写真:トビウオ

地域の食文化に根付いた食材

グライダーのように海面を飛ぶ姿で知られるトビウオ。マグロなど海中の敵から逃げるために海面を飛ぶと言われ、海中では時速70kmで泳ぎ、海面2〜5メートルの高さで100メートルは普通に飛び、大型のものは600メートルも飛び続けることができます。
トビウオは回遊魚で、春から夏にかけて産卵のために北上し、秋には南下する群れが見られます。関東以南の各地にはそれぞれ呼び名があり、さまざまに加工されている地域の食文化に根付いた魚で、島根県の県魚、京都府の夏の県魚、水揚げ日本一の長崎県の秋の県魚に指定されています。

伊豆諸島の名産品「くさや」の原料

トビウオには多くの種類がありますが、市場には主に「丸トビ」「角トビ」の2種に分けて出荷されます。「丸トビ」は、体の断面が丸いホソトビウオを指します。日本海沿岸の山陰地方や九州北部ではトビウオを「アゴ」と呼び、練り物や出汁に利用しますが、主にこのホソトビウオを加工しています。
「角トビ」は35cmほどのツクシトビウオ、50cmにもなる大型のハマトビウオを指し、刺身や塩焼きなど鮮魚用として出荷されます。春に八丈島付近で、秋に長崎県の平戸市付近で獲れるハマトビウオは大型で味が良い名産品で、伊豆諸島の名産品「くさや」の原料としても使われています。

トビウオはアスリート!? 高タンパク低脂肪のヘルシー食材

数百メートルも海面を飛び、海中では時速70kmで泳ぐアスリートのようなトビウオは、脂肪分はわずか1%と少なく、高タンパクのヘルシー食材です。脂肪が少ないので、酸化しにくく、タンパク質がアミノ酸に分解されてうまみが増すので、干物や乾物にするのに適しています。
栄養素ではミネラルが豊富で、抗酸化作用が高くアンチエイジングが期待できるセレン、カルシウムとともに骨や歯を強くするはたらきがあるマグネシウム、血液中の赤血球がつくられるのを助ける銅などが多く含まれています。また、赤血球を生成するのに欠かせないビタミンB12も比較的豊富なので、貧血予防にもピッタリの食材です。

写真:トビウオ

プリっとした食感、上品な味わいが魅力!

トビウオを選ぶときは、目が真っ黒で澄んでいて、ウロコがきれいに付き、腹が白く光っているものを選ぶようにしましょう。脂肪が少ないので他の青魚に比べると日持ちしますが、できるだけ早く食べきるようにしてください。
鮮度の高いものは、刺身なめろうにすると、さっぱりしたおいしさを楽しむことができます。脂が少ないので、塩焼きにするときは焼き過ぎると固くなるので注意します。身には弾力があって粘りが強いので、すり身にするとおいしくいただけます。つみれ汁にしたり、つみれを揚げた「しんじょ」は、プリッとした食感と上品な味わいが楽しめます。

スペシャリストが直伝!美味食材アドバイス

写真:藤森明子さん


スペシャリストが直伝!
美味食材アドバイス

日本海沿岸の山陰地方や、長崎県などの九州北部では「アゴ」とも呼ばれるトビウオ。トビウオの幼魚を素焼きにして乾燥させた「アゴ出汁」は、上品なコクと深みのある味わいで、澄んだ出汁になり、長崎県の正月のお雑煮には欠かせないもの。長崎県五島列島の名産品「五島うどん」も、アゴ出汁で食べるのが定番です。近年はうまみの強さからラーメンの出汁としても注目されています。トビウオを原料とした「アゴちくわ」は、山陰地方の名産品です。

写真:藤森明子さん

藤森明子さん

食品メーカーに勤務後、料理教室の講師を経験。その後は栄養士として勤務。
1995年に管理栄養士を取得。
現在はマダムマーサ・クッキングスタジオや調理師専門学校の講師、食品メーカーの試食作り、食育イベント、保健指導などで活躍中。

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