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タイトル - 人員配置スケジューリング技術とその応用

 病院やセキュリティ会社、コールセンターなどの交代制勤務の職場では、従業員・職員が快適に働けるようにするために、また人員を効果的に活用するという点から、適切な勤務の割り当てを行なった勤務表を作成する必要がある。実際の勤務表作成は、様々な条件を考慮しながら(通常)1ヶ月間の従業員・職員の勤務シフトを決めなければならないため、非常に手間と時間がかかる作業となる。そのため、コンピュータによる支援のニーズは高まっている。

 この勤務表作成を自動化し、勤務表作成者の負担を軽減するためのアルゴリズムの研究を行なった。研究成果は製品として販売されているほか、セコムの緊急対処員の勤務表作成にも利用されている。ここでは、IS研究所で研究されているアルゴリズムの特徴とともに、勤務表作成を自動化した際の効果についての議論を紹介する。


目次
 

人員配置スケジューリング問題
  アルゴリズムの研究
  勤務表作成自動化の効果
  その他の分野の勤務表作成
 

参考文献



人員配置スケジューリング問題

 勤務表を作成する際の「仕事を誰に割り当てると効率的か」という問題は、人員配置スケジューリング問題(ナーススケジューリング問題:NSP)と呼ばれている。これは人間にとってもコンピュータにとっても非常に難しい問題である。このため、病院など交代制で勤務を行なっている職場での勤務表作成は、熟練者が経験と勘に頼りに時間をかけて行うのが一般的となっている。

 人員配置スケジューリング問題に対して、すべての条件を完全に満たした解(最適解)を求める効率的な解法は存在していない。しかし実用上は最適解は必要ないので、なるべく多くの条件を満足したスケジュール(近似解)を、可能な限り速く求めるアルゴリズムを追求することになる。

 

アルゴリズムの研究

図1 e-革新すけじゅーる勤務表編集画面

図 1 e-革新すけじゅーる勤務表編集画面

 病院を例にとると、看護師の勤務表作成では以下のような様々な条件を考慮する必要がある。

  • 1日の中の条件:夜勤者は毎日3名必要、新人同士の組合せは回避
  • 1ヶ月間の条件:各看護師の1ヶ月間の夜勤回数を平均化
  • 勤務パターンの条件 :休みの翌日の深夜勤務をなるべく回避
  • 看護師の希望:有休の希望
  • etc

 IS研究所では、まずこの問題の数理モデル化に取り組み、上記のような様々な条件に勤務表がどのくらい適合しているかを表す評価関数を設計した。その上で、数理計画的な手法やメタヒューリスティックな手法を駆使し、この評価関数上で良い評価値が高速に得られるようなアルゴリズムを開発した。

 研究を重ねた結果、熟練した看護師長に比肩する勤務表が自動作成できるアルゴリズムとなり、現在では製品に組み込まれて多くの病院でご利用いただいている(「e-革新すけじゅーる」としてセコムトラストシステムズ(株)より販売中)。自動化により素早く解を出せたとしても作成された勤務表に多くの修正が必要になってはその作業に時間がかかり自動化の意味が薄れてしまうので、計算が速いだけでなく実用に耐えうる解が出せるかどうかが研究の重要なポイントとなる。

 さらに、このアルゴリズムは複雑多様な条件に対応可能な汎用性の高いアルゴリズムとなっているため、病院以外にも応用されている。たとえば、セコムでは、お客様に24時間365日絶え間なく安全のサービスを提供するために、緊急対処員や管制員などのスタッフが交代で監視を行っているため、看護師と同様に人員配置スケジューリングが発生している。セコムには、スタッフが勤務する拠点(事業所)が全国に1000箇所以上存在し、事業所ごとに所属スタッフの勤務スケジュールを作成する必要がある。ここでも、このアルゴリズムをセコムの勤務表作成に応用し、全国の事業所での勤務表作成の効率化に役立てている。また、このほかにもコールセンターへの展開も行なっており、汎用性の高さを示している。

