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タイトル - 3次元建物モデルデータの応用技術

 近年、大型の建築プロジェクトにおいては、単に設計図を電子化するだけでなく、3次元の建物モデルデータとして、意匠、空調や照明等の設計、更に竣工後のメンテナンスや運用サービス等にも活用しようとする動きが活発になってきている。

 セキュリティ分野においても、センサーやカメラの最適な設置位置、出入管理計画等を建物の完成前に計算機上でシミュレーションできるため、セコムも3次元建物モデルを活用してより高度なセキュリティの提案・提供をより早く安く実現したいと考えている。

 本研究では、3次元建物モデルデータ標準規格であるIFC(Industry Foundation Classes)を基盤とし、形状と共に詳細な属性情報やシミュレーション結果を可視化する技術のプロトタイピングを行っている。本稿では、国内外の建築関係者に注目されている3Dデザインツール(Google SketchUp)へ、IFCデータを読み込むためのプラグインソフトウェアについて紹介する。


目次
 

はじめに
  3次元建物モデル標準IFCとは
  Google SketchUpを用いた3次元可視化技術
 

今後の展開

  参考文献

 

はじめに

 建築プロジェクトにおいて、3次元の建物形状に様々な建設プロセスの属性情報を付加して建物設計情報をデータ化するBuilding Information Modeling(以下BIM)手法が注目されてきている。従来は2次元をベースとしたCADデータにより設計情報が伝達されていたが、データ互換性、図面間整合性等に大きな問題が存在する。BIMにより、建築設計と構造・設備設計間の整合性向上、自動数量算出、各種シミュレーション等との連携が容易となり、建築プロジェクト全体の効率化が期待されている。更に、建物の竣工後のメンテナンスや運用サービス等にもBIMデータを活用しようとする動きが世界中で活発になってきている。このBIMに基づいた3次元建物モデルを、計算機上で表現するデータ標準がIFC (Industry Foundation Classes)である。

 

図1 従来手法とIFCを用いた設計情報共有の比較

図 1 従来手法とIFCを用いた設計情報共有の比較

 3次元建物モデルにより、セキュリティ用のセンサーやカメラの最適な設置位置を建物の完成前に計算機上でシミュレーションできるため、IFCを活用することによって、より高度なセキュリティの提案が可能になると考えている。近年、監視カメラや画像認識センサーの設置台数が増加してきており、将来は複数の大型建物に設置してある多数のカメラや移動ロボットからの映像を、少人数で対処しなければならなくなる状況が予想される。このようなセキュリティオペレーションをサポートするには、建物構造や空間ゾーンの詳細な情報、カメラやセンサー配置、過去の運用履歴や映像データ等をリアルタイムに検索し、人間に理解し易い情報として可視化する技術が重要であると考えている。

 

3次元建物モデル標準IFCとは

IFCの概要:

 IFCは非営利の国際組織IAI (International Alliance for Interoperability)によって策定された3次元建物モデルデータの標準規格であり、BIMデータをソフトウェア間で連携する際の標準データ規格として注目されている。2000年以降、海外においてIFCを活用した実証実験・実プロジェクトが行われてきており、2005年には国際標準の準ISO規格(ISO/PAS-16739)となり、標準規格としての地位を固めつつある。IFCは標準策定のフェーズを終え、実用化・普及の段階にあるといえる。筆者は、1999年よりIFC策定の中心的なIAI国際技術グループのメンバーとして活動すると同時に、IFCのソフトウェア実装、利活用促進のための働きかけを国内外で行っている。

 

従来のCADデータとBIMデータの比較:

 BIM手法では、建築物を建物要素(オブジェクトとも呼ばれる)単位で入力、表現することにより、個々のオブジェクトの形状、寸法、材質、質量、コスト等の性質をデータとしてコンピュータ上で扱うことが可能となる。BIMで扱われる建物要素として壁、柱、梁、ドア・窓、設備、空間等があり、これらがオブジェクト単位として情報化される。また、これら建物要素間の包含関係、たとえば壁と開口、建具の親子関係、所属階、部屋と部屋の連接関係もオブジェクト間のリンクとして扱うことが可能となる。IFCは、このようなBIM表現をクラスライブラリとして定義しており、ソフトウェア間における高度なデータ連携を可能とする。一方、従来の2次元CADによる図面データでは線や円弧といった形状要素のみしか含まれないため、ソフトウェアによる高度な利活用は困難である(図 2)。


図2 従来の2次元図面とBIMの表現するデータ内容の比較

図 2 従来の2次元図面とBIMの表現するデータ内容の比較

 

Google SketchUpを用いた3次元可視化技術

IFC可視化技術プロトタイプの一例(Google SketchUpへの変換):

