大群で回遊する「海の宝石」

美しく輝く銀色の体が印象的なキビナゴ。鰯と同じくニシン科で、銀白色の帯が入っているのが特徴の小さな青魚です。温帯・熱帯地域に広く分布し、大きな群れで回遊します。銀色の体をキラキラとさせながら、海面スレスレで泳ぐキビナゴの大群は「海のしずく」「海の宝石」と呼ばれる美しさ。夜になると、光に集まってくる習性を活用して、電球を海に沈めて集まってきたキビナゴを網で一気に漁獲します。旬は、脂のりが良くなる12~2月の冬と、産卵期を迎える3~5月。産卵期は、子持ちまたは白子持ちとなるので、丸ごと食べられる唐揚げや天ぷらに向いています。写真:キビナゴ

刺身に酢味噌!薩摩の代表的な郷土料理

キビナゴはとてもデリケートで、きれいな水の中でしか生きられず、水族館でも長期飼育できない魚です。水から揚げるとすぐに死んでしまい、鮮度が落ちるのも早いので、流通網が発達する以前は、消費は水揚げ漁港近辺に限られ、特に刺身はごく近場の人だけが食べられるものでした。鹿児島、高知、長崎など、暖かい地方での水揚げが多くなっていますが、特に水揚げの多い鹿児島では刺身やさつま揚げの材料として重宝され、手開きにした刺身を菊の花をかたどって並べた「菊花造り」は、薩摩の郷土料理として知られています。キビナゴは青魚特有の臭みがややあるので、わさびよりも生姜しょう油が合いますが、薩摩の郷土料理では、酢味噌をつけて食べます

写真:キビナゴ丸ごと食べてカルシウム摂取量アップ!

キビナゴは青魚の中でも不飽和脂肪酸のDHAIPA(EPA)が豊富に含まれています。どちらもコレステロールを減少させたり、血液をサラサラにするなど生活習慣病予防が期待できる栄養素です。DHAは、脳細胞を活性化するはたらきもあるとされ、記憶力向上や認知症予防が期待できます。また、精神を安定させ、骨や歯を作るのに欠かせないカルシウムも豊富。丸ごと食べることができるので、より多くのカルシウムを摂取することができます。さらにカルシウムの吸収を良くすると言われるビタミンDも豊富に含まれているので、育ち盛りの子どもには積極的に食べてほしい食材です。

銀白色の帯がハッキリしているものが新鮮!

キビナゴを選ぶときは、目が黒く澄んでいて、体にハリがあり、銀白色の帯がハッキリと鮮明になっているものが新鮮です。腹が赤いことがありますが、これはエサのアミがお腹に残っているため。食べても問題ありませんが、お腹に未消化のエサが残っていると鮮度劣化が早くなるので注意します。調理する前は、濃い目の塩水で洗って汚れと残っているウロコを落としましょう。小さいので、刺身にするときは手開きにし、唐揚げや天ぷらはそのまま揚げて骨ごと食べることができます。また、一夜干しも簡単にできます。洗ったキビナゴに好みの加減の塩をして、串に並べて刺し、干しカゴや洗濯物干しでひと晩干せばOK。うまみが凝縮し、フライパンやグリルで両面をあぶれば、頭から骨までおいしくいただけます。

スペシャリストが直伝!美味食材アドバイス

写真:藤森明子さん


スペシャリストが直伝!
美味食材アドバイス

鹿児島の名物料理として知られる刺身をはじめ、煮付け、唐揚げ、天ぷら、干物など、さまざまな料理に合うキビナゴ。大根や白菜などの野菜とキビナゴを一緒に煮て食べる「いり焼き」は長崎県五島列島の郷土料理、おからを酢締めにしたキビナゴで巻いた「ほうかぶり寿司」は高知の郷土料理と、各地に根付いた調理法で愛されています。骨ごと食べられるので、下処理がほとんどいらない唐揚げや天ぷらなどの揚げ物は、手軽なカルシウム補給となります。

写真:藤森明子さん

藤森明子さん

食品メーカーに勤務後、料理教室の講師を経験。その後は栄養士として勤務。
1995年に管理栄養士を取得。
現在はマダムマーサ・クッキングスタジオや調理師専門学校の講師、食品メーカーの試食作り、食育イベント、保健指導などで活躍中。

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