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ひったくりの急増とその本質的対策

 昨年末、本コラム(「社会の雇用環境と犯罪件数の関係」)で「犯罪発生件数と失業率の間に強い相関性がある」ことについて述べ、「今後、防犯を考えるにあたり、失業率と犯罪が大いなる関連があることを十分に注意して対策を考えていくことが重要になってくる」と結びました。

 総務省の労働力調査速報の月次報告では、今年に入ってからの失業率は1月に4.1%だったものが4月には5.0%になっている状況で、連続して増え続けています。一方、犯罪の方を見ると、つい最近警察庁が発表では、たとえばひったくりでは、神奈川で70%、東京で55%増えているとの指摘がなされています。

 ひったくりは、家に侵入して金品を取る泥棒とは異なり、特殊な道具や技術が必要なく、かつバイクなどで追い越しざまにひったくる手口では被害者に顔を見られることも少ないため、簡単にできる犯罪の代表といえます。従って、経済状況が悪化し、失業率が増えてお金に困る人が増えてくると、まずは手軽にできるこの手の犯罪から件数が伸びてくると考えることができます。

 ひったくり被害者の9割以上を女性が占めています。女性は体力がないために狙われやすいとも言われますが、男性は高齢になって体力が衰えたとしても、狙われにくいのです。ここから、ひったくり被害に女性が多いのは、女性の体力が相対的に弱いことが原因ではないのではと考えられます。もし体力が原因なのであれば、男性も加齢で体力が衰えたらひったくりのターゲットになるはずです。でも現実はそうはなっていません。

 筆者は、ひったくり被害者の9割以上を女性が占めるのは、女性のファッションにその理由があると考えています。一般に、女性の服には収納がありません。従って、女性は財布などの貴重品をバッグに入れて持ち歩かざるを得ないのです。ひったくり犯にとっては、女性のバッグをひったくりさえすれば、そこにほぼ間違いなく財布が入っていることが期待できる状況と言えます。男性の服には収納が沢山あるため、たとえカバンをひったくったとしても、必ずしもそこに財布があるとは限りません。これが「ひったくり被害者の9割以上を女性が占める」主な理由と考えてほぼ間違いないのではと思います。

 女性が、ひったくりの脅威から本質的に解放されるためには、女性のファッションにおいて、財布がどこにあるか分からなくすることが必要であると考えています。この対策は、アパレル業界の協力と、女性自身の意識改革なしにはできることではありません。たとえば、建築業界の協力によって泥棒に強い家ができたように、女性のひったくり被害を少なくするためには、一見防犯には関係ないように見えるアパレル業界、そして女性自身の啓発のためファッション関係の出版業界の協力が欠かせないと思っています。

(参考)
女性のためのあんしんライフnavi「女性がひったくり被害にあわないための具体的対策」

このホームページに述べてある対策に加えて「バッグを右に持ち、道の右側を歩く」という対策が考えられます。これだけで「単独犯で、バイクを使って追い越しざまにバッグをひったくる」犯罪を、やりにくくなります。バイクのアクセルはハンドルの右側にあるため、ひったくり犯は右手をハンドルから離すことができないからです。

総務省統計局「労働力調査」

セコムIS研究所
セキュリティコンサルティンググループ
甘利 康文

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