子供を守る防災特集 「保育施設とのつながり」

セコムの舟生です。

子供を守る防災特集9月は防災の日(9月1日)もあり、防災への意識が高まる時期です。今年も全国各地で防災に関する講演会・展示会などが催され、学校や自治体では防災訓練がおこなわれました。みなさんは地域の防災訓練に参加しましたか?

また、この夏は局地的な豪雨が発生し、水害についても考えさせられる年となりました。地震や水害などの災害時、小さな子供を持つ親としては、「子連れで安全に避難できるのか」「子供を保育園・幼稚園に預けているときに地震が起こったらどう対処すればいいのか」など、不安はたくさんありますね。

そこで今回は、新潟県中越地震と新潟豪雨水害で被災した乳幼児の保護者と保育施設を対象に実態調査を行った経験のある、セコム株式会社IS研究所の三島和子氏に乳幼児を災害から守るためには何をしたらよいのか、話をしてもらいました。

* * * * * *

舟生:三島さん、よろしくお願いします。まずは、三島さんが、災害から乳幼児を守る研究を始めたきっかけについて聞かせてください。

三島:2004年(平成16年)が、どのような年だったか、舟生さんは覚えていますか? 日本列島に過去最多となる10個の台風が上陸して各地に水害の被害をもたらしたほか、7月には新潟・福島・福井などで豪雨水害が発生しました。また、9月には紀伊半島南方沖で地震が、10月23日には新潟県中越地震が発生し、大きな被害を受けました。

舟生:2004年は、日本が多くの自然災害に見舞われた年でしたね。

三島:この年の水害で、お年寄りが逃げ遅れて犠牲になるという痛ましいケースもあり、地震や水害などの災害時には「災害時要援護者」を優先的に支援しようという気運が高まりました。

舟生:「災害時要援護者」とは、どういった人が含まれるんでしょうか?

三島:災害時要援護者には、災害時に自分自身で適切な対応が難しい高齢者・心身障害者・乳幼児・妊産婦・日本語の不自由な外国人・疾病者などが入るといわれています。2004年以前の災害でもお年寄りが逃げ遅れて被害に遭うことは多々ありましたが、気がついたご近所の人や地元の自治体、消防の方たちによる人海戦術に頼っていたのが実情でした。
そこで、国は積極的に早急な対応をしてくれました。そして、2006年3月に、災害時要援護者を優先的に救助する『災害時要援護者の避難支援ガイドライン』が内閣府より公示され、対策が組まれるようになったわけです。

舟生:2004年に多発した自然災害がきっかけとなって、災害時要援護者に目が向けられるようになったわけですね。

三島:ところが、災害時要援護者支援のなかで重点が置かれているのは「高齢者」と「障害者」で、乳幼児については具体的な検討が行われないのが実情なんですね。

舟生:弱者という意味では、乳幼児こそ弱い立場にあると思うのですが、なぜ、乳幼児に目が向けられないのでしょう?

三島:理由としては"乳幼児は保護者もしくはそれに代わる大人と一緒にいるから安心"という前提があると考えられます。

舟生:なるほど。乳幼児(0歳~6歳未満)の場合、保護者や幼稚園・保育園などの保育者が一緒にいることが多いですからね。「親と一緒だから大丈夫だろう」ということでしょうが、実際はどうなのでしょうか?

三島:当時、私も2歳児の子を持つ母親でしたので、災害時に(乳幼児は)大変な不便を強いられているのだろうと、気になって調べてみたんです。しかし、「地震や水害などの災害時に乳幼児を抱えた保護者がどのように困っているのか?」「何を必要としているのか?」といった、基本的な情報すら全くといっていいほど出てこないのです。このままでは、せっかく『災害時要援護者の避難支援ガイドライン』が示されても乳幼児の問題は放っておかれてしまうといった危機感から、実情を知るために地元の長岡造形大学の澤田先生にもご協力をいただき、新潟県中越地震と新潟豪雨水害で被災した乳幼児の保護者と保育士に対して、グループインタビューとアンケートを実施するなど、実態調査をおこないました。


■防災に備えて、保育施設とコミュニケーションを図る
舟生:うちの子も小学校に入学するまで、日中は幼稚園に通っていました。働くお母さんが増えるなか、日中の大半を保育園で過ごす乳幼児も少なくありませんね。子供を預ける保護者としては、災害に備えて、日頃からどういった対策をとればよいのでしょう?

三島:調査をして感じたのですが「災害について保育施設と保護者のコミュニケーションが図れていない」ということです。子供を通じて接していますからお互いよくわかっていると思いがちですが、災害についてはほとんど話し合いができていません。日頃から子供にまつわる話題については事欠きませんから、とても災害についてまで話題が広がらないのは想像できますが、このままではよくないのは、確かです。

舟生:普段の子供のことについては熱心に話し合ったりしますけど、保護者と保育士が防災について熱く語り合っているといった話はあまり聞いたことがありません。

三島:しかし、防災の話はわが子の安全にかかわる大切な事柄です。「保育施設がどのような災害対策をとっているか?」「災害直後はだれに対して連絡をとればよいのか?」「いつから保育が再開されるのかをどこに行けば、どうすれば確認できるのか?」といった災害に関する情報を、保護者と保育士の間で事前に共有しておくべきです。そうやってルールを決めておけばスムーズに事が運ぶのに、事前に話し合っておかないことで、保育士も保護者も、ものすごく無駄な労力を使わなければならなくなります。

