SECOM RUGGUTS

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四、強肴 熱すぎる観戦記トップイーストリーグ

第5節
2015年10月25日(日) 13:00キックオフ
セコムラガッツ 35 2129 41 栗田工業ウォーターガッシュ
1412

ラグビー人生、最後の決断でセコムへ。透徹を貴ぶ岡健二こそ最高の手引書
岡健二はトップイーストリーグ全体をを見渡しても屈指のSH
 人生の岐路に立つたび、大きな決断を迫られ、人間としての勘と意思でそこに踏み切り事を為してきた。トレードマークだった口ヒゲを剃り落とした社会人11年目。3チーム目でのリスタート。岡健二が最後に選んだのはセコムラガッツだった。
 必ずチームにプラスをもたらしてくれる良薬だ。開幕からメンバー入りを果たし、3戦目から先発出場を続ける。7月6日“セコムの日”に電撃入社。基本動作、システム行動、警戒棒訓練。いきなり待ったなしの新入社員研修に面食らう。その道では知られた存在の32歳、オールドルーキーさえもヘルメットと防弾防刃のベストを装着し、セキュリティスタッフとして容赦ない洗礼を受ける。ラグビーでは半年以上のブランクを抱え、慣れない土地で未経験の夜勤をしながら、「眠さとの戦い」(岡)の中で必死にコンディションを上げてきた。

 リーグ戦折り返しとなる第5節。No.8に山下誉人、SOには茂木大輔。岡が球を捌く両隣の縦ラインに千両役者が揃った。昨季74失点を喫した栗田工業に挑んだラガッツは開始5分、敵陣で得たペナルティからショットではなく強気にラインアウトを選択。サインプレーを鮮やかに決め、No.8山下が幸先よく先制トライを決める。
 11分、天敵ともいうべき相手No.8アッシュ・パーカーに走られると14分、今度はアジア枠のWTBポルトリッチ・ベンのスピードに翻弄され7-12と逆転を許してしまう。それでもこの日のラガッツは一味も二味も違った。17分、キックを軸にボールを動かして敵陣ゴール前まで攻め込むと、PR中島崇裕が躊躇なく飛び込みトライ。22分にはルーズボールを足にかけCTB今村六十がトライ。21-12とリードを拡げる。
 その後、尻に火がついた栗田は3人の外国人選手だけでボールをつないで前がかりに攻めてくる。この時間帯を踏ん張りたいラガッツだったが、ハーフタイムを挟む前後半の正味20分間でポルトリッチの3連続トライ(計4本)が生まれた。後半5分、21-34と点差を開かれるがここからラガッツのさらなる逆襲が始まった。セットピース、特にスクラムでの優位が次第に栗田をボディブローのように苦しめていく。
 後半11分、敵陣22mライン内側のラインアウトから縦に長いドライビングモールを組むと一気に押し込んでNo.8山下がトライ。4トライの壁を打ち破ると21分、ビッグプレーが生まれる。再び敵陣ゴール前まで攻め込んだラガッツはスクラムで栗田を圧倒。コラプシングのペナルティを奪うと、迷わずスクラムを選択する。ボールが入る。8人が力と呼吸を合わせぐい、ぐいとプッシュをかける。スクラムが動いた。じりじりと前に出る。あと3m、栗田はズルズル下げられる。あと2m、No.8山下がいつでも抑えられるよう足元のボールを慎重に操る。1m、50cm・・山下がボールを拾い上げた瞬間、レフリーの手が上がった。栗田のオフサイド、認定トライ。ブライトンの歓喜、さながらの興奮が駆け巡った。
 茂木がコンバージョンを決めて35-34。逆転。大金星の予感に場内は異様な空気に包まれていく。29分、今度は栗田だ。タッチラインの外からジャンプしてボールをキャッチしたキャプテンのLO中尾光男が突進。タッチだろ? だがフラッグは上がらない。一瞬の間ができたその中央をぱっくりと割られた。

