 当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益948億円、減価償却費374億円、仕入債務の増加99億円などの増加要因から、販売用不動産等のたな卸資産の増加240億円、保険契約準備金の減少326億円、法人税等の支払額285億円などの減少要因を差し引いた結果、営業活動から得た資金は416億円となりました。

 前期との比較では、前払年金費用が96億円増加したほか、販売用不動産等のたな卸資産が前期の47億円の減少に対し240億円の増加、保険契約準備金が前期の12億円の増加に対し326億円の減少となったことなどにより、営業活動から得た資金は前期比485億円(53.8%)減少となりました。

 

 投資活動によるキャッシュ・フローは、警報機器及び設備購入等により有形固定資産の取得による支出が486億円となりましたが、保険事業の運用資産の見直しなどにより、短期貸付金および長期貸付金が純額で157億円の回収、有価証券および投資有価証券が純額で317億円の減少となったことにより、投資活動の結果使用した資金は1億円となりました。

 前期との比較では、有形固定資産の売却による収入が310億円の減少、短期貸付金および長期貸付金の回収が純額で171億円減少した一方で、有価証券および投資有価証券の増減額が前期の575億円の増加に対し317億円の減少となったことなどから、投資活動の結果使用した資金は前期比411億円(99.7%)減少となりました。

この結果、当連結会計年度のフリーキャッシュ・フロー(営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローの純額)は、前期比73億円減少の414億円となりました。

 

 財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の借入74億円、短期借入金の増加43億円となりましたが、長期借入金の返済73億円、配当金の支払112億円などにより、財務活動の結果使用した資金は61億円となりました。

 前期との比較では、短期借入金および長期借入金の収支純額が449億円(111.1%)増加となったことにより、財務活動の結果使用した資金は前期比369億円(85.7%)減少となりました。

 

 これらの結果、現金及び現金同等物の期末残高は、前期比357億円(18.6%)増加の2,287億円となりました。

 

 当社グループのキャッシュ・フロー指標のトレンドは、以下のとおりであります。

 

 

第41期

平成14年3月期

第42期

平成15年3月期

第43期

平成16年3月期

第44期

平成17年3月期

第45期

平成18年3月期

自己資本比率(%)

36.6

33.9

36.9

40.3

43.2

時価ベースの

自己資本比率(%)

124.8

62.8

93.6

91.4

117.8

債務償還年数(年)

1.0

2.3

2.2

1.8

4.1

インタレスト・

カバレッジ・レシオ

122.5

31.7

35.2

39.7

24.2

 

    ※ 自己資本比率:自己資本/総資産

      時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

      債務償還年数:有利子負債/営業キャッシュ・フロー

      インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い

 

(注) 1 各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しております。

2 株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。

3 営業キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。

4 債務償還年数の増加及びインタレスト・カバレッジ・レシオの減少は、主として保険契約準備金が傷害保険の満期返戻等により減少したことや不動産開発・販売事業におけるたな卸資産が増加したことにより、営業活動によるキャッシュ・フローが前期901億円から当期416億円に減少した影響によるものです。