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メキシコで発生した新型インフルエンザが急速に世界に広がり、ついに日本でも発病が確認されて、隔離に準ずる措置をとるケースが発生しています。今回はリスクマネジメントの立場から、この新型インフルエンザに対して考えてみたいと思います。
ニュースでは、連日、新型インフルエンザへの感染疑い例、感染が確認された患者の数、そして死者の数を報道しており、それにより恐怖を感じている人も多いかと思います。また、疑い例が、新型ではなく従来からの季節性インフルエンザと判明するたびに、まわりの人々が胸をなで下ろしている状況が報道されています。
しかしながら、従来からの季節性インフルエンザでも、日本でも毎年数千人、世界では数十万人という数の死亡者が出るのです。それなのに世の中では、季節性インフルエンザで命を失った場合はほとんど報道されず、新型インフルエンザの場合は大ニュースとして報道されるという状況が展開しています。
専門家の間では、今回の新型インフルエンザは、症状が比較的軽いこともあり、早期に治療を開始すれば現代の医学で十分に対応可能であると言われています。その意味では、今回の新型インフルエンザは従来の季節性インフルエンザとあまり変わらないのです。
従来からの季節性インフルエンザと新型インフルエンザの一番の違いは、人々が免疫を持つか持たないかという点にあります。そのため、新型インフルエンザの方が、流行すると患者数が爆発的に増え、その中からある割合で重症にいたる人や、命を失う人が出てきます。また、患者数が一時に集中して爆発的に増えた場合、医療体制が追いつかなくなる点も憂慮すべきことです。これらが、今のところ新型インフルエンザに対して一番注意すべき点になるかと思います。
新型インフルエンザという言葉が、まったく新しい感染症を想起させ、世の中全体において、人が本能的に持つ「未知のものへの恐怖」(バージンバイアスと呼ばれます)が引き起こされています。先にも述べましたが、感染症の専門家の間では「知識のワクチン」という言葉がよく使われます。人が、経験したことのないリスクに対しては、過剰反応しがちな本能を持つ動物であることを肝に銘じ、正しい情報を得て的確に対応することが、パニックにならずに自らを守る、一番大切なことです。
本コラムでも述べているように、人は、自らが不安を感じる何らかの事態に対応しようとするとき、できることは三つしかありません。一つ目は、「事態そのものを起きにくくする対策」、二つ目は、万が一その事態が起こってしまった場合でも「被害の拡大を防ぎ、最悪の状況に至らないようにする対策」、そして三つ目は、たとえその事態が発生し被害を被った場合でも「金銭的な窮地に陥らない対策」です。
三つ目の対策は金銭的なものなので、今回は除くとしても、新型インフルエンザへの対策もこの原則から外れるものではありません。マスクや手洗い、できるだけ早い時期のワクチンの接種(開発され次第ですが)などによって「事態そのものを起きにくくする対策」をしたうえで、「被害の拡大を防ぎ、最悪の状況に至らないようにする対策」として、居住地周辺の発熱外来や保健所などを確認しておくことです。また、勤務先や子ども学校などの対策を確認し、これらと連携することも重要になります。
日本ではこれから暑い季節に入ることもあり、インフルエンザ全般の流行は一時的に落ち着いてくるものと思われます。やがて来る秋冬のインフルエンザシーズンに向けて、ある程度の時間稼ぎができるということです。政策レベルで、個人レベルで、その間に十分に準備することが大切です。新型インフルエンザという新しい脅威に対しても、恐れすぎず、正しい情報を入手し、人ができる最善を尽くしてきちんと対応する。我々には、今まさにこのような態度が求められています。
セコムIS研究所
セキュリティコンサルティンググループ
甘利 康文
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