

トップイーストリーグDiv.2 最終節
| セコムラガッツ 43 |
サントリーフーズ 14 |
| 開催日 |
2011年12月04日(日) |
キックオフ |
13:00 |
| 天候 |
晴れ/強風 |
開催地 |
セコムラグビーフィールド |
| レフリー |
早藤 嘉幸(関東協会) |
観客数 |
521人 |

チームディレクターの重責、癒えぬケガを抱えながらFW最前線で戦ったHO安藤敬介 【PHOTOGRAPHED BY YUKA SHIGA】
モールからタイミングよくブレイク。トライを決めたNo.8渡邉庸介監督兼任
最後はチームに芯を通した者たちの勝利だった。
既に3敗を喫し、Div.1昇格の道が断たれたラガッツ。意地とプライドだけで戦うしかない最終戦を控え、WTB石橋秀基は全部員宛にメールを打った。
「試合前のこの逆境たまらないね。オレは最終戦で腕や足が持っていかれても、指がもげても勝ちたい。試合に勝って、来てくれた人たちと全員で写真が撮りたい。今まで観客の皆さんに声援をもらった分、その何倍にも大きく体でお返ししようぜ。お客さんと魂の会話を」(石橋)。
格闘家・高田延彦氏の言葉になぞらえたメッセージ。3.11で生まれ故郷の女川や、両親が暮らす石巻は津波にのまれ、大切な家族や仲間を失った石橋の心が晴れることはない。どうしても勝ちたいシーズンだった。リハビリも不十分、それでも満足に動かぬ重たい体にムチ打って試合出場を続けた。しかし非情にも結果はついてこない。勝ってシーズンを終えること以外に、この1年を締めくくる方法など見当たらなかった。
12月とは思えない暖かさ。狭山のグラウンド上空では試合の行方を左右するかのような強い風が吹いていた。対戦相手はサントリーフーズ。この試合でラガッツから4トライ以上を奪って勝利し、かつ大きく点差をつければ自力で入替戦出場の可能性を残す。前半から攻め立てたい、得点が欲しい相手に対しどう向き合うか。たとえ勝っても順位を上げられないチームが、熱と誇りだけを胸にどれだけファイトできるのか。
キャプテンの升本草原も選手たちの心の内を考えていた。「チームとして徹底されたプレー。トライを取る術。複雑に考えることは大事。しかし、力の拮抗した相手と戦うとき、最後に勝敗を分けるのは別次元のものだと思う。最後の最後でやるべきことを絞った。今できることとうちの強み、その部分を押し出すことで活路を見出したい」。
升本が試合中装着しているマウスピースにはこう書かれている。「KEEP IT SIMPLE STUPID」。愚直なまでにシンプルにという意味だ。「困ったときも、いろいろ準備した後も、最後はこういう気持ちが大切なのかなと」(升本キャプテン)。一つのことに力を向ける、時にそれは前評さえも吹き飛ばす爆発力を生む。システムが飽和している現代、ブレイクスルーするのはフレアな感覚だ。意志が選手たちの体を突き動かす。ラガッツの最終戦が始まった。
最終戦は本職のSHではなく、WTBとして出場した池田健斗のスピード
前半風下のラガッツはエリアを意識した戦い。それでもスキあらばと速攻から仕掛け、敵陣深くに入り込む。13分、敵陣ゴール前のラックからNo.8渡邉庸介監督兼任が抜け出す。最後はサポートしたFL藤田大吾が先制トライ。FWがブレイクダウンの攻防で激しくやりあい試合の主導権を握ると24分、ラインアウトからのモールを押し込みLO立道裕昭がトライ。ボーナスポイントを取りにいった前節同様、ペナルティゴールが狙える位置でもタッチへ蹴り出し、トライを奪いにいく姿勢を示した。前半12点をリードしたままホイッスル。
手ごたえはあった。だが誰ひとりとして胸の鼓動を抑える者はいない。本当の勝負はこれから。そんな折、ベテランHO安藤敬介は前半の戦いで右足の感覚を失っていた。前節のヤクルト戦終了後、かかとの三角骨を骨折していたことが判明。その影響からかアキレス腱の痛みも激しく、最終戦までの3週間、まともに練習に参加することすらままならない状況だった。
注射を打ちながら、満員電車の通勤も厳しく、坐薬を入れて仕事とラグビーの両立に向き合う日々。「ぶっつけ本番で不安はあったけど、最終戦だし。騙しだましでやってきたが前半、運悪く相手に蹴られてしまい、踏ん張ることすらままならなくなった」(安藤)。
ハーフタイム。安藤は渡邉監督のもとに歩み寄ると、自ら交代を願い出た。そして「オレ下がるから。頼むな」。ともにスクラムの屋台骨を支えた両PRの山賀敦之と中村功知、そしてあとを託す海老沢洋と固い握手を交わした。さらに新人の吉田竜二、木下貴之とも。その目にはやさしい笑みが湛えられていた。
今年も幻に終わったPR山賀敦之の生涯最初で最後のトライシーン