図3 IFCと設備・セキュリティシステム情報(BAS)のマッシュアップ将来像

図 3 IFCと設備・セキュリティシステム情報(BAS)の
マッシュアップ将来像

 我々は、IFCデータの可視化技術プロトタイプとして、3DデザインツールであるGoogle SketchUp(スケッチアップ)上で動作するIFCデータ読み込みプラグイン(以下IFC2SKPプラグイン)を開発した。

 SketchUpは、Google社が提供している操作性がよい3Dデザインツールであり、フリーウェア版が全世界で普及している。SketchUp上の3Dモデルデータは容易にGoogle Earth上に取り込むことが出来ること、また、オブジェクト指向スクリプト言語RubyによるAPIを備えており、ユーザがSketchUpの機能を自由に拡張できることが大きな特徴である。

 IFCデータをSketchUp上へ取りこむことが出来れば、Google Earth上におけるマッシュアップ手法の活用が容易となる。例えば図 3に示されるように、IFCデータから得られる建物の形状、防災・防犯区画、設備機器等の情報と、現実世界で建物設備を管理しているBuilding Automation System(以下BAS)からリアルタイムで得られる情報を統合的に扱うシステムの実現が期待できる。


IFC2SKPプラグインの構成:

 図 4にIFC2SKPプラグインの構成図を示す。IFC2SKPプラグインは以下の3つの部分から構成されている。Ruby版IFCインターフェース、IFC2SKP Rubyスクリプト、およびIFCsvr ActiveX Component(以下IFCsvrコンポーネント)である。IFCsvrコンポーネントとは、IS研究所が2000年からフリーウェアとして国内外で公開しているIFCデータ入出力機能を提供するソフトウェアコンポーネントである。

図4 IFC2SKPプラグインの構成

図 4 IFC2SKPプラグインの構成

Ruby版IFCインターフェース 3次元建築CADから出力されたIFCデータを読み込むために、IFCsvrコンポーネントを使用している。IFCsvrコンポーネントはCOM(Common Object Model)オブジェクトなので、SketchUpのRubyインターフェースからは直接呼ぶことが出来ない。そこで、RubyのC言語拡張機能を利用して、COMラッパーを実装し、RubyへのIFCsvrコンポーネント組み込みを実現した。Ruby IFCクラスライブラリは、RubyスクリプトからIFCデータへアクセスするための基本機能を提供する。幾何計算ライブラリは、IFCデータの形状データをSketchUp上の建物要素オブジェクトへ変換する際に必要な幾何計算機能を提供する。
IFC2SKP Ruby スクリプト

この部分はRubyスクリプトで構成されており、SketchUp Ruby APIやRuby版IFCインターフェースを呼び出している。IFC2SKPプラグインのユーザインターフェース、変換処理の制御等が主な機能である。

 

エンドユーザが拡張可能なプラグイン

 Ruby版IFCインターフェースはバイナリ形式であるが、その機能はRubyクラスとして呼び出すことが出来るため、IFC2SKPプラグイン自身の機能拡張をRubyのプログラミングによって行うことが可能である。Rubyによる拡張をサポートすることにより、IFC2SKPプラグインは、他のSketchUpプラグインソフトウェアへのIFC入力機能の組み込み、シミュレーション結果の可視化等、IFCと様々なBIMアプリケーションとの連携を実現するプラットフォームの役割を果たす。

 

今後の展開

 今回開発したIFC2SKPプラグインは、IFC普及を促進するためにフリーウェアとして国内外のGoogle SketchUpユーザに公開する計画であり、現在は世界各地のIAIメンバーによりベータ版テストを行っている。テストユーザからのフィードバックにより、コンバータの性能向上や機能追加等を行う予定になっている。

 今後も国内外の企業・研究機関と連携しながら本研究の成果を展開するための活動を続けると同時に、セコムにおいても3次元建物モデルデータをセキュリティ分野のビジネスに有効に活用できるよう働きかけをしていく予定である。

 

参考文献
  1. 足達嘉信、高本孝頼、”オブジェクト指向3次元建物モデルによるIFCモデルサーバの必要性と構築技術”、日本建築学会、2004年第27回情報・システム・利用・技術シンポジューム
  2. Y. Adachi, Overview of partial model query language, 10th ISPE INTERNATIONAL CONFERENCE ON CONCURRENT ENGINEERING CE 2003
  3. Y. Adachi, Overview of IFC Model Server Framework, European Conference of Product and Process Modeling ECPPM 2002
  4. IFC Model Server Project: http://cic.vtt.fi/projects/ifcsvr/index.html
  5. SABLE Project
  6. 有限責任中間法人 IAI日本: http://www.iai-japan.jp/
  7. Google Earth: http://earth.google.co.jp/
  8. Google SketchUp: http://sketchup.google.com/
  9. オブジェクト指向スクリプト言語Ruby: http://www.ruby-lang.org/ja/
 ※Google はGoogle株式会社が保有している登録商標です。
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