写真:ふぐふぐを食べると「お家断絶」?

冬のごちそうとして、美食家に愛されてきたふぐ。日本での歴史はとても古く、2万年前の縄文時代の貝塚から、多数のふぐの骨が見つかっています。しかし、「ふぐは食いたし、命は惜しし」との言葉があるように、猛毒を持っていることでも知られ、豊臣秀吉が朝鮮出兵の際に立ち寄った下関で兵士が大量に中毒死したことから、ふぐの禁止令が出されました。江戸時代でも禁止令は続き、ふぐを食べると「お家断絶」などの厳しい処分が出されました。しかし、武家以外では食べられていて、味の良さが評判で多くの句や川柳が残されています。
養殖も盛んで1年中流通しますが、旬は冬特に味が良いとされる天然のとらふぐは、養殖ものの10分の1程度の流通量と貴重で、高値で取引されています。

下関は産地ではなく、集積地!

ふぐの名産地として思い浮かぶのは、山口県の下関市。しかし実は、天然・養殖もの、いずれも下関産はあまり多くありません。秀吉の時代から続いたふぐ禁止令が、まず最初に山口県限定で解除されたこと、漁場だった玄界灘や瀬戸内海に近かったことなどから、有毒部分を取り除く「身欠き(みがき)」の技術が発達し、ふぐの加工業者が下関に集結しました。現在、天然とらふぐの水揚げ量が多いのは東海地方ですが、その80%が下関にいったん集められ、そこから各地に出荷されます。養殖は九州地方で盛んです。

コラーゲンたっぷりのヘルシー食材

写真:ふぐふぐは高たんぱく低脂肪のヘルシー食材。たんぱく質は白身魚の中でも含有量が多く、繊維質もしっかりしているので、身には歯ごたえがあります。うまみ成分のグルタミン酸やイノシン酸も豊富で、鍋にするとうまみがスープに溶け出すので、鍋の締めのふぐ雑炊は絶品です。血管や心肺機能を強くするタウリン、体内の余分な塩分を排出するカリウムも豊富です。
また、ふぐのたんぱく質にはコラーゲンが多く含まれます。コラーゲンには皮膚や骨を強くしたり、肌や目の角膜にうるおいを与えるはたらきがありますが、加齢とともに体内でコラーゲンをつくる力は弱くなります。コラーゲンたっぷりのふぐは、美肌や関節の痛みの緩和に役立つ食材です。

大阪人の大好物!「てっさ」「てっちり」

ふぐを刺身にするときは、1~2日ほど寝かせてからごく薄く切り、皿に盛り付けていきます。薄く切るのは、ふぐは繊維質が豊富で弾力があるので、厚みがあると噛み切りにくいためです。ふぐ鍋には、一般的には刺身を取った後のアラを使います。スープは淡白な味わいながら、コラーゲンなどの成分が溶け出し、ふぐのうまみで野菜や雑炊がとてもおいしくいただけます。口の部分は「さえずり」と呼ばれ、特に美味とされています。
関西では、ふぐを「てっぽう」と呼び、刺身を「てっさ」、鍋を「てっちり」と言います。大阪はふぐが大好きな地域で、全国の6割を大阪で消費していると言われています。

スペシャリストが直伝!美味食材アドバイス

写真:藤森明子さん


スペシャリストが直伝!
美味食材アドバイス

淡白でありながらうまみがたっぷりの独特の味わいで、多くの人を魅了してきたふぐ。食用として認められているふぐは22種ありますが、なかでもとらふぐは最も美味とされ、高値で取引されています。ふぐの毒は「テトロドトキシン」で、毒薬として知られる青酸カリの10倍以上の猛毒で、加熱しても分解されません。都道府県ごとにふぐの取扱資格が定められ、未資格者がふぐをさばくことは禁じられています。現在でも毎年のように死亡事故が発生しているので、ふぐは専門店で食べるようにしましょう。

写真:藤森明子さん

藤森明子さん

食品メーカーに勤務後、料理教室の講師を経験。その後は栄養士として勤務。
1995年に管理栄養士を取得。
現在はマダムマーサ・クッキングスタジオや調理師専門学校の講師、食品メーカーの試食作り、食育イベント、保健指導などで活躍中。

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