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タイトル - セキュリフェースインターホンの顔検知技術

 「セキュリフェースインターホン」とは、来訪者の顔の映り方で不審者を判別する独自の「顔検知機能」を搭載したインターホンである。 顔検知とは、顔や姿の隠蔽判別、すなわち帽子などで顔を隠したり、カメラの死角に隠れたりする不審な来訪者を判別する機能である。

 顔検知は、来訪時のインターホン画像を「人物領域抽出」「頭部候補抽出」「隠蔽判定」の3つの処理により、隠蔽の有無を判断する。インターホン子機が設置される多様な状況(天候、日照等)において、様々な来訪者を精度良く判別する必要性から、アルゴリズム開発においては耐環境性能の向上を主眼に取り組んだ。

 本稿では、顔検知の機能およびこれを実現する顔検知アルゴリズムについて紹介する。


目次
 

セキュリフェースインターホンの概要
  顔検知機能の概要
  顔検知機能の開発
  顔検知アルゴリズム
  まとめ
  関連リンク
 

講演・学会発表



セキュリフェースインターホンの概要

■セキュリフェースインターホン開発の背景

 住宅の玄関まわりの不安要素として、一昔前はいわゆる「ピンポンダッシュ」といった悪戯が流行っていたが、近年、住宅への侵入盗の下見における留守確認や押し込み強盗など、悪戯から犯罪へと凶悪化し、充分な警戒が必要な状況になっている。

 セコムではこのような犯罪を未然に防止する目的で、顔検知機能を内蔵したセキュリフェースインターホンを開発し、2003年11月より販売開始した。


■セキュリフェースインターホンの概要

 セキュリフェースインターホンは、顔検知機能以外にも、屋外の様子をカメラで監視することや、来訪者やカメラ画像を記録することができ、住宅における「近づきにくいセキュリティ」を実現する画像監視システムと言える。


 本稿では、セキュリフェースインターホンのメイン機能である「顔検知」にフォーカスして述べる。


顔検知機能の概要

■顔検知技術

 新たに開発した顔検知技術を、既存の顔検出・顔認証との比較により説明する。

 「顔検出」とは、画像中から顔の位置を特定する技術である。近年デジカメやプリンタに搭載される機種も増加しているが、画像の明るさ補正や焦点の調整を目的としている。

「顔認証」とは、顔が誰かを特定する技術である。一部実用化もされているが、アクセスコントロールや人物検索を目的としている。

「顔検知」とは、顔検出とも顔認証とも異なるユニークな技術であり、映っている顔が、人が見て誰か確認できる状態か否かを判別するものである。


■顔検知機能

 インターホンに顔検知を搭載することで、家の中から来訪者の顔が確認できる状態か否かを事前に判断することが可能となる。すなわち顔検知とは、顔や姿の隠蔽を判断する機能と言える。

図1 セキュリフェースインターホンの概要図1 セキュリフェースインターホンの概要図1 セキュリフェースインターホンの概要

 

図 1 セキュリフェースインターホンの概要

 

■顔検知の判定結果と動作

 顔検知では、来訪者の状況を3つに判別し、その判別結果に基づき、インターホンの鳴動パターンを変えることができる。

 

図2 顔検知の動作

図 2 顔検知の動作



■顔検知の効果

 インターホンの鳴動パターンを変えることの効果を、来訪者、室内(家族)の双方から述べる。

・来訪者への効果

  顔や姿を隠してインターホンの操作をしても、子機から固定メッセージが流れるため

    ○通常とは異なる反応(ピンポーンではなく音声)なので、悪意を持った来訪者は怯み、犯行を抑止できる。

    ○住人の応答の有無をみる留守確認はできない。

      ※別途「画像記録中」のシールを貼ることで、顔を記録されることを嫌う悪意を持った来訪者の行為を
        思いとどまらせることも可能。

・室内(家族)への効果

  来訪者の顔が確認できない状況の場合に、室内では通常とは異なるパターンで鳴動するため

    ○顔が確認できない来訪者を、モニタで確認し、慎重に対応できる。

    また鳴動させない(無音)とすることもできるため、

    ○そもそも対応しなくもできる。

    ○姿が見えずに気になって不用意にドアを開けるというリスクを低減できる。



顔検知機能の開発

■開発のアプローチ

・顔検知アルゴリズムの想定動作環境

 インターホンの子機カメラは屋外への設置が前提となる。よって得られる映像は日照や天候の影響を受けやすく、画像の品質は安定しない。このような屋外画像を対象とした認識アルゴリズムの性能を高めることは難しく、実用化された例はほとんどなかった。本開発では多様な条件下においても一定の顔検知性能を確保することを主眼とした取り組みをおこない、商品化を実現した。

