開催レポート
第25回:テクノロジーで加速するセルフ化社会~新しい時代の善意とホスピタリティ

今回は、「テクノロジーで加速するセルフ化社会~新しい時代の善意とホスピタリティ」をテーマに、産業界の参加者とともに、多様な価値観で次代を彩る高専生/大学生も交えながら、世代を超えた「セルフ化」の価値観についてデザインワークショップ形式でディスカッションを開催しました。

2025 年問題/2030 年問題など人手不足が進行するなか、テクノロジーによって社会のさまざまなサービスのセルフ化も加速しています。会計、注文、配膳、施設利用、問合せ、検査、出会い、荷受け、など多くのセルフ化が進むなかで、利用者の善意に依存するセルフ化ソリューションと、利用者にとっての心地よさ/ホスピタリティとはどう交錯していくのでしょうか。価値観の変化と未来への期待を探るのが狙いです。

話題提供では、ATMによってお客様の「あったらいいな」を次々と実装してセルフ化を先導する㈱セブン銀行の松橋正明社長より、一般的なセルフ化の事例や課題をはじめ、セブン銀行のATMにおけるUX向上の背景・構想などをインプットいただきました。
続くワークショップでは、世代や背景、価値観や視点が異なる多種多様な参加者が、それぞれの視点から「セルフ化の体感値や今後の期待」について互いの価値観を共有しながら分野横断的に対話を深めました。新たな価値を生み出す新機軸なサービスや、影の部分を解消する仕組みなど、価値観や課題の本質を紐解きながら、未来の社会に繋がるアイデアに議論が展開しました。

開催概要

2024年2月29日(木) 17:00~20:00

話題提供者

  • 株式会社セブン銀行 代表取締役社長
    松橋 正明

    2003年セブン銀行入社(当時アイワイバンク銀行)。2009年にATMソリューション部長となり、その後、常務執行役員、専務執行役員などを経て、2022年6月に代表取締役社長に就任。セブン銀行にイノベーション文化を根づかせるべく、2016年に設立したセブン・ラボの初期メンバー。セコムのオープンラボにも、初期段階から頻繁に参加いただいている。

総合ファシリテーター

  • セコム株式会社 本社オープンイノベーション推進担当 リーダー / セコムオープンラボ総合ファシリテーター
    沙魚川 久史

    セコムでは、研究開発や科学研究助成事業責任者を経て、現在オープンイノベーションチームを率い、各種の新価値探索から「SECOM カンタービレ」「dot-i(ドットアイ)」など協働商品開発まで担う。イノベーション推進に向け「セコムオープンラボ」を主宰、挑戦的ブランド「SECOM DESIGN FACTORY」を立ち上げて展開中。社外では、東京理科大学客員准教授を経てフェロー、大学や国立研究開発法人、産学官コンソーシアムなどでも活動。主な著書に『知的財産イノベーション研究の展望(第5章)』(白桃書房)など。

当日の模様

今回は、「テクノロジーで加速するセルフ化社会~新しい時代の善意とホスピタリティ」と題して、多様な価値観で次代を彩る高専生/大学生と、金融や情報通信を始めとした様々な業種の産業界中心の参加者、約100名でデザインワークショップ形式でアイデアディスカッションを開催しました。

2025年問題/2030年問題など人手不足が進行するなか、テクノロジーによって社会のさまざまなサービスのセルフ化も加速しています。
会計、注文、配膳、施設利用、問合せ、検査、出会い、荷受け、など多くのセルフ化が進むなかで、利用者の善意に依存するセルフ化ソリューションと、利用者にとっての心地よさ/ホスピタリティとはどう交錯していくのか、多様な価値観を取り入れながら、未来への期待を探るのが今回の目的です。

冒頭、イントロダクションでは、多様な視座による価値観の探索とコミュニケーションを重視した「セコムの“共想”」と、セコムオープンラボが持つ意味、オープンイノベーションによって結実した新たなサービスなどをご紹介。今回のテーマに込めた背景について共有しながら、展望する議論のトーンを整えていきました。

今回は、「テクノロジーで加速するセルフ化社会~新しい時代の善意とホスピタリティ」というテーマにあわせ、ATMに対するお客様のニーズを次々と実装してセルフ化を先導する㈱セブン銀行の松橋正明社長より話題提供をいただきました。セルフ化の事例や課題をはじめ、セブン銀行のATMにおけるUX向上の背景・構想などの紹介がありました。松橋さまと沙魚川とで掛け合いをしながら、フロアの質疑に答えていく場面もあり、参加者全員で理解を深めました。

