写真:にしん

かつては「ニシン御殿」ができるほど豊漁!

3~5月の春に産卵のため沿岸に現れ、「春告魚(はるつげうお)」とも呼ばれるにしん。卵は「数の子」、卵が海藻などに付着したものは「子持ち昆布」と呼ばれ、どちらも縁起物として祝い事やお正月に重宝される食材です。
北海道では江戸時代にニシン漁が始まり、明治から昭和初期にかけては大量に水揚げされ、小樽などの産地ではにしん加工施設と住居の役割を持つ「にしん御殿」が建ち並んだほど。しかし、戦後には漁獲量が激減し、一時は「幻の魚」とも言われました。近年は回復傾向にあり、鮮魚は国内産が出回るものの、数の子や身欠きにしんなどの加工品は、ほぼ輸入に頼っています。

欧米でもおなじみの魚

冷水域に生息するにしんは、日本だけでなくヨーロッパやロシア、アメリカなどでもおなじみの魚。大西洋を回遊するにしんは英語で「ヘリング」と呼ばれ、甘酢漬けにしてサラダやサンドイッチにするのが代表的な食べ方です。
オランダでは、一日塩漬けしたにしんを塩抜きしてそのまま刺身のようにして食べる「ハーリング」が、屋台も出るほど人気の料理。燻製にしんの「キッパー」はイギリスの伝統料理で、朝食の定番メニュー。スウェーデンの「シュールストレミング」は、発酵させたにしんの缶詰で、世界一臭い缶詰として有名です。

写真:にしん

身体に良い脂質がたっぷりの青魚

にしんは鰯(いわし)などと同じく青魚なので、不飽和脂肪酸のIPA(EPA)DHAが豊富に含まれています。IPAとDHAはどちらも血流を改善する血液サラサラ効果があるうえ、IPAは血中コレステロールを低下させると言われ、DHAは脳細胞を活性化させるはたらきが期待できます。
また、ビタミンB2、B6、B12、ナイアシンなどのビタミンB群が豊富。ビタミンB群は炭水化物・タンパク質・脂質の三大栄養素の代謝を促すはたらきがあります。骨の形成に欠かせないカルシウムの吸収を促進するビタミンD、目の健康を保ち、肌荒れを予防するビタミンAも豊富です。

鮮度の見分けは、目ではなく、エラに注目!

にしんを選ぶときは、身や腹がしっかりとして輝きがあり、ウロコがしっかりと付いているものを選ぶようにしましょう。にしんは漁獲時に目に内出血を起こしていることが多いので、他の魚のように目が鮮度を見分けるポイントにはなりませんが、エラに血がにじんでいるものは鮮度が落ちていることが多いので、気をつけます。また、にしんは脂質が多いために鮮度落ちが早いので、買ってきたその日のうちに調理するようにしましょう。
身欠きにしんは、生干しにして冷凍で売られているものと、完全に乾燥したものがありますが、どちらもやや臭みがあるので、米のとぎ汁に漬けて戻し、臭みを抜いてから調理します。

スペシャリストが直伝!美味食材アドバイス

写真:藤森明子さん


スペシャリストが直伝!
美味食材アドバイス

昭和初期まで、北海道では大量に水揚げされていたにしん。にしん粕や身欠きにしんなどに加工され、産地近くで消費されるだけでなく「北前船」で主に北陸・関西地方に運ばれていたため、西日本でも欠かせない食材となりました。今でも数の子は、関西のおせち料理には必須の食材。身欠きにしんの煮物を乗せた「にしんそば」や、夏の京野菜である賀茂ナスと炊き合わせた「賀茂ナスとにしんの煮物」は、京都の伝統料理です。

写真:藤森明子さん

藤森明子さん

食品メーカーに勤務後、料理教室の講師を経験。その後は栄養士として勤務。
1995年に管理栄養士を取得。
現在はマダムマーサ・クッキングスタジオや調理師専門学校の講師、食品メーカーの試食作り、食育イベント、保健指導などで活躍中。

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