写真:花梨

咳止めの薬用として古くから活用されてきた果実

香り高く、咳止めに効く果実として知られる花梨。4〜5月の春に直径3cmほどのピンク色のかわいらしい花を咲かせ、10〜12月に収穫期を迎えます。原産地の中国では2000年ほど前から薬用・観賞用として栽培されていたと言われ、日本にも平安時代にはすでに伝わっていたとされています。花と果実が楽しめるうえ、新緑と紅葉が美しいことから、江戸時代には家庭用樹木として広まりました。
果実はそのままでは非常に硬く、果肉にも渋みがあるので、果実酒やシロップ漬け、ジャムなどに加工されます。日本での生産は、長野県が3分の1を占める一大産地で、山形、香川でも栽培が盛んです。

「マルメロ」と「花梨」の違いは?

花梨によく似た果実に「マルメロ」があります。見た目が似ているだけでなく、熟すると高まる香り、果実酒などに加工する利用法、咳止めなどの薬効も同じで、マルメロであるのにも関わらず「花梨」として売られていることも。長野県の諏訪湖の湖畔には「カリン並木」がありますが、実際にはほとんどがマルメロの木です。
違いは、表面を触ってすべすべしていれば花梨、産毛で覆われているのがマルメロです。また、花梨が中国原産なのに対し、マルメロはヨーロッパの地中海沿岸や中央アジアが原産で、現在も南ヨーロッパやアメリカ東部で多く栽培されています。

写真:花梨

咳止め・のどの炎症に花梨の効果は?

広く知られている花梨の咳止めの効能は、「アミグタリン」という薬用成分によるものです。加水や加熱により分解すると「ベンズアルデヒド」となり、炎症を抑えるはたらきがあるので、風邪を引いたときの咳やのどの痛みを和らげます。
また、花梨にはクエン酸・リンゴ酸も多く含まれています。クエン酸・リンゴ酸には疲労物質の乳酸を分解するはたらきがあるので、疲労回復に効果があります。体内の余分な塩分を排出し、高血圧を予防するカリウム、肌にうるおいを与えるコラーゲンの合成に関わり、美肌効果が期待できるビタミンCも比較的豊富です。

香り高く、ツヤツヤしてきたら完熟のサイン

花梨を選ぶときは、全体がムラなく黄色に色づいたもの、穴や傷がないものを選ぶようにしましょう。すぐに使うならば、果皮にツヤがあり、良い香りがするものを選びます。果皮が黄緑色のものはまだ未熟なので、追熟が必要です。全体が黄色に染まり、表面が油っぽくツヤツヤして、香りがしっかりとするまで、冷暗所に置いておきましょう。
保存するときは冷蔵庫に入れる必要はありません。新聞紙などにくるみ、直射日光の当たらない涼しい場所で保存します。比較的日持ちしますが、完熟したものはできるだけ早く使うようにしてください。

スペシャリストが直伝!美味食材アドバイス

写真:藤森明子さん


スペシャリストが直伝!
美味食材アドバイス

花梨は咳止めや風邪予防などの薬効が広く知られ、「花梨エキス配合」ののど飴も多く出回っているほど。昭和50年 代に花梨酒が咳止めや喘息に効果があることをメディアが取り上げたことをキッカケに、認知度が高まりました。似た果実に「マルメロ」がありますが、花梨と 同様に果実酒やシロップ漬け、ジャムにして楽しむことができます。咳止めなどの薬効も変わりません。

写真:藤森明子さん

藤森明子さん

食品メーカーに勤務後、料理教室の講師を経験。その後は栄養士として勤務。
1995年に管理栄養士を取得。
現在はマダムマーサ・クッキングスタジオや調理師専門学校の講師、食品メーカーの試食作り、食育イベント、保健指導などで活躍中。

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