 

勤務表作成自動化の効果

図2 全て手作業の場合の作業時間と削減率
図 2 全て手作業の場合の作業時間と削減率

 勤務表作成を自動化することで得られる効果としては、まずひとつに勤務表作成時間が短縮できることがあげられる。図2にあるようにすべて手作業で作成された場合と比べて多いときで9割以上の作業時間が削減されたケースもある。勤務表作成担当者の作業時間を軽減し、その分を他の業務に有効活用することができるようになる。また、条件により適合した勤務表を作成できるので、勤務を公平に割り振るなど偏りの少ない公平感のある勤務表を作成しやすくなるという効果もあげられる。

 さらに、自動化することでシフトそのものを柔軟に作成することができるようになり、人件費の削減が見込まれる。たとえば、コールセンターでは電話の呼量からその日に必要なスタッフの人数を時間毎に決定している。図3のようにシフトが2つの場合を考えると、電話呼量は時間毎に変化をしているので、シフトを割り振った場合スタッフを多めに配置せざるを得ない場合があり、無駄が発生する(図の赤い部分)。

 手作業で勤務表を作成する場合、多様なシフトを用いると作業負担が大きくなるが、自動化することで多様なシフトも扱えるようになる。シフトを図4のように細分化すると必要な人数に合わせたスタッフの配置ができるようになり、人件費の削減につなげることができる。

図3 電話呼量にあわせたシフト配置

図4 細分化したシフトによる配置

図 3 電話呼量にあわせたシフト配置 図 4 細分化したシフトによる配置

 このように、勤務表作成を自動化することにより、作業そのものを効率化するだけではない効果を生み出すことが可能になる。

 

その他の分野の勤務表作成

 上記にあげた病院、警備業やコールセンター以外にも、コンビニエンスストアのアルバイト店員のシフト表作成やホテルのスタッフのシフト表作成など、人員配置スケジューリング問題には様々なものがある。いずれの分野においても勤務表作成のシステム化の高いニーズがある。


参考文献

◎学術論文

  1. 長谷川精也, ”IP-based local search によるナーススケジューリング問題の近似解法”,電子情報通信学会論文誌, Vol. J89-D, No.10, pp.2251-2259, 2006

◎国際会議

  1. Seiya Hasegawa, Yukio Kosugi, ”Solving Nurse Scheduling Problem by Integer-Programming- Based Local Search”, IEEE International Conference on Systems, Man and Cybernetics, Proceedings #939(pp.1474-1480), Taipei, Taiwan, Oct. 8-11, 2006

◎国内学会・研究会

  1. 長谷川精也, 小杉幸夫, ”IP-based local search による交代制勤務表作成システム”, 電子情報通信学会オフィスインフォメーションシステム研究会, OIS2006-7, pp.37-42,2006
  2. 長谷川精也, 小杉幸夫, ”局所探索法と整数計画法のハイブリッドアルゴリズムによるナーススケジューリング問題のヒューリスティック解法”, スケジューリング・シンポジウム2006, 予稿集pp.105-110, 2006
  3. 須坂高行, 長谷川精也, 山田喜八, 木元達之助, ”師長の意思を反映させやすい看護師勤務表作成支援システムの実現”, 第23回医療情報学連合大会論文集,S-3B-1(CDROM),2003
  4. 長谷川精也, 工藤誠幸, 田内康之, ”作成時間を70%削減する看護婦勤務表作成支援システム”, 第19回医療情報学連合大会論文集, pp.330-331, 1999
  5. 長谷川精也, 田内康之, 工藤誠幸, 斉藤宗昭, ”勤務表作成へのコンピュータ利用による省力化効果”, 第18回医療情報学連合大会論文集, pp.510-511, 1998
  6. 長谷川精也, 山田喜八, 斉藤宗昭, ”婦長による協調介入を重視した勤務表作成システム”, 第16回医療情報学連合大会論文集, pp.646-647, 1996

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