「トロ」人気が高まったのは戦後以降

刺身や寿司ネタとして欠かせない鮪。縄文時代の貝塚から骨が出土されるほど古くから食べられていますが、鮮度が落ちると味も落ちるため、保存ができなかった時代は「仕方なく食べる」庶民の食べ物でした。寿司ネタとして人気が出始めたのは江戸時代から。赤身をしょう油に漬ける「ヅケ」が好まれ、脂の乗ったトロは傷みやすいこともあり、価値がない部位でした。トロの人気が高まったのは、冷蔵庫が登場し、流通が発達した戦後以降。現在では、赤身は比較的手頃な値段ですが、トロは驚くほど高い値段で取り引きされています。

世界的人気の高まりで鮪不足に!?

日本人は鮪が大好きで、世界の鮪漁獲量の約半分、刺身に向いたクロマグロは80%近くを消費していると言われています。しかし、近年は日本以外でも鮪が人気で、1990年代には台湾で、2000年以降は中国で人気が高まり、さらに欧米でも「Sushi」ブームで鮪の需要が増えています。そのため、乱獲による鮪資源の枯渇が問題視されるようになりました。そのような流れから、稚魚を捕獲して育てる「畜養」と呼ばれる養殖が盛んに行われるようになり、ここ10年で養殖鮪の出荷量は約5倍に増えています。また、難しいと言われてきた完全養殖鮪も、研究の成果で、少しずつ流通するようになっています。

赤身とトロでは、栄養的にも大違い!

赤身とトロでは味わいがまったく違うように、栄養価やカロリーでも大きな違いがあります。赤身は高タンパク低脂肪のヘルシー食材。カロリーはトロの半分〜1/3程度です。筋肉増強や疲労回復などに欠かせない必須アミノ酸で構成された良質なタンパク質の他にも、不足すると貧血になる鉄分やビタミンB12が多く含まれています。一方、トロに豊富に含まれる脂は、脳細胞の成長を促すと言われるDHAや、血液サラサラ効果があり動脈硬化予防で知られるIPA(EPA)などの不飽和脂肪酸。特にDHAの含有量は魚類の中でもトップクラスです。DHAとIPAには、コレステロール値を抑制するなど、身体にうれしいさまざまなはたらきを期待できますが、脂が乗っているぶん高カロリーなので、食べ過ぎに注意してください。

家庭での冷凍保存は不向き

鮪の刺身用サクを買うときは、きれいな赤色をしているもの、ドリップ(液体)が出ていないものを選ぶようにしましょう。スジは入っていないものがベストですが、鮪の中心部分の希少部位なので、なかなか見つけることができません。スジが入っている場合は、平行に入っているものが良く、木目のような楕円状に入っているものは避けます。切る時は、スジを断ち切るように垂直に包丁を入れましょう。多く手に入った場合は、しょう油とみりんを1:1にした漬け汁に漬け込んで「ヅケ」にすると、2〜3日持ちます。家庭用冷凍庫では鮪の冷凍に向く低温に達しないので、冷凍保存は避けた方が無難です。

スペシャリストが直伝!美味食材アドバイス

写真:藤森明子さん

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美味食材アドバイス

鮪はトロのほうが人気も価格も高いですが、栄養的には低脂肪の赤身の方がオススメ。タンパク質や鉄分のほかにも、味覚を正常に保つ亜鉛、血行を促進するナイアシン、肝臓のはたらきを助けるタウリンなどが含まれています。また、血液中の成分ミオグロビンが空気に触れると酸化して色が悪くなり、風味も落ちるので、しっかりとラップをして空気に触れないように冷蔵庫に入れましょう。

写真:藤森明子さん

藤森明子さん

食品メーカーに勤務後、料理教室の講師を経験。その後は栄養士として勤務。
1995年に管理栄養士を取得。
現在はマダムマーサ・クッキングスタジオや調理師専門学校の講師、食品メーカーの試食作り、食育イベント、保健指導などで活躍中。

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