写真:今回の食材

「香り松茸、味シメジ」と言われる高級品

独特の芳醇な香りで「香り松茸、味シメジ」と称される松茸。古くは万葉集に登場し、最盛期の1941年(昭和16年)には流通量が12,000トンにのぼるほど、日本人にとっては身近な食材でした。しかし、約60年後の2012年にはわずか16トンと、なんと750分の1にまで激減。これは松茸が育つ環境の変化に原因があります。松茸は里山のアカマツなどの根元に生えますが、昔は松の枝は燃料に、落ち葉は肥料にそれぞれ利用していたため、山には適度に人の手が入り、松茸にとっての生育環境が整っていました。しかし、燃料・肥料が時代とともに変化し、近年、山は放置されて荒れるようになり、松茸が育つ土壌ではなくなってしまいました。また、虫による松枯れ病の蔓延も追い打ちを掛け、今では国産松茸は貴重な高級品となっています。

手頃な輸入松茸を楽しもう!

国産松茸が希少になるにつれ、輸入松茸の流通量が増えてきました。輸入松茸は国産物に比べ香りが落ちると言われていますが、これは輸送に時間がかかることで鮮度が落ちるのと、検疫通過のために洗浄することが原因です。しかし、値段は国産物に比べて手頃なので、気軽に松茸の風味を楽しみたい時には上手に利用しましょう。中でも流通量が多いのは、中国・韓国産。国産の松茸と同じ種類で、味・香りともに似ていると言われています。また、増えているのがスウェーデン・フィンランドなどの北欧産で、味・香りとも国産物と遜色なく、DNA解析の結果、国産物と極めて近いことが判明しています。アメリカ・カナダなどの北米産は、白っぽい色で食感はやや柔らかめ。国産物とは種類は異なりますが、香りは強く形も大きめなので、パスタや天ぷらに向いています。

写真:今回の食材

松茸が好きなのは日本人だけ!?

松茸の独特の香りは、「マツタケオール」「桂皮酸メチル」と呼ばれる成分で、食欲増進の作用があると言われています。この香り成分は化学的な合成にも成功していて、「マツタケエッセンス」の名で市販され、松茸ご飯の素やお吸い物の素にも使われています。しかし、この香りを好むのは日本人のみで、欧米人にとっては「靴下のニオイ」とも言われて不評のようです。松茸にはキノコ類に豊富な食物繊維をはじめ、血行改善に作用するナイアシン、体内の余分な塩分を排出し血圧上昇を予防するカリウムなどが比較的多く含まれています。

香りの命は2~3日!急いで食べるべし!!

松茸を選ぶときは、まずは軸を見ます。太く硬いものが良品で、フカフカと柔らかいものは虫食いの恐れがあるので避けましょう。また、表面が乾いているものは香りが飛んでいる可能性があるので、湿っているものを選びます。カサは開ききっていない「つぼみ」の状態のものが食感も味もよく、価格も一番高い高級品です。カサがほとんど開いている「開き」は香りが強いので、松茸ご飯にすると良いでしょう。松茸の香りは収穫後2~3日で飛んでしまうと言われているので、できるだけ早く食べることが一番のポイントです。

スペシャリストが直伝!美味食材アドバイス

写真:藤森明子さん


スペシャリストが直伝!
美味食材アドバイス

代表的な秋の味覚である松茸。国産品は希少なものになってしまいましたが、収穫量が少ないながらも、春から夏にかけての雨が多く、残暑もそれほど厳しくない年は、豊作になることが多いと言われています。キノコ類全般に言えることですが、食べるときはできるだけ水洗いせず、濡れ布巾で拭く程度にするのが風味を保つコツ。調理する直前にカットするようにしましょう。カットするときは、包丁を使うよりも手で裂いた方が香りが立ちます。

写真:藤森明子さん

藤森明子さん

食品メーカーに勤務後、料理教室の講師を経験。その後は栄養士として勤務。
1995年に管理栄養士を取得。
現在はマダムマーサ・クッキングスタジオや調理師専門学校の講師、食品メーカーの試食作り、食育イベント、保健指導などで活躍中。

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