後半も先手はラガッツ。3分、快足FB加藤祐太が勢いよくボールを受けてラックサイドを駆け上がる。13分にフーズのキャプテン・加藤郁己にトライを許すが17分、敵陣22mラインの外側からモールを組むと縦に長いドライブで一気にゴール前へ。最後はNo.8渡邉がインゴールに飛び込む。
勢いが加速するラガッツは23分にFB加藤、39分には今季のMVPと言ってもいい働きを見せたバックスリーダーのCTB今村六十がトライ。リザーブメンバーも全員がグラウンドに立つと後半ロスタイム。敵陣ゴール前で攻め続け、PR山賀にボールが渡る。山賀だ。この日一番の歓声が沸き上がる。
PR一筋、37歳独身。生涯トライ経験なし。突如、眼前に広がる無人のゴールライン。ボディコントロールしてインゴールにダイブするだけという場面だったが、絶好すぎるシチュエーションに戸惑ったか、細かくステップを切った後、なぜか密集の中へと突っ込みラックに。山賀の歴史的瞬間は幻に終わり、ファンの笑いを誘ったが、海老沢がしっかりトライを決めて計7トライ。43−14と最終戦を今季のベストゲームで締めくくったラガッツの2011年度シーズンが幕を下ろした。
レギュラー獲りへ。来季は背水の陣で臨むPR木下貴之(右)とLO丸山隆正
「勝つことにしか意味はない。参加するだけの意義などどこにもない」(安藤チームディレクタ−)。こう鼓舞して始まった今季。チーム目標だった全勝優勝の誓いは初戦であっさり切り裂かれた。それでももう一つの目標であった「Div.1昇格」を掲げ、傷だらけの戦いは続いたが、1試合ごとに勝ち負けを繰り返す、思うようにならない1年だった。「最終戦を終えて、なんでこういう試合がシーズンを通してできなかったのかという思いがある。そこが悔しい。終わりよければでは片付けられない」(西川匠FWリ−ダー)。
たった6試合、わずか2カ月半の短すぎるシーズン。「チームとしての戦い方に準備不足があった。オフに手術した選手の復帰が遅れ、春に試合ができなかったことが、結果的にはシーズンが始まるまでにチームを成熟させられなかった原因。でも結果が伴わない中、まとまってチームとしてやるべきことを見出し、最後までひたむきに取り組めたことは来年にもつながると思うし、絶対につなげなければならない」(升本キャプテン)。
勝つことは難しい。だが勝つ喜びは何物にも代えられない。たった20数人しかいない選手全員を。グラウンドに駆けつけた観衆を。一瞬にして笑顔に変えてしまう魔法だ。石橋が願った記念撮影は実現された。
果てのない道──。選手が替わり、ジャージーが変わっても、ラガッツの熱が冷めることはない。年が明けたら再び新たな挑戦は始まる。なぜここまで戦い続けなければならないのか。そんな問いなど無意味だ。シーズンを終えて、ある選手は営業に駆けずり回り、ある選手は制服に身を包んで夜勤へと出かけていく。彼らの姿には圧倒的な説得力がある。
すべては明日の夢に導かれし、栄光の架け橋とならんことを。
【the author BRAVO.K】
セコムの中村直英常務執行役員東京本部長や新井啓太郎執行役員も応援に駆けつけ、約束通り勝ってみんなで集合写真
 No.8 渡邉 庸介 |
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「監督としての責任を痛感、形あるチームづくりを」 FWにこだわる部分とエリアを意識した戦い。あとはバックスでボールを動かせたのが勝因です。ほぼゲームプラン通りに試合ができました。今季はチームのベースをしっかりと落とし込みできず、リーグ戦で3敗。責任を感じています。特に初戦の大敗が響きました。来季の編成はこれからですが、しっかりとした形のあるチームにすべき。たくさんのことを詰め込むとどれかが疎かになります。多くを望まずしっかりとやるべきことを。もちろん一人ひとりの成長の部分に懸かっています。 |
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 SO 升本 草原 |
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「経験を糧に来年はよりタフで大人のチームに」 アタックもディフェンスも粘ることができました。最終戦でようやくチームとして機能した部分があり、今季一番の内容だったと思います。1試合ごとにチームのまとまりを感じたシーズンでしたが、まったく満足のいく結果ではありません。来季に向けての始動を早め、よりタフで大人のチームをめざします。ラガッツにいる責任とラグビーができる感謝の気持ちを持ってステップアップし、肉体的にも精神的にもまず個人から、そしてチームとして成長しなければ、来季戦う意味はないと思います。
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