子供を守る防災特集 「家庭での防災準備」

セコムの舟生です。

子供を守る防災特集すっかり秋らしくなり、朝晩はグッと過ごしやすくなりましたね。さて、前回「子供を守る防災特集」と題して「保育施設とのつながりについてレポートしましたが、今回も引き続き、セコムIS研究所の三島和子氏から、小さな子供を抱えたご家庭が災害に備えて準備しておくべきことなどについて話を聞きました。

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避難所は子連れ家族にとって、どんな場所か? 舟生:災害が発生した時、乳幼児を抱えた家族も避難所に避難しますね。子連れでの避難所生活はどういった感じなのでしょうか?

三島:小さなお子さんを抱えたご家族も、近所の小中学校など指定された避難所に避難をしますが、子連れの多くの方々は周囲への迷惑を気にして大変なストレスを感じたそうです。炊き出しの配給なども子供の手を引いて長蛇の列に並ばなければなりませんし、避難所によっては"震災から数日間全く救援物資が手に入らなかった"なんて場所もあったようです。

舟生:子供はジッとしていませんし、すぐにグズりますからね。普段の生活でも公共施設を利用する時には、周囲に迷惑がかからないかと気を配りますよね。

三島:私も子育て中なので本当によくわかるのですが、子供を常に静かにさせておくなんて、現実的に無理なんですよね。新潟県中越地震や新潟豪雨などの広域的な災害の場合、避難所では乳幼児世帯だから特別扱いといったことはなく、学校の体育館などの限られたスペースに大勢の人と一緒に寝泊まりすることになります。避難所によっては、横になれるスペースを確保することすら大変なケースも少なくありません。大人でも疲労やストレスが溜まる環境下ですから、余震などで子供が夜泣きなどをすると「うるさい!」「外へ行け!」といった、心ない声をかけられることもあるそうです。

舟生:そんな状態では、子供を持つ家族は肩身が狭いですね。

三島:そうなんです。周囲への迷惑を考え、子供を持つ家族だけで別の場所に集まったり、車中避難に踏み切ったりする家族も少なくありません。避難所にいるより、子供を持つ家族同士で避難したほうが、親も子供も楽なのだそうです。

舟生:車中避難の場合、狭いながらも家族だけの空間が確保できますからね。

三島:しかし、良いことばかりではありません。公的に決められた避難所以外の場所では、救援物資の供給はもちろんのこと、救援物資を受けるための情報すら入手困難なのです。したがって、避難所以外の場所に避難した場合、「救援物資が全く手に入らない」といった事態もありました。車中避難の方も同様です。

舟生:そういった場合、どのように対処すればよいのでしょう。

三島:例えば、夜間などの生活の基盤は車中や自宅などに置いて、日中は情報収集を兼ねて避難所に足を運ぶというのも方法だと思います。また日頃から乳幼児を持つ家庭に対して災害時の心構えや準備について情報提供しておくことや、情報を入手する手段を確立しておくなどの働きかけをみんなで行っていくことも大切ですね。

舟生:車中避難の場合には、近年、問題となっているエコノミー症候群にも注意が必要ですね。

子供を守る防災特集三島:車中避難の場合は、狭いスペースに家族が寝泊まりするので、心身ともに大きなストレスがかかります。ポイントは足が伸ばせるかどうかですね。うまく工夫をして足が伸ばせるスペースが確保できれば、車内にはカーラジオやテレビなどの情報入手手段・エアコン・照明器具など、生活に必要な物はある程度揃っているので利用価値はあります。オムツ替えや授乳など人目を気にしないで安心してできるのも良い点ですね。日頃から水や日持ちのする簡易食料、衣類やオムツ、毛布、子供のための絵本やおもちゃなどを車に積んでおくと、いざという時に大変役立ちそうです。

舟生:子連れの場合、絵本や簡単なおもちゃは必需品ですね。ところで、車中避難などの場所はトイレに困りそうですが、その点はいかがでしょうか。

三島:トイレ問題は、公的な避難所でも問題になります。不特定多数の人が利用するトイレはどうしても不衛生になりがちで、清潔な水洗トイレに慣れた子供たちには使いづらいものです。子供も使いやすいようなトイレなどは、本来もっと行政にお願いすべきことかもしれませんが、改善には時間がかかりますので、保護者としてはもっと自助努力も必要かと思います。

舟生:防災用に携帯トイレなども多く販売されていますね。セコム・スーパーレスキューの中にも、既存の便器に袋を取り付けて使用する"汚物処理グッズ"などが入っています。とくに乳幼児のいるご家庭では、子供を守るための自助努力が必要なようです。


地震発生≠避難所へ避難する
三島:「大きな地震が発生したら避難所に避難するべき」ととっさに考えがちですが、必ずしもそうとは言えません。例えば最近の大型マンションには、大地震にも耐えうる強い構造のものも多く、外に出るよりもかえって安全な場合もあるのです。倒壊などの心配が少ない建物の場合には、かえって生活の基盤を自宅に置く方がよいわけです。前にも述べましたが、避難所では限られたスペースの中で大勢の人と一緒に寝泊まりしなければならず、子供にもある程度の我慢が要求されます。これは乳幼児にとって大きなストレスです。もちろん、家屋の倒壊や火災が発生していたり、その危険性があったりする場合には速やかに逃げるようにしてください。