舟生:例えば、災害時には、どんな事が大変だったのでしょう。

三島:新潟県中越地震では、一般電話はもちろん、携帯電話も使えなくなりました。災害時優先電話が引かれていた保育園では発信はできましたが、1回線しかないため、全員に連絡するのに非常に時間がかかったそうです。また、一般電話よりつながりやすい携帯電話が保護者との連絡に使われましたが、保育士は個人の携帯電話を使用し、電話代を自腹で負担して対応したそうです。災害時に備えて、保育園用の携帯電話を1台用意しておけば保育士に無用な負担をかけなくて済むので、ぜひ災害時の連絡用に準備をしておいてもらいたいですね。

舟生:まずは、園児の安否を確認するルールを保育施設に確認しておく必要がありそうですね。

三島:今は携帯電話をお持ちの方が多いので、保育士から同報発信できるようなメーリングリストを作ってもらうのも一つの方法です。震災直後は携帯電話もつながりませんが、通信回線が復旧した後であれば効率よく情報発信ができますね。

舟生:災害用伝言ダイヤル「171」や携帯電話の「災害用掲示板」も利用できそうですが。

三島:あらかじめルールを決めておけば、園児や家庭の、ある程度の安否情報は把握できるでしょう。携帯電話の災害掲示板は大変便利なシステムですが、現状では携帯会社が違うと利用できません。そのあたりがクリアできれば有効利用も可能な気がします。

舟生:平日の昼間に災害が発生したとき、「親がお迎えに行くまで子供を安全に預かってもらえるのか?」「そのための備蓄はあるのか?」など、確認をして知っておくだけでも、親の安心感は違ってきますね。

三島:保育園などでは、定期的に保護者を集めて懇談会を開いていると思います。そういった機会に少しずつでも確認をしていく必要があると思いますよ。

舟生:小中学校などは避難所になるケースが多く、耐震補強なども着々と進められているようですが、乳幼児の保育施設などはどうなのでしょう?

三島:小千谷市、長岡市でインタビューをした保育園は全て新耐震基準で建てられていましたが、地震によってかなりの被害を受けていました。なかには、全壊指定を受けた施設もあります。保育士からも「子供がいる時間帯だったらと考えると怖くなる」といった声もありました。保護者としては、施設の耐震性や、建物内部では家具の固定化などが図られているかどうか、保育園側に確認をしておくべきでしょう。

舟生:水害についてですが、保育施設が浸水しやすい地域だった場合でも移転させるなんて不可能ですよね。そういった場合、保護者や保育園側はどのような対策をとるべきなのでしょうか。

三島:「何ミリくらい雨が降れば、休園する」「どのくらい道路に水が溜まれば、保護者に迎えに来てもらう、園児を2階以上の建物に避難させる」といった、判断基準をあらかじめ決めておくべきです。公立の保育園の場合、保育園は役所の指示を仰ぐ規則になっている場合が多いようですが「役所周辺は大丈夫でも保育園では浸水が進んでいた」なんてこともありますので、緊急時には、保育園の責任者自身が判断して決められるといった、ルールづくりを積極的にしてほしいです。

舟生:子育てをしていて感じるのですが、保育時間中に被災した場合に保育士だけで大勢の園児を避難させられるものですか?

三島:インタビューでは、「慣れているから大丈夫」という声もありました。しかし実際にはどうでしょうか。保育施設は女性だけのところが多いと思います。保育士が怪我などをした場合を考えると、地域の方々にお手伝いをしていただけるようにあらかじめお願いしておくと安心ですね。そのためには、保育施設が地域の人たちとコミュニケーションを図る必要があります。例えば、運動会やバザーなどのイベントに招待するなど親交を深めれば、災害時にも快く手伝ってもらえるかもしれません。

舟生:被災後には、何かと力仕事もたくさんありそうなので、地域の方々に手伝ってもらえると保育園側も助かりますね。

三島:そうなんです。災害で保育施設が休園になるのはやむを得ませんが、被災した後、いかに早く保育事業を再開できるかあらかじめ計画しておくことは大切です。被災後すみやかに保育が再開できれば、保護者は子供を預けて、被災後の復旧に力を注げるわけですから。そういった点でも、近隣で助けてくれる人を探して交流を深めておくといざというとき、強力なサポートになりますね。

舟生:保育施設側とコミュニケーションを図るのが必要だとわかりました。最初から全部一気に改善しようとするのではなく、懇談会などの席を利用して、少しずつ、根気よく、話し合いをおこない、できるところからやっていくのが、ポイントのようですね。

三島:そうですね。保護者も保育士も最初から完璧を求めないで、できることからとにかく始める。それが大切です。

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今回は、ここまでです。次回は、各家庭の防災準備について話を聞いています。目からウロコが落ちるような役立つ情報もありますよ。

ご期待ください!





2008年9月16日(火)

カテゴリー: インタビュー・座談会

プロフィール

舟生 岳夫

セコム株式会社
IS研究所 所属

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