風情あふれる川魚の代表格

川魚の中でも高級食材として親しまれている鮎。美しい流線型の姿と、香り高い味わいは、古くから日本人にとっては魅力的な存在で、その歴史は古事記にまでさかのぼることができます。神前に供え、戦況や農作物収穫の占いにも用いられたことから「鮎」の漢字が作られたと言われ、他にも独特の香りを持つことから「香魚」、1年で一生を終えることから「年魚」の漢字があてられることも。秋に川の下流で産卵・孵化し、海に下ってプランクトンを食べ、春に再び川を上がってきます。川ではコケを主に食べ、上流ほど水の汚れも少なくコケの質も良いので、上流で獲れる鮎ほど香り高くおいしいと言われていますが、天然物は非常に貴重。店頭に出回るものは、完全養殖か、卵を孵化させて稚魚に育て放流した準天然物がほとんどです。

「土用鮎」の夏が旬!

天然の鮎は希少な資源となりつつあるため、産卵期〜成長期にあたる11〜5月は禁漁期間。6月の解禁日は、その様子がニュースとなるので注目を集めますが、鮎の旬は成熟して「土用鮎」と言われる7〜8月。漁法は主に投げ網が用いられますが、縄張りを持つ習性を利用し、おとり鮎を使って一本釣りする「友釣り」や、岐阜県の長良川などでウミウを使った「鵜飼い」で鮎を獲る風景は夏の風物詩となっています。秋の産卵期を迎えて川を下る鮎は「落ち鮎」と呼ばれ、「簗(やな)」を立てて獲る昔ながらの漁法が知られています。

ビタミンやミネラルをバランス良く含むヘルシー食材

コケを食べて育つ天然の鮎に比べて、人工のエサで育つ養殖の鮎は香りが薄いのが難点。しかし、脂が乗っていて天然物にはないおいしさがあります。この脂には、不飽和脂肪酸のDHAやEPAが含まれていて、その含有量は天然鮎の約3〜5倍と言われ、生活習慣病の予防が期待できます。また、皮膚や粘膜を丈夫にして風邪予防に欠かせないビタミンAや、カルシウムの吸収を促進することで丈夫な骨や歯を作るビタミンDも、養殖鮎は天然鮎よりも豊富に含まれています。もちろん、天然鮎もさまざまなビタミンやミネラルがバランス良く含まれ、脂質が少ない分低カロリーなヘルシー食材です。

捨てるところのない美味の宝庫!

鮎といえば、塩焼き。串に打たれた鮎が、炭火で頭を下にして焼かれているのを産地などで見ることがありますが、これは理にかなったもの。頭を下にすることで身の余分な脂が頭にたまり落ちることで、身はふんわりと柔らかく、頭はカリッとから揚げのように食べることができるのです。また、鮎は骨が比較的柔らかいのが特徴で、骨ごと薄く輪切りにした刺身の「背濃し(せごし)」や、丸ごとから揚げや天ぷらにしてもおいしいもの。内臓を塩漬けにした鮎の塩辛「うるか」も珍味として人気です。店頭で鮎を選ぶときは、全体に黄褐色でまだら模様がハッキリしているもの、腹がしっかりとしているものを選び、十分に加熱して食べるようにしてください。

スペシャリストが直伝!美味食材アドバイス

写真:藤森明子さん

スペシャリストが直伝!
美味食材アドバイス

夏の高級食材として人気の鮎。養殖物がほとんどですが、生育技術の発達でおいしい鮎が身近な存在になってきました。鮎はビタミンやミネラルがバランス良く含まれている食材ですが、身体を作るのに欠かせないたんぱく質も非常に豊富。100g食べるだけで、成人が1日に必要とするたんぱく質の4分の1を摂取することができます。また、骨ごと食べることが多いので、カルシウムもたっぷり。見た目の美しさや風情だけでなく、中身もしっかり詰まった優秀食材です。

写真:藤森明子さん

藤森明子さん

食品メーカーに勤務後、料理教室の講師を経験。その後は栄養士として勤務。
1995年に管理栄養士を取得。
現在はマダムマーサ・クッキングスタジオや調理師専門学校の講師、食品メーカーの試食作り、食育イベント、保健指導などで活躍中。

  • 前へ
  • 次へ