SECOM RUGGUTS

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四、強肴 熱すぎる観戦記トップイーストリーグ

第8節
2015年11月22日(日) 12:00キックオフ
セコムラガッツ 19 019 33 秋田ノーザンブレッツ
1914

これから始まる栄光は山下誉人と共にある。パワーとスピードを搭載した暴れん坊のブルース
スタメンに戻ってきたNo.8山下誉人が得点力アップの起爆剤となる
 グラウンドの最後尾からひと際甲高い声が飛んだ。2本立て続けに取られた前半15分。「気にせんでええて、ミスした分は取り返そ。おもろなってきたやん」。バックスへ指示を出す姿は昨季までのそれと変わらない。だが今年、松本聖は自ら王様の椅子を下りた。
「ボケーッと考えながら試合をすること、大事なんです。不思議と空いているところが見えてくる。その段差を突いて抜きにいくのが自分のスタイル」(松本)。昨季までは環境が許さなかった。チームの司令塔を任され「自分が自分がってプレーばかりが先走った。どうにかせなあかん思って空回りしていた」。

 4年前、ルーキーだった松本はリーグ終盤の大事な場面での起用に応え、安藤敬介前監督(現・戦略分析担当)からの信頼も厚かった。「間違いなくラガッツの中心となる選手。近い将来10番を背負うことになる」(安藤)。その言葉通り、翌年からはレギュラーに定着、奔放なアタックセンスは大きな魅力で一目置かれる存在だった。
 しかし今季は開幕からベンチ暮らし。初めて壁にぶち当たった。代わってSOを任されたのは2年目の貴島良太。「自分に何が足らんのか、真剣に考えました」。できない部分を補おうと身体を張ったディフェンスに努めた。すると今度はキャリアを積んだ茂木大輔が合流し、再びポジションを奪っていく。「モテさんのこうしたいという発言力。それも『間違いないぞ』という顔で話すから自ずとみんなが引き寄せられる。言葉に迷いがないんですよね。憧れるしかっこええなと思う。試合中もみんなと喋っているし、自分もこうならなあかんのかなと」(松本)。
 へそを曲げるでもなく、課題に向き合い、素直な気持ちで役割を譲った松本。それは元来“典型的な弟分キャラ”という生き様に由来する──

 未勝利同士、共に負けられない戦いの時計は後半14分を指していた。7-26、逆転にも勝ち点の積み上げにもあと3トライが必要だった。アップからいい雰囲気で試合に入ったが前半攻めこんで取りきれず、逆に11分自陣でWTB本郷伸太郎がキックをチャージされ、先制トライを奪われると、26分、SO茂木が負傷交代。さらにSH岡健二の眼球に相手スパイクの踵が当たるアクシデントなどが重なり、厳しい戦いを強いられた。落ち着いて1本を取りに行きたかったが、中盤からのタッチキックが2本続けてゴールラインを割るなどミスも続き、0-19での折り返しとなった。
 反撃開始は後半11分、FB加藤祐太がスピードあるランでラインを切り裂きトライ。相手の足も止まり、押せ押せムードとなるが、続くNo.8山下誉人のトライまでには実に18分間を要した。秋田に5トライ目を奪われ、勝利が遠のいた38分にWTB谷口崇人がトライを決め執念を見せるがそれまで。必勝を期した試合は3トライ、14点差の敗戦で勝ち点を奪うことさえできず、リーグ戦1試合を残して最下位に後退した。

