徳川家康のお気に入り?

薬味として日本の食文化に欠かせないわさび。わさび日本原産で、古くから日本各地の渓流などに自生し、奈良時代には税として納められていた記録が残っています。江戸時代初期に現在の静岡県有東木(うとうぎ)で栽培が始まったとされ、美食家として知られる徳川家康のお気に入りだったと言われています。そのため、幕府への献上品として庶民には馴染みの薄い食材でした。江戸時代後期になると、寿司や蕎麦が人気となり、その薬味としてわさびも広く一般に浸透しました。静岡県と長野県が二大産地で、この2県で全国の約90%を生産しています。立派なわさびになるには2~3年かかり、年間を通して収穫されますが、春は花を咲かせるために風味が若干弱くなります。花も茎も葉も食用となり、茎は酒粕に漬け込んで「わさび漬け」として出回っています。

日本のわさびと、西洋わさびの違いは?

日本原産のわさびは、ヨーロッパ原産の西洋わさびと区別するために「本わさび」とも呼ばれます。西洋わさびは「わさび大根」とも呼ばれ、風味が似ていて安価で栽培しやすいため、粉わさびや練りわさびなど加工品の原料として使われています。国内では北海道でわずかに栽培されていますが、ほぼ中国からの輸入に頼っています。本わさびは栽培方法により「沢わさび(水わさび)」と「畑わさび(山わさび)」に分類され、沢わさびは渓流や湧き水を利用して「わさび田」で栽培されます。一般的に見かける薬味としてのわさびは、ほぼ沢わさびです。畑わさびは、種を土にまいて湿気の多い畑やビニールハウスで栽培され、わさび漬けや練りわさびなど主に加工用として使われます。

わさびツンとする辛み成分に効能あり!

わさび特有のツンとする辛み成分のほとんどは「アリルイソチオシアネート」と呼ばれる成分で、すりおろすことによって生成されるもの。この辛み成分にはさまざまな効能があることが知られています。大腸菌やサルモネラ菌など食中毒の原因となる菌の増殖を抑える抗菌作用、魚の生臭さを抑える消臭作用、カビの発生を抑える防カビ作用が知られ、この成分を利用した防腐剤などが商品化されています。また、細胞のガン化を促進する魚や肉の焦げ成分を分解するのでガン予防作用、血液中の血小板の凝集を抑制する血栓予防作用なども期待できます。

するときは、力を入れずにゆっくりと!

わさびを選ぶときは、緑色が鮮やかで、太さが均一で円柱形に近い形の良いものが良品です。また、時間をかけて栽培されてものが良く、わさびは茎を落としながら成長するので、茎の落ちた後のボコボコが密になっているものほど時間をかけて栽培されています。使い切れなかった場合は、湿ったキッチンペーパーなどで包み、さらにラップをピッチリかけて冷蔵庫に保存します。2週間ほど保存できますが、風味はどんどん落ちていくので、できるだけ早く使い切るようにしましょう。すりおろすときは、香りと辛みを出すには細かく細胞を破壊することが必要なので、目の細かい鮫皮おろしのようなおろし器で、力を入れずにゆっくりとすりましょう。すった直後はそれほど風味はありませんが、5分ほど置くと香りと辛みが引き立ちます。

スペシャリストが直伝!美味食材アドバイス

写真:藤森明子さん


スペシャリストが直伝!
美味食材アドバイス

刺身や蕎麦の薬味に欠かせないわさび。冷蔵庫に練りわさびを常備している方も多いと思いますが、本わさびと、西洋わさびを主原料とした練りわさびや粉わさびは、風味が似ているだけで、別物だと思ったほうが良いでしょう。本わさびはしょう油で溶くと、せっかくの香りと辛みを感じにくくなるので、刺身の上に直接わさびをのせ、しょう油はわさびに触れない部分につけます。練りわさびはしょう油で溶いても辛味の成分が抜けないので、わさびしょう油を作っても問題ありません。

写真:藤森明子さん

藤森明子さん

食品メーカーに勤務後、料理教室の講師を経験。その後は栄養士として勤務。
1995年に管理栄養士を取得。
現在はマダムマーサ・クッキングスタジオや調理師専門学校の講師、食品メーカーの試食作り、食育イベント、保健指導などで活躍中。

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