・アルゴリズムの要件

 来訪者が子機ボタンを押下してからレスポンスを返す短時間の間に検知処理を完了させる必要性から、アルゴリズムは充分軽量なことが望まれる。

・アルゴリズム開発用データ収集

 屋外に設置するインターホン子機のカメラで取得される画像は、バリエーションが多岐に渡る。天候(晴れ、曇り、雨、雪)、日照(昼間、朝夕、夜、街灯)などといった環境の変化、来訪者のバリエーション(身長、服装の色柄、顔の装飾、髪型、持ち物(傘、手荷物))など多様な条件を網羅し、データ収集を実施した。


■開発手法

 顔検知の開発は、作成したアルゴリズムの性能を評価した上で課題を明確化し、更なる改良を加える、というサイクルが中心であった。このサイクルを効率化するため、評価用画像を蓄積・DB化し、シミュレーションにより性能が容易に算出できる仕組みを用意した。

 また性能的に目処がたった段階では、実機によるフィールドテストで最終的な調整を実施した。

 このように開発のフェーズに合わせて適切な評価手段を選択することで、高い開発効率を実現した。


顔検知アルゴリズム

■顔検知アルゴリズムの概要

 顔検知は、来訪者が玄関先で呼び出しボタン押下時の画像を取得・解析し、顔や姿の隠蔽を判断する。以下にアルゴリズムの概要を、処理に沿って解説する。

図3 アルゴリズムの概要

図 3 アルゴリズムの概要

 

STEP 1. 人物領域抽出

 先ず画像中から人の有無を判断する。予め保持した誰も映っていない状態の背景画像と子機呼び出しボタン押下時の画像とを比較し、得られるシルエットにより人の有無を判断する。屋外運用では、画像の輝度変化は日常的に生ずるため、輝度情報をベースとした方式ではなく、エッジ情報をベースとしたアプローチをとった。

 エッジ画像での単純な比較では、主に人物の輪郭のみが抽出されてしまうため、輪郭内を埋める処理を適用し、その結果を人物候補領域として出力する。

 

STEP 2. 頭部候補抽出

 人物領域の中から、頭部らしい候補領域を複数抽出する。頭部候補は、STEP1 で求めた人物領域内で楕円パターンの当てはめによって抽出する。楕円パターンも、輝度ではなく、エッジ情報をベースとした。

 

STEP 3. 隠蔽判定

 隠蔽の判定は、複数ある頭部候補領域に対し、頭部内の「素顔らしさスコア」を算出し、最もスコアの高い頭部候補のスコアが所定値以上であれば、顔の隠蔽はないと判断する。一方、どの頭部候補のスコアも所定値未満であれば、顔は隠蔽されていると判断する。

 隠蔽のない顔は、例えば目や口など横長の部位が多数を占める、肌色領域が多い、などの特性がある。このような特性を表現する特徴量を画像から複数抽出し、それらを元に素顔らしさスコアを算出する。特徴量として例えば縦/横エッジ強度の比率や、色相、輝度の平均や分散などから、環境変動にロバストでありつつも、隠蔽の有無を高精度に判断できるものを取捨選択した。素顔らしさスコアは、典型的な隠蔽顔や隠蔽の無い顔の特徴量との類似度を元に、統計的な手法により算出した。このスコアを閾値処理することで、顔の隠蔽の有無を判定する。


まとめ

 本稿では、セキュリフェースインターホンに搭載されている「顔検知」にフォーカスし、機能の概要およびアルゴリズムについて紹介した。アルゴリズム開発においては、顔認証や屋外センシングに関する技術およびノウハウを駆使することで、従来の画像認識技術では苦手としていた屋外フィールドでの商品化を実現した。


関連リンク
・顔検知機能付き画像監視システム セキュリフェースインターホン
http://www.secom.co.jp/service/hs/goods/interphone.html

     

講演・学会発表
徳見 修、 “顔検知機能付きインターホン「セキュリフェースインターホン」”,次世代センサ協議会 第19回センサ&アクチュエータ技術シンポジウム「センサ技術最前線2005」,Nov.2005

 

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