続くワークショップでは、51企業/官庁や大学・高専から約100名の参加者が、14グループに分かれてそれぞれの視座からディスカッション。ワークタイムを細かく区切り、議題を変えながら、一人ひとり異なるセルフ化の体感値や今後の期待について、様々な視座・価値観・専門性により議論が展開されました。日々のお困りごとや感情の変化を可視化しつつ、これから必要になってくる新たなニーズをもとにアイデア提案へと昇華させるアプローチです。

ワークショップの前半戦は、セルフ化に纏わる課題探索の時間帯です。セルフ化の体感値、メリット・デメリットについてそれぞれの主観や想いといった視点から課題を掘り下げ、発散させながら議論を進めます。
セルフ化はテクノロジーの進化に伴いの日々の生活において当たり前のものである一方で、それに纏わる感情や価値観の変化を見つめなおすことは意外に新鮮な体験です。背景にある感情や日ごろ感じるもやもや感などの非言語的メッセージを、多彩な切り口から可視化していきました。

今回の軽食には、テーマである「セルフ化」というキーワードにあわせて、“セルフサービス”をコンセプトに会場内にベーカリースペースを設置。コミュニケーションが進む議論の場を演出しました。

途中、コーヒーブレイクタイムには、参加者が大きく移動して他グループと交流し、更なる多様性を取り込みながら、マッシュアップを進めました。

コーヒーブレイクを挟んだ後のワークショップ後半戦では、前半で出てきたセルフ化の体感値の発散具合・分散度合いを参考にしながら、グループ毎にセルフ化の未来や新しい当たり前につながるサービス・アイデアを提案。影の部分を解消する仕組みなど、価値観や課題、その裏にある感情を丁寧に紐解きながら、未来の社会に繋がるアイデアに議論が展開されました。

ここで出てきた、幾つかの興味深いアイデアを簡単にご紹介します。

  • 子供や介護が必要な方でも安心して一人でのんびり入浴できるセルフお風呂「セルふろ」。
  • 鮮度に応じて動的に価格が変化するダイナミックプライシングと生産ルートとから同じ野菜でも値段設定が異なりつつ、自動認識で無人精算できる自動レジ八百屋「ベジタル」。フードロスにも貢献する。
  • 人には言えないけど、実は興味があることはある。でも人手の有償サービスを受けるにはハードルが高い。であればまずこっそりセルフサービスで体験してみようというニーズを叶える「はじめてのとびら」。
  • セルフ化により減った”対人で感じる温かみ”を取り戻すアプリ「マッチング家族」。あえて知らない人の方が悩みも打ち明けやすく、適度な距離感を保てるので、いろんな家族とマッチングできるといい、というニーズ。
  • 人との付き合いが薄い(苦手、スマホ主体)ユーザーが大切なひとや組織での関係構築のために、思いやりや絆づくりを促すコミュニケーションサポートAIアプリ。
  • 自分のスマホのカレンダースケジュールからお店やチケットの予約手配をする秘書機能、自分(AI)コンシェルジュ。
  • 薬のための通院が面倒、人にも会いたくない。花粉が飛んだら自動で診断/処方箋が発行され、花粉症の薬が飛んでくる花粉症対処セルフサービス。

ワークショップ後には、大判のアイデア整理シートに各テーブル内での議論と提案アイデアをまとめ、その成果を発表して参加者全員でシェア。
参加者全員による投票を行い、もっとも多く共感を集めたグループを「最優秀共感賞」、次点を「優秀共感賞」として表彰しました。賞に選ばれたグループのメンバーには、それぞれにセルフで食べる、無印良品の「レトルトカレーセット」を副賞としてお贈りしました。

今回のセコムオープンラボは、テクノロジーの加速により多分野で普及するなか「セルフ化」をキーワードに、ニーズや普段感じている課題感、違和感などの非言語化メッセージを可視化し、共有することで、対話を深めていきました。全く異なる視座・価値観を持つ者同士の意見が交差することで、数多くの興味深いアイデアが次々と生み出され、参加者間で多くの気づきと新しい交流が生まれる場となりました。

ここで議論されたアイデアや、多種多様な視座からの未来像や課題感は、セコムを含め、参加者それぞれが持ち帰り、各々の視点から新たな“気づき・きっかけ”として活用いただけることと思います。この場を起点に、みなさまの想いが更に高まり、新たな創発が起きていくことを期待しています。

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