神様に捧げられる聖なる食材

写真:アワビ

コリコリとした独特の食感で、高級食材として知られるアワビ。巻き貝の一種で浅い岩礁域に生息し、縄文時代の貝塚から貝殻が発見されるほど、日本では古くから食用とされてきました。神様に捧げる祝事の進物として用いられ、縁起の良い食材としても知られています。現在のお祝いごとに使われるのし袋の「のし」とは、もともとアワビを薄く切って乾燥させたものです。
日本の食文化に欠かせないアワビですが、乱獲と環境変化の影響で、漁獲高は激減。特に天然アワビは貴重品となり、高値で取引されています。


刺身でおいしい「クロアワビ」「エゾアワビ」

日本で一般的に流通しているアワビは、「クロアワビ」「エゾアワビ」の2種。クロアワビは15〜20cmほどに成長し、茨城県南部から九州まで暖かい海に生息しています。身がしまってコリコリとした食感で、磯の香りやうまみがあり、最高級のアワビです。エゾアワビは10cmほどの大きさで、やや小型ですが、クロアワビに匹敵すると言われるおいしさ。寒冷な海に生息し、北海道から東北にかけて獲れ、特に三陸地方が名産地として有名です。
20cmほどの「メガイアワビ」、30cmまで成長する大型の「マダカアワビ」は、身が柔らかく、独特のコリコリとした食感があまり感じられないので、刺し身よりは加熱調理向き。酒蒸しや煮貝に向いています。

写真:アワビ

若々しさを保つコラーゲンが豊富!

アワビは古くから栄養価の高い食材として知られ、中国では不老長寿の妙薬とされ、薬用としても使われてきました。アワビのエサとなる海藻類に含まれるミネラルが豊富で、特に正常な味覚や嗅覚の形成に関わり、子どもの発育に不可欠とされる亜鉛、貧血予防になるが豊富に含まれています。また、肝機能を高めると言われるタウリン、体内の余分な塩分を排出するカリウム、皮膚や粘膜を強くするビタミンAも豊富です。さらに、たんぱく質の一種コラーゲンも豊富に含まれています。コラーゲンには、皮膚や骨を若々しく丈夫に保つはたらきがありますが、40代以降は体内生成量が少なくなると言われているので、積極的に食品から摂取する必要があります。

光に弱いので要注意!

アワビを選ぶときは、手に取ると身がウネウネと動き、水槽にいる場合は壁に張り付いて取りにくいものが良品です。夜行性で光に弱いので、ライトアップされたような明るいところに長時間陳列している場合は、鮮度に注意しましょう。保存するときは、塩水に濡らしたキッチンペーパーや新聞紙で包み、ボールや深い容器に殻を下にして入れ、冷蔵庫の野菜室で保存すれば、2〜3日はもちます。冷凍する場合は、身、肝、ヒモをそれぞれ分けて、密閉袋に入れて保存します。冷凍したものは加熱してから食べるようにしましょう。

スペシャリストが直伝!美味食材アドバイス

写真:藤森明子さん


スペシャリストが直伝!
美味食材アドバイス

古くから味の良さが知られ、縁起物としても重宝されてきたアワビ。海から遠い内陸部でも愛され、丸のまま煮付けた「アワビの煮貝」は、山梨県の特産品です。中国では干しアワビを「乾鮑(カンパオ)」と呼び、ツバメの巣、フカヒレと並ぶ3大高級食材とされています。干すことでうまみと風味が凝縮し、戻した時には身は噛めば噛むほどに味わい深く、戻したスープは風味豊かで独特の味わいがあります。

写真:藤森明子さん

藤森明子さん

食品メーカーに勤務後、料理教室の講師を経験。その後は栄養士として勤務。
1995年に管理栄養士を取得。
現在はマダムマーサ・クッキングスタジオや調理師専門学校の講師、食品メーカーの試食作り、食育イベント、保健指導などで活躍中。

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