窯を焚いている間は、食事の時間以外ずっとかまどの前に座り、
火加減を見極めます

−使い込まれた、とても味わいのある燻製窯ですね。

青木さん:この燻製窯を使い始めてから、およそ27年になります。メンテナンスをしながら大切に使い続けていますが、燻製はいたってシンプルな調理法なんですよ。なるべく自然に近い形の木と、そこから生まれる上質な煙があれば、特別な装置は必要ないんです。

−燻製は窯に火を入れてから出来上がるまで、どのくらい時間がかかるのですか?

青木さん:素材の質や大きさによって臨機応変に調節するのでひと言で説明するのは難しいですね。今日は鴨肉を燻していますが、朝9時30分から約8時間かけて仕上げようと思っています。

−約8時間、火の番をしながら温度や火加減を調整するのですね。

長年にわたり、燻製の香りが染み付いた窯。
陽に照らされると食材からしたたり落ちた脂が層になっているのが見えます。

青木さん:燻製は、まず50℃後半の比較的高い温度で時間をかけて燻し、鮮やかな食材の発色を促します。最後に72℃〜74℃くらいで殺菌して仕上げます。温度をいきなり上げすぎると、食材によっては空気の穴ができたり、形が悪くなってしまったりするので、火が入っている間は窯に付きっきりで1℃単位の温度変化を管理します。

−まさに、火と煙がいのちなんですね。

青木さん:昔ながらの製法ですが、「温度」「時間」「煙」の3つのバランスがとれていることが、おいしい燻製作りのゆるぎない基本だと思っています。炊飯や風呂のように、ただ火を焚いて温度を上げればいいものと違い、燻製は"煙も一緒に味わう"調理法。余計な脂や水分を落とし、代わりに質の良い煙の香り・風味を閉じ込める。この基本を守っていれば、添加物がなくても十分旨みの詰まった燻製が仕上がるんですよ。

「煙が主役」という青木さんの燻製作り。
上質な煙を生み出すための薪選びにも、特別な思いがあるそうです。