声を出すCTB姫野拓也の統制でFWも生きる
 酷寒の秋田遠征。敗れた後の帰路は途方もなく長く感じられる。自信を持って臨んだ試合、なぜ勝てなかった。秋田新幹線こまちの車中、魅惑のワンダーマンに真意を聞いた。 「勢いもあった。悪い試合じゃなかった。ただ丁寧にできんかった。タッチ出されへんかったり、攻めてるときのノックオンやったり。いつも通りのプレーではなかった」。後半、加藤のトライで流れを引き寄せた直後にSH岡がシンビン。悪い巡り合せも重なった。
「取るのに時間をかけすぎた。もっと機転を利かせられたら。ハーフがいない、プレッシャーは強い。その中でFWが行くしかない状況を作ってしまったのは配慮足らんかった。でも自分の中ではもう処理できてます。反省はするけど気にしない。気になっても寝て忘れて完結します。次に進むことの方が肝心やから」(松本)。
 試合中、何度もラインの裏を取ったがスコアにつなげられなかった。松本に一人でトライを取り切るスピードがあれば。そんな“たられば”に苦笑しながら、自分の足が遅い理由をこう打ち明ける。「走り方が変なんです。ひじ曲げて走られへん。買い物かご持って走ってるみたいでしょ。これ体操やっていたからなんです」。

 ザ・関西のノリを地で行く三人兄弟の次男坊。「お調子者でうるさい。そのくせケンカは弱いし、いざとなったら助けてもらう情けないヤツでした。顔は男前やのに、モテへんかったのはいつまでも弟分キャラのままだからでしょうね」(松本)。
 才能があると褒められてその気になり、幼稚園から本格的に器械体操を始めた松本。吊り輪と平行棒はなかったが、床・鞍馬・跳馬・鉄棒の総合種目で関西5位の実力。夢はオリンピック出場と威勢もよかったが、ある時鉄棒で飛ばされて頭から落下。その恐怖がどうしても抜けずに体操から離れた。
 中学に上がっても身長は130㌢と少し。それでも体格に関係なく出会ってしまうのがラグビーとの宿世だ。「親戚のお姉ちゃんが大阪桐蔭にいて、試合を見に行ったら夢中になった。初めて桐蔭が花園に出た年。ケガはつきもののスポーツやのに、不思議と危険な香りはしなかった。なんやねんあのチビ言われて、よう相手からもバカにされてました」。
 そのままラグビーにのめり込み、大学で上京。「将来、体育の先生になりたいなと思って。進学先はニッタイか、タイダイか。後藤翔太(現・追手門学院女子大ヘッドコーチ)や今村雄太(現・神戸製鋼コベルコスティーラーズ)がいた早稲田のファンやったんで、試合できる方に行こうと決めました」(松本)。右脳で考え、直感を信じて動くタイプ。早稲田に進学するという発想が出てこないところがいかにもスグルらしい。

「僕自身、基本すべってますから」。強い感情があまねく。松本が本気を出せば無敵、誰にも止められない。大学4年時、「めざましテレビ」今日のココ調のコーナーで、加藤綾子アナの取材を受けた。「めちゃめちゃ可愛かった。自分が持っているすべてのトークを使って笑かそうとしたら、カトパンが『面白いコ』って呼んでくれた。あの時はオレの勝ちやと思いましたね」(松本)。後日談だが、前節の江戸川のゲームでも日本テレビ系「有吉反省会」の企画で、対戦相手の着ぐるみ・ダイボ君の具が安西ひろこさんであることを察知すると、しっかりと通路で目撃に成功している。
 目下ラガッツ最大勢力を誇る日体大軍団の切り込み隊長は、フィールド上に自らの居場所を見つけた。心に刻むのはかつての恩師から受けた教え「厳優強」。厳しさは優しさであり、優しさは強さだ。そして強さは厳しさを育んでくれる。「なんだかんだで周りに助けられてここまで来られた。ここから先は自分の頑張り次第」。血なまぐさい争い、耳をつん裂く銃声にも歩みを止めない。感情に社会に飲みこまれることなく、欲張らずに夢のかけらを拾い集める。素晴らしき人生を、まだまだこれからバラ色に変えてみせる。
【小谷 健志】
FL 杉本 耀
FL 杉本耀

久々の先発出場に応え、二度目のMOM受賞となった。特に防戦一方だった前半は一人でピンチを凌ぐビッグプレーを連発。ポジション争いが激化するFW第3列の中にあって思いきりの良さと激しいプレーでチームの士気を上げた。リーグ序盤は4戦で3トライをマーク。「チームのトライ王を目指す」と宣言するほど好調をキープしていたが、その後は出場機会に恵まれなかった。今度こそチャンスをモノにしたい。