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春のどか雪の季節
3月の声を聞き、三寒四温で春めいてくる頃となりました。一方、春の初めは太平洋側で雪が降りやすい季節でもあるため、まだまだ雪に対して油断はできません。いわゆる「春のどか雪」です。首都圏では、雪のたびに電車の遅延など交通機関に乱れが生じ、人々の生活が影響を受けます。実際、先週末に北日本では暴風雪で大きな被害が出てしまいました。
首都圏でも、雪のたびに電車の遅延など交通機関に乱れが生じ、人々の生活が影響を受けます。首都圏の雪は全国ニュースで流れることも多いため、雪国には、なんであれっぽっちの雪で大騒ぎをするのだろうと思っている人もいるのではないかと思います。雪国では、首都圏と比べて多くの雪が降るにも関わらず、それによって人々の生活が大きく乱れることは少ないからです。
雪対策がされる雪国に対し
実際、雪国では降雪に備え多くの対策がされています。除雪車や融雪装置などが準備され、雪が降ったときにすぐに出動できるようになっているということです。また、そこで生活する人々も雪が降ることに慣れており、降雪を織り込んで日々の生活を送っています。そのため、多少の雪が降っても生活への影響が少ないのです。
一方、あまり雪が降らない首都圏では、積極的な降雪対策がされることは多くありません。人々も雪に慣れておらず、雪国では常備が当たり前の「雪かき」(除雪具)を家に置いている家庭もそんなには多くはないでしょう。そのため、雪が降るたびに大騒ぎになりますが、降雪の頻度とその影響を考えると、これはこれで仕方ないと言えるでしょう。
リスクの評価と対策
損失発生のリスクは「損失発生の確率と、発生する損失の大きさの積」で評価されるのが普通です。雪国では、雪が降る確率が大きくかつその影響が無視できない大きさとなるため、行政、そしてそこで生活する人々は、相当のコストをかけて積極的な降雪対策を行っています。雪国において、多少の雪が降っても人々の生活が大きく乱れることが少ないのは、降雪というリスクに対する対策がされているからと理解できます。
実は首都圏でも考えられている
さて、ここで首都圏のことを考えてみます。実は、首都圏においても降雪というリスクに対する対策、すなわちリスクマネジメントはなされているのです。リスクマネジメントは、最適なコストで、リスクによる損失をできるだけ小さくする対応手法です。首都圏では、降雪というリスクに対し「あえてコストをかけて対策をしない」というリスクマネジメントを行っているのです。
除雪車や融雪装置の準備とその運用には相当なコストが必要です。このコストと、雪が降る頻度そしてその影響を考えると、あえて対策をしない方がより合理的なのです。この考え方を「リスクの保有」と言います。すなわち、首都圏では降雪というリスクに対し「リスクの保有」というリスクマネジメントを行っていると言えるのです。
あえて「ことを起こさない」という対策
「リスクの保有」というリスクマネジメントは、リスクを放置するというのではありません。リスクをきちんと見て分析し、費用対効果を考えたうえで、「あえて『具体的な対策をしない』という選択肢を選んでいる」ということです。「想定していないこと」と、想定したうえで「ことを起こさない」ことは、表面上は同じに見えても、まったく性質が異なります。
想定されるすべてのリスクに対して、万全の対策ができるのが理想であることはもちろんです。しかし、通常の場合、リスク対応に費やすことのできる予算や人員等のリソースは限られています。リスクをリスクと認めて、あえて具体的行動をしないというリスクマネジメントの手法があるということも覚えておいて頂ければと思います。
セコムIS研究所
リスクマネジメントグループ
甘利康文
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