−このバウムクーヘンは、バターの香りがとても豊かですね。

妥協を許さない姿勢で選び抜いたバウムクーヘンの材料。

大隅さん:ありがとうございます。バターは室温に戻しておくことで風味が増すんです。バターの他にも、北海道産の小麦粉、北陸産のでんぷん、兵庫県産の卵など、材料は厳選しています。今、使っている材料は現時点でベストのものだと思っていますが、より良いものはないか常に情報を集めています。いつも心がけているのは、決してコストのフィルターを通さないこと。たとえば、新しいチーズを見つけたらこのチーズは高いから使えないなと考えず、今使っているチーズより味や品質が良いか悪いかだけを判断する。その結果、今よりも良かったら新しいチーズを使います。

−コストよりもクオリティを重視している、ということですね。

大隅さん:材料には、それぞれ役割があります。砂糖ならば甘みをつける以外にも、生地をしっとりさせたり焦げ目をつけたり気泡を安定させるなど、いろいろな役割がある。こうした役割を職人の計算通りにきちんとこなしてもらうには、素材が良くないと絶対にダメです。また、「もっといい砂糖があるんだけどなあ」とネガティブな気持ちを抱えながら作ったお菓子は、その気持ちがお菓子に表れます。いい材料を集めたからこそ、いいお菓子を作ろうと職人のモチベーションが上がり、その想いがお菓子に出るのです。

−なるほど。工房で、皆さんが楽しそうにお菓子を作っていた理由がわかった気がします。

大隅さんのポリシーに共鳴し、
真摯にお菓子作りに取り組む職人が多い。

大隅さん:ありがたいことに、私のポリシーを理解して長く働いてくれる職人が多いのです。自分たちで妥協せずに選び抜いた材料で作っていると、お菓子に対して誇りを持てるし、愛着も沸いてくる。このポリシーをわかってくれている人とチームを組んで仕事ができるのは、幸せなことですね。このバウムクーヘンの味を作りあげるまで、約1年半かかりました。やはりドイツと日本の気候は違いますから、ドイツで食べたバウムクーヘンを作りたいと思っても、ドイツと同じ作り方ではだめなんです。材料から焼き方まで組み立て直して、今のバウムクーヘンを完成させました。

大隅さんのお菓子は、バウムクーヘン以外も吟味された材料が使われ、
愛情を込めて作られたものばかり。次々とお客さんが訪れ、楽しそうにお菓子を選んでいます。