初スタメンで獅子奮迅の働きを見せたSO茂木大輔
 逆転につぐ逆転、6点のビハインド。残り時間は10分。ラガッツは岡-茂木のHB団がゲームメークをしながら、敵陣での試合運びに徹する。「一試合の中で、上げるところと落ち着くところの使い分けだったり、やろうとしてきたことがようやく浸透してきた。ディフェンスを頑張っていれば流れが来るってことがわかったし、ゲームの組み立て方ひとつで、最後まで接戦できる力があることも証明できた」(岡)。 逆転はならなかった。何度もトライチャンスはあったが、最後取り切れなかったのはチーム力の差という一言で片付けたくはないが、逃げ切った栗田に一日の長があった。5トライと7点差以内のダブルでBPを獲得し勝ち点2。それでも消せない口惜しさの残る痛い敗戦だった──

 試合後、観客への挨拶を終えると岡は真っ先に片付けをしているメンバー外の部員のもとへ歩み寄り、一人ひとりに声をかけ握手を求めた。「お疲れさん」「サポートありがとう」。大学を卒業して最初に入社したのはヤマハ発動機ジュビロだった。「5年間在籍したヤマハでは、下のチームにいる期間の方が長かったから、試合に出れない苦しさとか痛みは分かってあげられるつもり」(岡)。
 高校、大学と強豪校にあって、下級生の頃から不動のレギュラー、華のあるプレーヤーだった。ガンガン自分で仕掛ける超攻撃型のスクラムハーフ。「僕らが学生の頃って、大学のカラーこそあったけど、いまほどラグビーもシステマチックじゃなかったし、いけちゃっていた時代。体重62kgしかないくせに余裕でキャンキャン言ってましたからね (笑)」。
 社会人になって自分のプレースタイルがまったく通用しない。初めて大きな壁にぶち当たった。当時のヤマハ、SHは村田亙、佐藤貴志、田井中亮範、矢富勇毅。岡は5番手だった。「ジャパンの選手ばっかりで、田井中さんはバイスキャプテン。オレはどこで勝ちゃあいいんだよと」。1シーズンまったく出られないこともあった。それでも「見えないかもしれないけどBチームが強いとトップチームの結果も出る。チームっていうのはそういうもの」(岡)。自分でいくより、テンポを作って周りの人を活かす。「それが楽しくてラグビーを始めたんだった」と自分の原点を思い出した岡はここから大きな成長を遂げた。
 出場機会を求めて移籍したNTTコミュニケーションズシャイニングアークスでも、常に若手のことを気にかけ、仲間のための時間を惜しまなかった。「どうしたらチームに貢献できるかなんて考えなくていい。どうやったら同じポジションに勝てるかを突き詰めてほしい。最低限自分がどうなりたいか、試合に出たいという強い意志。それがないなら、僕は社会人でやるべきじゃないと思っているし、もっと公式戦のジャージーを着たいと思うヤツが増えてほしい」。

 一人ひとりのレベルアップこそがチームの希望となる。「ラガッツに来て、みんなのことを観察してみて、スキルフルな子が結構いるなと感じた。タックルがっつり入れるし、これから上に行こうとしているチームにとってはなくてはならないもの。その半面、貪欲さとかハングリーさが表に出ない選手が多いのも事実。オレがオレがっていう積極さに欠ける部分は変えていってあげたい」。
 今年2月、前所属チームで来季の構想から外れた。青天の霹靂だった。心に残った現役への執着。切っても切れないラグビーへの思い。「関東に戻ってきて32歳までやれた。もういいんじゃないか」。未知ともいえるセコムへの移籍、はじめは両親にも反対された。本稿筆者との5度におよんだ歌舞伎町ルノアールでの話し合い。最後は自身の心に問いかけ、覚悟を決めた。
 しんどいことは承知で飛び込んだ世界。「練習終わって日付が変わっているとさすがに萎える」。それでもラグビーをやれていることがうれしい。「今日の練習きつかったなぁって。いまは家に帰ってそう云えることが、とにかくうれしい」。あっぱれ、岡健二のラグビー人生はまだ終わらない。
【小谷 健志】
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昨季は大学最強の帝京大にも匹敵するという山梨学院大自慢の大型FWを屋台骨として牽引。一部昇格即6位という躍進の原動力にもなった。社会人になり、スクラムの強さにも磨きをかけたがルーキーらしからぬ落ち着きある振る舞いで黙々とタフにプレー。試合翌日に必ずと言っていいほど24勤務が待ち受ける厳しいスケジュールにもめげず、今季初の80分フル出場。低いスクラムで相手を押し込み、認定トライに貢献、タックルなどフィールドプレーも光った。