ネットセキュリティ 2018年12月13日

第270回 【インタビュー】閲覧履歴が見られている!?知っておきたい「ネット広告の仕組み」

デパートやショッピングモールに出かけなくても、インターネットでさまざまな物が手に入る時代。仕事などで忙しく、時間がない女性にとっては心強い味方ですね。ただ、インターネットの世界にリスクもあります。便利さだけを見るのではなく、セキュリティ対策も万全にして利用することが大切です。インターネットをよく使う方ほど、安全に関する知識も高めておきたいですね。

2018.12.13更新

「冬物のコートがほしいな」とショッピングサイトを眺めたあとに、別のWebサイトを開いたら、さっき見たコートの広告が表示されていた...このような出来事で驚いたことはありませんか。
自分の好みや関心にあった広告が表示されることに、「なぜ私の好みを知っているのだろう」と不安を感じる方もいるかもしれません。

そこで今回は、インターネット広告の仕組みについて、セコムIS研究所で情報セキュリティを研究している坂本一仁研究員に解説してもらいます。

プロフィール
写真:セコム㈱IS研究所 コミュニケーションプラットフォーム スマートコンピューティンググループ 坂本一仁研究員

セコム㈱IS研究所
コミュニケーションプラットフォームディビジョン
スマートコンピューティンググループ 坂本一仁研究員

2009年入社。Webセキュリティやプライバシー保護の研究をしている。

広告がどこまでも追いかけてくる?ユーザーの行動を追跡する「クッキー」とは

Q
なぜ、見たことのあるページの広告が繰り返し表示されるのでしょうか。
A
Webサイトへの訪問履歴をもとにユーザーごとに広告を表示する「ターゲティング広告」という手法があります。
この広告方法でポイントになるのが「クッキー」という機能です。ユーザーがインターネット上でどういう行動をしているのか追跡しています。
クッキーの情報に紐付いて、どこのページを見ていたか情報を取得することができるので、別のサイトを訪れたときもそのWebサイトの広告枠にターゲティング広告が表示されるのです。
Q
ニュースサイトなど全く関係のないページを見ているときも広告が表示されますね。
A
よくある無料ニュースサイトは、広告収入によって成り立っています。そのため、さまざまな事業者のコンテンツや広告枠によって構成されています。
見た目はニュースサイトの1ページですが、実は広告事業者をはじめ、多くの事業者と通信してページが表示されています。ニュースサイトを通じて広告事業者のクッキーが埋め込まれていたら、広告事業者がユーザーのWebサイトの訪問履歴などの情報をクッキーに紐付けて取得していることになります。
Webサイトのプライバシーポリシーを見ると、どんな広告事業者がクッキーを埋め込んでいるか確認することができますよ 。

インターネット上の行動を知られるリスクは?

Q
自分の知らないところでいろいろな事業者に閲覧履歴が知られてしまうのは、なんだか怖い気もしますよね。
A
クッキーは1事業者ごとに管理しているものですが、いろいろな広告事業者が情報連携して、互いにクッキーを送り合える仕組みが動いています。
知りたい情報があれば、ほかの事業者に問い合わせればわかるようになっていて、ビジネスとして成り立っているのです。
複数の情報を結合して分析すれば、年齢や性別、嗜好などユーザーの属性がかなり詳しく割り出せます。
ユーザーにマッチした広告を自動的に表示させる仕組みが現在の主流ですね。
いまの個人情報保護法では、クッキーは個人情報として扱われないので、マーケティングに活用されているのです。
写真:坂本一仁研究員
Q
自分にマッチした広告は便利ですが、一方でリスクを知ることが大切ですよね。
A
そうですね。クッキーに紐付いた情報が漏えいしたり、正しくない目的で使われるリスクはゼロではありません。
クッキーに紐付いた情報は個人情報として扱わずに流通していますが、SNSなどに登録している個人情報と紐付けば、知られたくない情報が流出してしまうかもしれません。
政治的な広告や偏見を持った広告が繰り返し配信されれば、知らないうちに思考が操作されてしまうことがあるかもしれません。
また、いまのWeb広告の仕組みは非常に複雑になっているため、広告枠に詐欺のような広告が紛れ込む被害もあります。
ウイルスに感染した警告が表示され、クリックすると偽のウイルス対策のページに誘導され、引き返すことができなくなる...というものです。

「追いかけてくる広告」が気になるときの対処法

Q
Web広告は、複雑な仕組みで表示されているのですね。
A
先程説明したようなリスクだけではなく、広告を通じて関心の高いコンテンツにいち早くつながることができるメリットがあります。また、広告は多くのWebサービスの収入源になっています
ただ、Web広告の仕組みは非常に複雑です。不適切な広告が紛れ込むことがあることや、セキュリティ、プライバシー面でやや心配なところがあることは、知っておいたほうが良いでしょう。
良い広告ばかりではないことを心に留め、慎重に見極めることが大切です。
広告とはわからないくらい巧妙に表示されることもありますので、注意が必要です。
Q
ターゲティング広告そのものが気になるときはなにか方法がありますか。
A
ブラウザからクッキーをこまめに削除する方法があります。
クッキーを削除すれば、ターゲティング広告に使われていた追跡情報がリセットされるのです。
頻繁に消すのが面倒ならば、クッキーの情報を残さないプライベートブラウジングを使う方法があります。
また、閲覧した記録がどのように使われるのか気になる場合は、WEBサイトのプライバシーポリシーで確認できます。よく見るサイトだけでも、プライバシーポリシーを読んでおいたほうが良いですよ。

* * * * * * * * *

自分の情報がどうやって扱われているのか、リスクを知ったうえでどんな対策が必要なのかを見極めたいですね。
インターネットの安全は、「よくわからない」で済ませないことが大事です。
仕組みを知った上で、セキュリティ意識が高い「防犯女子」を目指しましょう。

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