舟生:家に危険がない場合は、家を生活基盤にしたほうが親子にとって楽なようですね。

三島:災害発生直後は、行政の支援がほとんど期待できません。少なくとも、3日間は自力で生活できる準備をしておくべきです。また、避難所に避難しても、乳幼児のオムツや衣類などはサイズが合わなかったり、配布数が少なかったりと不足することが考えられますので、乳幼児に必要な日用品は、常時、多めに用意しておくと安心です。

舟生:被災時、子供向けの配給はありますか。

三島子供向けの物資の配給はあまり期待できませんので、各自で用意するのが基本だと考えておくべきです。とくに離乳食はほとんど入手できなくなりますので備蓄しておくことを忘れないように。哺乳瓶を使っているご家庭なら、哺乳瓶を洗ったりミルクを作ったりする時に簡易浄水器などがあると便利です。

舟生:電気・ガス・水道も使えなくなるでしょうから、カセットコンロも何かと役立ちそうですね。

三島:キャンプをなさるご家庭などから「キャンプ用品がそのまま使えて便利だった」という声を聞いたことがあります。少しずつ、できることから、防災準備を進めていってほしいものです。それから防災用品は、玄関付近などの取り出しやすいところに置きましょう。家屋が倒壊した場合、せっかくの備蓄品を運び出せなくなってしまいます。水害の起こる可能性の高い地域なら、備蓄品を2階に保存しておくと水没を防げます。

舟生:高層マンションに住んでいる場合、エレベーターが使えませんから、階段での往来を考えると気が遠くなりそうです。

三島:階段を昇降して往来する限度の高さは5階までといわれています。マンションには居住者が参加する管理組合などがありますよね。そういった組合の集いなどで、防災について話し合っておくことをお勧めします。例えば、15階建てのマンションの場合なら、1階・5階・10階に防災用具や水などを貯蔵するようにしておくと緊急時に役立ちますよ。

舟生:なるほど。5階くらいの昇降なら、物資の運搬もなんとか頑張れそうです。


水害=早めの避難を心掛ける
舟生:水害の場合には、震災と違った注意点はありますか。

三島:水害の場合、避難は時間との勝負になります。1階建ての場合、乳幼児やご年配の方がいるご家庭では、大げさかと思われるかもしれませんが"避難勧告が出る前に自主避難をする"ことが大切です。最近は「避難準備情報」が出されるようになりましたから、こうした事前情報に迅速に反応することが重要です。

舟生:避難勧告が出てからでは遅いですか。

三島:単身ならともかく子連れの場合、避難勧告が出てからでは逃げ遅れるかもしれません。夜間の避難などはもっと時間がかかるかもしれません。一旦、水害が発生してしまうと、警察や消防には多くの通報が寄せられて、手が回らなくなる可能性も十分に考えられます。新潟での水害調査でも、乳幼児がいるので警察や救急に助けを求めても「順番に救助していますので、高い場所で待っていてください」「屋根に登って避難してください」といった、不可能に近い指示が出ることもあったそうです。

舟生:もし、運悪くそういった状況に陥ってしまった場合、どうすればよいでしょうか。

三島:「自力で避難してください」と指示されても自力避難が不可能な場合、何度でも、何度でも、通報してお願いをするべきです。決して諦めてはいけません。2階があるお宅なら、2階へ避難しましょう。マンションで1階に住んでいる場合も、2階以上の階に一時避難します。

舟生:平日の日中などは、お父さんは仕事で不在のご家庭が多いでしょう。そうなると、お母さんがひとりで荷物を持って、さらに子供を連れて避難しなければならないですよね。

三島:新潟の水害では、「避難勧告が出たので子供を連れて避難を開始したら、すでに外には水が出ていて怖い思いをした」という声もありました。前にも申し上げましたが、たとえ空振りに終わったとしても早めに避難を開始することです。また、新潟で被災された方からも「ご近所や地域とのつながりが大切だということが一番に感じました」といった声が多く聞かれました。地震でも水害でも言えることですが、日頃から近所の方々とコミュニケーションを図り、非常時には手伝ってもらえるような良好な関係を築いておけるといいですね。

舟生:日頃から地域とのつながりや保護者同士のネットワークを意識的に作っていくことは、災害時にも役立つということですね。非常用品を備蓄する重要性も改めて認識できました。今日はありがとうございました。

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通常の防災用品のほかに、乳幼児のために3日分の備蓄を心掛けましょう

*乳幼児のために日頃から多めに用意しておきたい品:紙おむつ、おしりふき、子供にサイズが合った着替え、タオル、ティッシュ、常備薬、小さなおもちゃ、絵本
*乳幼児のために日頃から用意しておきたい食料関係:長期保存が可能なベビーフード、缶詰め、レトルト食品、水、粉ミルク、哺乳瓶、ストロー付きコップ、子供用スプーン・フォーク、おやつ、お茶・ジュース(粉末も便利)、カセットコンロ、カセットボンベ






2008年9月24日(水)

カテゴリー: インタビュー・座談会

プロフィール

舟生 岳夫

セコム株式会社
IS研究所 所属

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